【特集】
序説 ●前田正幸(三重大学大学院医学系研究科 地域支援神経放射線診断学講座)
脊椎・脊髄の画像診断は,教科書,雑誌,学会・研究会などで取り上げられる頻度が相対的に少なく,放射線科医が脊椎・脊髄疾患に関して集中的に学習する機会はあまりないというのが現状である.一方で,新たに提唱された全身疾患および脳の疾患が,脊椎・脊髄にも病変が及ぶことは稀ではないため,この領域での新たな知見を得る機会は,もう少し増えることが望まれる.
本特集では,押さえておきたい脊椎・脊髄疾患の画像診断をCase-based reviewのクイズ形式で楽しみながら学習し,読者が脊椎・脊髄疾患に関する知識をブラッシュアップし,アップデートすることを趣旨とした.本特集では脊椎・脊髄疾患の画像診断のために,以下の3つのポイントを考えた.
①脊椎・脊髄疾患を限られた誌面で広く網羅する.
②臨床で遭遇することの多いcommon diseaseから,やや稀である疾患,最近話題の疾患まで押さえておきたい疾患を厳選する.
③1つの疾患に典型的な症例画像から入り,その疾患と画像所見の解説をシンプルな形式で統一することで,読者の理解を容易にする.
本特集ではCase-based review形式を選んだ.Case-based reviewは米国神経放射線学会でもプログラム内で使われ,参加者に人気のある学習形式である.学会や研究会でのフィルムリーディングもその一種といえるが,フィルムリーディングがバイアスのある稀な疾患や所見を回答者が見事に当てる(逆に,外す)というエンターテイメント性に重心が置かれているのに対して,Case-based reviewでは難易度の様々な教育的な症例をエキスパートが横断的に読影し,理路整然と解説することで参加者・読者の知識の穴を埋めること,学習効果を高めることに重点を置いている.このようなクイズ形式では,多少の高揚感を伴うためか,他の学習形式よりも症例画像の記憶が残りやすいというメリットがあるように思われる.また,最初から順を追って読む必要がある系統的なreviewと違い,自分の学習したい箇所から自由に入ることのできるCase-based reviewは,とっつきやすい形式であるといえる.
本特集では限られた誌面でのCase-based review形式ではあるが,可能な限り多彩な脊椎・脊髄疾患の症例を執筆の先生方に用意していただいた.取り上げたい疾患は他にも多々あるが,押さえておきたい脊椎・脊髄疾患の画像診断の趣旨に従い,各項目で厳選された適切な疾患をわかりやすく簡潔に解説していただいた.ご多忙な中,執筆をご快諾いただいた先生方には,誌面を借りて篤く御礼を申し上げます.本特集が,読者の皆様にとって日々の臨床にお役に立てば幸いである.
序説 ● 前田 正幸
1.脊椎の変性疾患,炎症性関節疾患,感染疾患
頸椎症にみられた著明な頸髄浮腫 ● 稲岡 努,中塚 智也ほか
頸椎前縁の癒合する大きな骨棘 ● 稲岡 努,中塚 智也ほか
歯突起周囲の石灰化 ● 稲岡 努,石川 ルミ子ほか
椎間板後方の嚢胞性変化 ● 稲岡努,石川 ルミ子ほか
椎体終板の骨髄浮腫 ● 稲岡 努,粕谷 秀輔ほか
2.脊髄の炎症・脱髄・変性疾患
多発するshort cord lesionの鑑別 ● 横田 元
Long cord lesionの鑑別:その1 ● 横田 元
Long cord lesionの鑑別:その2 ● 横田 元
最近注目の新たな脊髄炎 ● 横田 元
辺縁優位に点状の造影効果が単発あるいは多発する疾患の鑑別 ● 横田 元
後索に異常信号をみた時の鑑別 ● 横田 元
3.脊椎の腫瘍
多発する脊椎腫瘍性病変 ● 小久江 良太,前田 正幸
発熱と炎症マーカー高値を伴う小児骨腫瘍 ● 小久江 良太,前田 正幸
T2強調像で著明な高信号を示す腫瘍 ● 小久江 良太,前田 正幸
小児の椎弓の骨腫瘍 ● 小久江 良太,前田 正幸
fluid-fluid level を伴う骨腫瘍 ● 小久江 良太,前田 正幸
scalloping を伴う脊椎腫瘍 ● 小久江 良太,前田 正幸
4.脊髄の腫瘍
椎間孔に進展する硬膜内髄外腫瘤 ● 中條 正典,上村 清央ほか
近傍の硬膜に造影効果を認める硬膜内髄外腫瘤 ● 中條 正典,上村 清央ほか
中心性発育を呈する造影効果に乏しい腫瘤 ● 中條 正典,上村 清央ほか
上下辺縁にT2強調像低信号を伴う腫瘤 ● 中條 正典,上村 清央ほか
強い造影効果を有する偏心性髄内病変 ● 中條 正典,上村 清央ほか
造影効果を有さない髄内外病変 ● 中條 正典,上村 清央ほか
5.小児の脊椎・脊髄疾患
不明熱で精査中に出現した臀部痛と排尿回数減少 ● 榎園 美香子
1mの高さから転落後に出現した腰痛と跛行 ● 榎園 美香子
1か月前から続く頸部痛 ● 榎園 美香子
発熱,嘔吐後に出現した呼吸不全,四肢の自発運動低下,著明な縮瞳 ● 榎園 美香子
首の前屈で増悪する右手の脱力としびれ ● 榎園 美香子
6.脊髄の血管奇形,血管障害
進行性の脊髄症状 ● 田上 秀一,内山 雄介ほか
進行性の左腰背部痛 ● 田上 秀一,内山 雄介ほか
胸椎血管病変と出生時からの胸壁皮疹 ● 田上 秀一,内山 雄介ほか
急性発症の経過を示す脊髄症状 ● 田上 秀一,内山 雄介ほか
脊髄内の出血を疑う異常信号 ● 田上 秀一,内山 雄介ほか
7.全身疾患に関連した脊椎・脊髄の異常
若年者に認められた広範囲の脊椎変形性変化 ● 黒川 遼
繰り返す腹痛や嘔吐,下痢の原因は? ● 黒川 遼
急速進行性の若年者の脊髄長大病変 ● 黒川 遼
若年者の広範な髄膜病変 ● 黒川 遼
脊椎のサインが示す○○疾患 ● 黒川 遼
傍頸椎腫瘤 ―偶然か否か? ● 黒川 遼
ひどい関節リウマチ? ● 黒川 遼,森谷 聡男
8.特異な形状・信号・吸収値の脊椎・脊髄病変
椎体内の気体 ● 土屋 一洋
椎体内の粗造な骨梁が特徴的な非膨隆性病変 ● 土屋 一洋
脊髄の特異な変形(scalpel sign)と隔壁様の構造 ● 土屋 一洋
脊柱管内の均一な信号の嚢胞状病変 ● 土屋 一洋
脊髄円錐尾側の線状のT1強調像高信号 ● 土屋 一洋
後索内の左右対称のT2強調像高信号域 ● 土屋 一洋
脊髄の限局性の前方への屈曲偏位 ● 土屋 一洋,渡部 渉
myelopathyを呈するシャント術後患者での特徴的頸椎所見 ● 土屋 一洋
【連載】
すとらびすむす
新生活 ● 樋渡 昭雄
画像診断と病理
左冠動脈肺動脈起始症 ● 徳江 浩之,対馬 義人ほか
ここが知りたい!
画像診断2022年2月号特集
「“-pathy”でせまる中枢神経疾患」 ● 安野 史彦,柳下 章
CASE OF THE MONTH
Case of July ● 吉澤 恵理子,山田 哲ほか
The Key to Case of May ● 神谷 梓,永谷 幸裕ほか
読影レポートLesson
泌尿器編 「腎周囲腔の脂肪を含む腫瘍」 ● 秋田 大宇,陣崎 雅弘
人を幸せにする医療機器開発―Schopenhauerの哲学に学ぶ―
第1回 Schopenhauer(ショーペンハウアー)の思想と医療機器開発の目的 ● 高瀬 圭
Picked-up Knowledge from Foreign Journals
特殊な心筋炎のMRI ● 加藤 真吾
Refresher Course
知っておくべき・注意すべき骨折の画像診断 −上肢・脊椎編− ● 寺村 易予,野崎 太希