知っておきたい虚血性脳血管障害の知識
基礎から最新の知識まで
序説
小川 敏英
本誌の1999年6月号で,特集テーマとして「知っておきたい虚血性脳血管障害の知識」を取り上げてから約10年が経過した.この間の治療に関する最大のトピックは,2005年10月の急性期脳梗塞に対する血栓溶解薬rt-PAの静脈投与の正式認可であろう.2008年のEuropean Cooperative Acute Stroke Study(ECASS)IIIの報告では,発症後3?4.5時間の症例に対するrt-PAの有効性が示され,これまでの発症3時間以内とした治療可能時間の延長の可能性も示唆されている.また,脳保護薬としては2001年にフリーラジカル消去剤であるEdaravoneが認可され,さらに臨床試験により多くの治療薬の評価がなされている.一方,診断に関しては脳血管障害画像診断のガイドラインの策定が進められ,画像診断機器および新たな撮像法の開発・進歩に伴い,多くの知見も得られている.
以上のように診断,治療法の進歩に伴い脳血管障害による死亡は減少したものの,依然として脳血管障害は本邦における死因の第3位を占めている.また,患者数は増え続け,要介護原因の第1位でもある.したがって,虚血性脳血管障害は,中枢神経疾患の画像診断中でも日常臨床で最も遭遇する機会の多い疾患である.
本特集の目的は,診断・治療が進歩している状況下で,画像診断を担当する放射線科医として知っておくべき知識を纏めることである.放射線科医は,臨床医が画像診断に期待する要求に対して,十分に応えなければならないことは言うまでもない.種々の画像診断法に精通することは勿論のこと,画像の背景にある病理を理解しつつ,脳血管障害の診断および治療に関する基本的な事柄も理解しておくことが必要である.
今回の特集では,虚血性脳血管障害の臨床,病理,そして画像診断に関して,放射線科医が知っておくべき知識の基本から最新の事項までを纏めた.上記のような意図を十分にご理解いただいた執筆者により,質の高い,力作ぞろいの特集が完成したと自負している.読者の皆様には今回の特集をお読みいただき,明日からの日常臨床に生かしていただければ望外の喜びである.
特集
脳梗塞の病理
脳梗塞の臨床
CT-脳梗塞のCT所見と灌流画像の応用-
conventional MRI
拡散強調像,灌流強調像,磁化率強調像,
頸動脈プラーク画像
MR spectroscopy
-虚血病態の本質にどこまで迫れるか?-
SPECT/PET
超音波検査
●連載目次●
すとらびすむす
団塊の端くれ
佐藤 守男
画像診断と病理
Waller変性
松末 英司,小川 敏英
ここが知りたい!
画像診断2009年3月号特集
「免疫能低下患者の肺病変」
田中 伸幸,酒井 文和
胸部画像診断24のポイント
肺炎は画像で診断するものではない!
野間 恵之
Picked-up Knowledge from Foreign Journals
肝硬変,肝細胞癌
岡田 吉隆
CASE OF THE MONTH
Case of September
伊熊 宏樹,増井 孝之
The Key to Case of July
高橋 護,竹原 康雄
画像診断のkey words
Z-score/ラムダサイン
沖崎 貴琢,油野 民雄
Refresher Course
びまん性肝疾患の画像診断
近藤 浩史,五島 聡ほか