序説
大友 邦

画像診断は，病巣を発見し（検出），質的な診断を行い（鑑別），進展の度合いを見極める（病期診断），3つの主たるプロセスから成り立っている．このうち“おもしろい”のは何と言っても鑑別診断である．周りが気づかない，あるいは見えていてもその意義を十分認識できない所見に注目して，ずばり診断を的中させるのは，まさに診断医の醍醐味である．
一方，他の2つのプロセスである検出と病期診断は，どちらかと言うと単調な“しんどい”作業である．しかし我々の日常診療の大部分はこの2つから成り立っているのも厳然たる事実であり，見落としはもちろん，誤った病期診断が取り返しのつかない結果を招くことも十分にありうる．今回特集で取り上げた早期の癌の画像診断はまさにその典型と考えられる．
本特集では，頻度が多く，さらに画像診断の果すべき役割の大きい，肺，食道・胃，肝臓，膵臓，大腸，前立腺，乳腺，子宮の早期の癌を取り上げ，それぞれエキスパートに，早期の癌の画像所見・病期診断を中心に，病期分類と治療成績，小病巣を発見するための画像検査法のポイント，鑑別診断を含めて解説をお願いした．また，特集の最初に癌の疫学と早期発見の意義について，国立がんセンターがん対策情報センターの渡邊清高先生にわかりやすく解説していただいた．早期の癌を的確に検出・治療することの意義を十分に理解することは，モニター画面に向かう診断医の集中力を必ずや高めてくれるものと確信している．
本特集が，早期の癌に対する画像診断の精度と治療成績の向上に少しでも寄与できれば，幸甚である．

特集
癌の疫学・早期発見の意義
肺癌
食道癌・胃癌
肝癌
膵癌
大腸癌
前立腺癌－小さい癌をいかにして捉えるか－
乳癌
子宮癌
●連載目次●
すとらびすむす
フルー アウトブレイク in 神戸
門澤 秀一

画像診断と病理
視床の二次変性
小川 敏英

ここが知りたい！
画像診断2009年2月号特集
「“加齢”の画像診断－加齢性変化と高齢者疾患の特徴を考える－」
德丸 阿耶，松田 博史

投稿　症例
憩室間膜血管を伴うMeckel憩室間膜による成人の単純性イレウスの1例
三瀬 広記，藤原 大輔ほか

胸部画像診断24のポイント
縦隔の移動を見たら
野間 恵之

CASE OF THE MONTH
Case of August
高橋 護，竹原 康雄
The Key to Case of June
飯田 行，村山 貞之

Picked-up Knowledge from Foreign Journals
肺の加齢変化の画像診断
小野 修一

画像診断のkey words
QGS（定量的心電図同期SPECT）／TID（一過性虚血性拡大）
沖崎 貴琢，油野 民雄

Refresher Course
放射線被ばく
日下部 きよ子，牧 正子