【特集】
序説 ●長縄 慎二(名古屋大学大学院医学系研究科総合医学専攻高次医用科学講座 量子医学分野)
認知症は,生後いったん正常に発達した種々の精神機能が慢性的に減退・消失することで,日常生活・社会生活を営めない状態であるとされる.認知症の最大の危険因子は加齢であり,65〜69歳の有病率は1.5%であるが,以後5歳ごとに倍になり,85歳では27%に達する.
わが国では,急速な高齢化により認知症患者数が急増し,2025年には700万人を超えるともいわれている.つまり,画像診断業務を行っていれば,認知症の精査目的でなくても,認知症患者の画像を日常的に担当することとなる.
認知症の原因疾患としては,もちろんAlzheimer病が代表である.また,Lewy小体型認知症,血管性認知症,前頭側頭型認知症,進行性核上性麻痺など神経変性疾患の鑑別の他にも,硬膜下血腫,正常圧水頭症,甲状腺機能低下症などのいわゆる治療可能な認知症もある.
今回は,認知症の画像診断を行う際に,脳神経を専門としない画像診断医も知っておくべきポイントとして,認知症の画像診療のdecision treeと画像診断医のふるまい方,認知症の臨床,認知機能障害を来す神経変性疾患以外の中枢神経疾患,認知機能障害を来す全身疾患,認知症でのRIおよびPET診断について,わが国を代表する先生方にわかりやすく解説していただくことができた.
また,認知症画像のカッティングエッジとして,いまだに謎の多い特発性正常圧水頭症診断における最新の進歩について,および脳の老廃物排泄機構(glymphatic system)と認知症の関わり,さらには,interstitial fluid pathyの概念の紹介もカバーした.手前味噌にはなるが,現時点で,最高の内容になったと思われる.ここに,ご多忙中にもかかわらず快く素晴らしい原稿を執筆していただいた8名の著者の皆様に深謝するとともに,本特集の読者の皆様にはひとつでも多くの項目をぜひ通読していただきたいと思う.
本特集の狙いは,様々な角度から認知症画像診断をみることで,あらゆる場面において,読者が自信をもって認知症画像診断に臨めるように知識を整理するお手伝いをすることと,最先端の領域に興味をもっていただくことである.認知症の画像を適切に撮ったなら,本特集を読んだ上で診断に臨めば,現時点でのかなり高い水準で自信をもって病態がわかったと思っていただけると期待している.
序説 ● 長縄 慎二
認知症の画像診断でのdecision treeと画像診断医のふるまい方 ● 德丸 阿耶
認知症の臨床 −画像診断医に知っておいてほしいこと− ● 渡辺 宏久,大嶽 れい子ほか
認知機能障害を来す神経変性疾患のMRI診断 −落としてはいけないポイント,知っておいた方がよいポイント−
● 櫻井 圭太,金田 大太ほか
認知機能障害を来す中枢神経疾患(神経変性疾患を除く) ● 原田 太以佑
認知機能障害を来す全身疾患 ● 山本 貴之
認知症でのRIおよびPET:核医学を専門としない画像診断医はどう向きあえばよいのか?
● 山根 登茂彦,菅 剛
認知症画像のカッティングエッジ1:脳脊髄液動態,iNPHはどこまでわかってきたか? ● 山田 茂樹
認知症画像のカッティングエッジ2:Glymphaticシステム,CNS interstitial fluidopathyの概念 ● 田岡 俊昭
【連載】
すとらびすむす
私のモチベーション ● 増本 智彦
画像診断と病理
中枢性神経細胞腫 ● 平賀 利匡,鹿戸 将史ほか
ここが知りたい!
画像診断2021年7月号特集
「腫瘍か非腫瘍か,それが問題だ −FDG-PET/CT編−」 ● 中本 裕士
Picked-up Knowledge from Foreign Journals
hemorrhagic glioblastoma ● 森 墾
CASE OF THE MONTH
Case of December ● 小谷 知也
The Key to Case of October ● 德田 文太,秋山 新平ほか
General Radiology診断演習
いつもと違う part 2 ● 黒川 遼,谷島 智哉
Refresher Course
高齢者の運動器疾患 ● 小橋 由紋子