【特集】
序説 ●竹原康雄(名古屋大学大学院医学系研究科),蒲田敏文(金沢大学大学院医薬保健学総合研究科)
1 いわゆる膵癌について
いわゆる膵癌(外分泌性の通常型膵管由来の癌)は,男女ともに年齢調整死亡率の増加している癌であり,2021年のがんの統計によると膵癌全体の5年相対生存率は他の悪性腫瘍と比較して際立って悪く,9.8%と報告されている.また一方で,膵癌は予後の悪い癌ではあるが,1cm以下(『膵癌取扱い規約 第7版』のStage IAのうちT1aとT1b)で切除できれば,5年生存率は80%を超えることが知られている.この意味で,小さな膵腫瘤を発見するということが,膵癌の画像診断における基本方針であることは変わりない.しかしながら,膵癌はきわめて“足の早い癌”であり,膵癌自体を肉眼で確認できる腫瘤として発見するのでは既に浸潤癌となっている可能性が高く,長期予後は見込めないことが多い.このことは,定期検診での膵癌発見率が低いことや,事故死などの剖検例で偶然発見される膵癌が,他の悪性腫瘍と比較してきわめて少ないことからも理解できる事実である.
2 早期膵癌の研究
そこで,いわゆる早期膵癌,つまり,長期予後を期待できるような小膵癌を発見するには,膵癌の自然史を知って,前癌病変を見つけ出し,“待ち伏せ”して膵癌を発見する必要がある.こうした要請から早期膵癌の研究が進み,その臨床的な特徴,画像所見,膵癌発癌に関係する遺伝子変異についても盛んに研究がなされてきた.わが国でも,膵癌早期診断研究会が2013年から発足して,精力的に研究がなされている.筆者らも,この会から多くの知見を得ることができたことを付記したい.
序説にかえて ● 竹原 康雄,蒲田 敏文
早期の膵癌の病理 ● 安川 覚
早期膵癌のCTの特徴 ● 井上 大,戸島 史仁ほか
早期膵癌のMRCP ● 小川 浩,竹原 康雄ほか
早期膵癌のERCP/EUSと限局性膵実質萎縮 ● 菊山 正隆,仲程 純ほか
CT・MRIによる早期膵癌発見へのイノベーション―dual energy CTとhigh b value(computed)DWIの可能性
● 福倉 良彦,吉浦 敬
【連載】
すとらびすむす
私と放射線科のダイバーシティ ● 相田 典子
画像診断と病理
自然縮小した小細胞肺癌 ● 山崎 元彦,石川 浩志ほか
ここが知りたい!
画像診断2021年10月号特集
「脈管異常のアップデート ―新ISSVA分類で深める病態の理解―」
● 熱川 奈津子,北川 晃
Picked-up Knowledge from Foreign Journals
胆嚢ポリープ ● 渡谷 岳行
CASE OF THE MONTH
Case of March ● 日野 篤信,友澤 裕樹
The Key to Case of January ● 中井 美里,村上 陽子ほか
読影レポートLesson
頭頸部編 「側頸部嚢胞性病変」 ● 馬場 亮,蓮見 淳ほか
特別寄稿
RSNA2021 Report ―日本人のEducation Exhibits受賞演題より ● 黒川 遼
Refresher Course
小児被ばくに関する最新の話題 ● 前田 恵理子