【特集】
序説 ●大須賀 慶悟(大阪医科薬科大学医学部放射線診断学教室)
本誌の特集に血管腫・血管奇形が取り上げられるのは,2012年9月号以来,実に9年ぶりである.前回のテーマは「血管腫・血管奇形の最前線−ISSVA分類に基づいた診断と治療戦略−」で,成因が根本的に異なる“腫瘍”と“奇形(形成異常)”の区別に主眼が置かれ,放射線科医の間でもISSVA分類は徐々に浸透してきたように思う.その間,原因遺伝子の解明による疾患体系の複雑化に伴い,ISSVA分類も大幅に改訂された.原文はISSVAのホームページ(https://www.issva.org/)でダウンロード可能で,PDFにして20ページにも及ぶ.1ページ目が目次のような概略表になっており,疾患群名をクリックすると,その疾患リストのページに自動的にジャンプする仕組みである.2018年に30年ぶりの改訂が公表された国際疾病分類(ICD-11)でも,ISSVA分類の疾患名が含まれており,国際的な認知度の高まりが伺える.
一方,国内では厚生労働省の研究班を中心に『血管腫・血管奇形・リンパ管奇形診療ガイドライン』が作成され,指定難病・小児慢性特定疾病にも難治性脈管奇形が認められるなど医療ニーズが高まっている.このような国内外の動向を受けて,今回のテーマは「脈管異常のアップデート−新ISSVA分類で深める病態の理解−」とした.“血管腫・血管奇形”ではなく“脈管異常”とした理由は,本来,ISSVA分類では“vascular anomaly”と総称されること,“血管腫”自体が曖昧で良性以外の腫瘍も含まれること,“血管腫・血管奇形”ではリンパ管病変を反映しにくいこと,そして分類困難な病変もあることなどである.
特集の構成は,まず冒頭で新ISSVA分類の改訂のポイントと疾患の分子生物学的発生機序について,次に,代表的疾患の病理学的特徴と特殊・免疫染色を駆使した鑑別法について解説いただいた.画像診断については,脈管性腫瘍・脈管奇形・関連症候群に分けて,それぞれ代表的疾患の画像所見やmimics病変との鑑別のポイントを紹介いただいた.治療法については,リンパ管奇形・静脈奇形や動静脈奇形に対する硬化療法や塞栓術の実際,そして,最近特に注目されている薬物療法の開発の動向や今後の展望について解説いただいた.外科手術,レーザー,経皮的凍結療法などのアップデートも網羅できればよかったが,誌面に限りもあり,画像診断を扱う本誌では,病態や診断に軸足を置くことにした.執筆には,前述の研究班やガイドライン作成でご活躍の先生を中心に,放射線科医だけでなく皮膚科医,小児科医,病理医にも加勢いただき,最新の知見を盛り込んでいただいた.ご多忙にもかかわらずご協力くださった執筆者の先生方に,心より感謝を申し上げたい.
日常診療で目に触れる機会は少ない疾患だが,画像診断やIVRだけでなく,診療科間の橋渡しを担う放射線科医の役割は大きいと思われる.この特集が,多くの読者に脈管異常に関心をもっていただく機会になると同時に,この病気に悩まれる患者さんにとっても役立つことを願う.
序説 ● 大須賀 慶悟
脈管異常の新ISSVA分類と分子生物学 ● 神人 正寿
脈管異常の病理診断 ● 堀 由美子,廣瀬 勝俊ほか
脈管性腫瘍とmimicsの画像診断 ● 市田 和香子,西川 正則ほか
脈管奇形とmimicsの画像診断 ● 熱川 奈津子,大須賀 慶悟ほか
脈管異常関連症候群の画像診断 ● 野崎 太希,新見 康成ほか
低流速型脈管奇形に対する硬化療法 ● 和田 慎司,小川 普久ほか
高流速型脈管奇形に対する血管塞栓術 ● 北川 晃,岡田 浩章ほか
脈管異常に対する薬物療法の動向と展望 ● 小関 道夫
【連載】
すとらびすむす
イモハカイツカ ● 中島 崇仁
画像診断と病理
管内増殖型の膵腺房細胞癌 ● 紺野 義浩,鹿戸 将史ほか
ここが知りたい!
画像診断2021年5月号特集
「これだけおさえる胸腹部解剖─血管と管腔のvariation & anomalyを中心に─」
● 泉 雄一郎,清末 一路
Picked-up Knowledge from Foreign Journals
傍卵巣嚢胞 ● 高濱 潤子
CASE OF THE MONTH
Case of October ● 德田 文太,秋山 新平ほか
The Key to Case of August ● 戸山 保千代,山田 幸美
General Radiology診断演習
いつもと違う ● 黒川 遼,松下 周ほか
AI画像診断は,いま
薬事承認されたAI読影支援システムの紹介と承認取得の方法・課題
● 久永 隆治
Refresher Course
包括的心臓CTを臨床に活かそう! ● 富澤 信夫