【特集】
序説 ●片平和博(熊本中央病院放射線科)
MRIは,その優れたコントラスト分解能により診断に与える情報は多く,様々な撮像法を駆使して診断に至る過程は画像診断の醍醐味ともいえる.MRIの撮像法は多種多様であるが,1検査当たりの検査時間の制限があるため,日常ルーチンプロトコルを決めて運用を行っている施設が大部分と考えられる.さらに,MRIは1日当たりの検査件数が多いため予約待ちが長い施設も多く,ややもすればルーチンプロトコルを繰り返すベルトコンベア式検査になりやすい側面がある.ルーチンプロトコルは一般に各領域で頻度の高い疾患の診断に必要な撮像を網羅していると考えられるが,時に,ルーチンプロトコルの検査終了時には診断に確信がもてずに,可能性を挙げられても,“〜を否定できません”という結論や鑑別診断の羅列など,依頼側の要求に十分に応えたとはいえないレポートになることがある.
このような状況を打破するために,症例に応じた様々なオプション撮像の武器をもち,臨機応変に,診断につながる鋭い追加撮像を行うことで,診断の確信度が上がる場面は読影医冥利に尽きる.
“鋭い”追加撮像を考慮する際に,ターゲット疾患の病態把握はとても重要である.同じ撮像法でも撮像断面が最適化されることで劇的に診断が容易になる場合は,冠状断や矢状断だけでなくターゲット部位の解剖に沿った斜断面が“鋭い”撮像であることも多く,断面設定は重要である.近年では,撮像時に断面設定の代わりにisotropic収集によるvolume撮像を行うことで,撮像後の画像再構成で代用可能となり便利である.ただし,volume撮像でもT2強調像系(一般的),T1強調像系(骨病変など),STIR系(炎症性病変・浮腫性病変)などターゲット疾患による撮像法の選択も重要となる.追加撮像に関しては,疾患特異的な撮像法もあるが,単にシネ撮像を追加し動態情報を追加することで劇的に診断能が上昇する場合もある.悪性病変の隣接臓器浸潤評価において,様々な“静的な”撮像法で浸潤の有無が微妙な場合でも,動態撮像すなわち深呼吸下でシネ撮像を追加し悪性腫瘍がターゲット臓器と離れることで,浸潤は100%否定可能と断言できる場合など,追加撮像の有用性は高い.MRCP動態撮像などにも応用が可能である.これらはほんの一例であるが,各領域には多くの困った場面を解決する“お宝追加撮像”症例があると考えられ,MRIに携わる放射線科医や診療放射線技師がこれらの鋭い追加撮像を把握しておくことは,日常臨床において意義高いと確信している.
本特集では,このような観点から,各部位ごとにその領域のエキスパートの先生方に,
●総論(各領域の撮像ルーチンプロトコルと読影のポイント),
●各論(疾患別の診断につながる鋭い追加撮像が有用であった症例),
に分けて解説をお願いした.胸部MRIは検査自体が診断につながる“追加撮像”であり,胸部MRIの普及を祈って1項目とした.
診断につながる“武器”としての鋭い追加撮像をもっておくことは,明日からの診療に必ずや役に立ち,このような機会を経験することでますますMRI診断が得意になるであろう.
多くの放射線科医や診療放射線技師がこのような観点からMRIに興味をもつことを願い,MRIに携わる方々のお役に立つことを祈っている.
序説 ● 片平 和博
頭部MRI ● 上谷 浩之,平井 俊範
片頭痛に伴う脳灌流異常
動脈瘤残存血流
抗MOG 抗体関連疾患
椎骨動脈解離に伴う急性期脳梗塞
頭頸部MRI ● 内匠 浩二,長野 広明ほか
舌扁平上皮癌
転移リンパ節の節外進展による腕神経叢浸潤
Warthin 腫瘍
Ménière 病
肝胆膵MRI ● 松原 崇史,小坂 一斗ほか
肝海綿状血管腫
肝動注化学療法後の胆管壊死・胆汁漏
膵内副脾
腎・泌尿器MRI ● 髙橋 哲
水腎症
腎細胞癌
前立腺癌
前立腺癌骨転移
Zinner 症候群
産婦人科MRI ● 坪山 尚寛,本田 亨ほか
成熟奇形腫
子宮腺筋症
低異型度虫垂粘液性腫瘍と両側卵巣転移
卵管妊娠
脊椎・骨軟部MRI ● 林田 佳子,濱村 俊彦ほか
脳脊髄液漏出症 ● 濱村 俊彦,林田 佳子ほか
平山病 ● 濱村 俊彦,林田 佳子ほか
腱滑膜巨細胞腫 ● 濱村 俊彦,林田 佳子ほか
限局性の過形成骨髄(赤色髄) ● 濱村 俊彦,林田 佳子ほか
胸部MRI ● 片平 和博
浸潤性粘液腺癌
肺膿瘍
孤立性線維性腫瘍
【連載】
すとらびすむす
“傾聴” 耳をすませば ● 植田 琢也
画像診断と病理
肺癌の子宮転移 ● 徳江 浩之,若林 佑ほか
ここが知りたい!
画像診断2022年7月号特集
「押さえておきたい脊椎・脊髄疾患の画像診断 Case-based review」
● 小久江 良太,榎園 美香子ほか
CASE OF THE MONTH
Case of December ● 野中 智文,藤永 康成
The Key to Case of October ● 青沼 宇倫,黒住 昌弘ほか
読影レポートLesson
核医学編「前立腺のFDG集積」 ● 北島 一宏
人を幸せにする医療機器開発―Schopenhauerの哲学に学ぶ―
第6回(最終回)薬事承認後から保険収載まで その2 ● 高瀬 圭
Picked-up Knowledge from Foreign Journals
COVID-19 関連脊髄症 ● 森 墾
Refresher Course
胎盤MRI ● 扇谷 芳光,金井 貴宏ほか