ER必携頭頸部の画像診断
序説
酒井 修
頭頸部の救急疾患の多くは表在病変であり,臨床的評価が容易かつ重要で,画像診断の役割はあまりないと思う方が多いかもしれない.しかし,この領域の急性病変から,短時間で,気道閉塞,血管障害,失明,頭蓋内合併症など重篤な状態に至ることも多く,その早期の診断・治療はきわめて重要である.臨床的に問題となっている表在病変の背後に,経験豊富な臨床医でさえ,予想できない損傷,奇形・正常変異,腫瘍,感染巣などが隠されていることもあり,その診断は治療方針の決定,患者の予後に大きな影響を与える.このような意味で放射線科医の役割はきわめて重要である.
この特集号では,解剖学的な区分による頭頸部画像診断に加え,感染症や穿通外傷といった最近頻度が高くなってきている病態も網羅した.また,一般放射線科医にとって,あまりなじみのない歯科領域については,歯科放射線科の先生方に歯科口腔外科医が何を画像診断に期待しているのかについて解説していただいた.さらに,診断だけでなく,治療にも放射線科医が積極的に関与していくことを願い,頭頸部インターベンションの適応,手技について,神経インターベンションの第一人者の先生に解説していただいた. これから頭頸部画像診断を学ぼうとする放射線科レジデントや,普段,頭頸部の救急にあまり携わらない放射線科医を主な対象としてこの特集を企画したが,救急医療に携わる,救急,耳鼻咽喉科・頭頸部外科,歯科口腔外科,眼科,脳神経外科および一般外科の先生方にとっても,非常に役に立つ特集号となったと思う.
この特集を通じ,日常多く遭遇する頭頸部救急疾患の画像所見に慣れ,積極的に頭頸部の救急医療に携わっていく放射線科医が一人でも多くなるよう願う.
特集
救急での頭頸部画像診断
-側頭骨病変-
-副鼻腔病変-
-眼窩病変-
-咽頭・喉頭病変-
-非外傷性歯科口腔病変-
顎骨外傷の画像診断
頭頸部の感染症,炎症性疾患の画像診断
頭頸部血管損傷・穿通外傷の画像診断
頭頸部の血管造影とインターベンション
●連載目次●
すとらびすむす
「究極の治療」
平塚 純一
画像診断と病理
Kernohan圧痕
木下 俊文,永田 倫之ほか
ここが知りたい!
画像診断2009年4月号特集
「エキスパートが伝授する! 読影に役立つ中枢神経解剖」
小田 敦子,安陪 等思ほか
胸部画像診断24のポイント
無気肺について
野間 恵之
Picked-up Knowledge from Foreign Journals
膀胱の画像診断
片岡 正子
CASE OF THE MONTH
Case of October
大川 賀久,杉山 雅洋ほか
The Key to Case of August
高橋 護,竹原 康雄
画像診断のkey words
Cerebral vascular reserve(脳血管予備能)/Sentinel node(センチネルリンパ節)
秀毛 範至