【特集】
序説 ● 佐野勝廣(順天堂大学大学院医学研究科放射線診断学)
肝胆膵領域に限らず,疾患分類は絶えずアップデートしていき,疾患名や亜分類の名称などが変更されたり,新たに追加されたり,時にはなくなることもある.わが国では臓器ごと,もしくは病態ごとに『癌取扱い規約』が存在しており,『癌取扱い規約』が更新されるたびに疾患分類は変更される.一方,世界的にはWorld Health Organization(WHO)分類が使われ,わが国の『癌取扱い規約』の疾患分類もWHO分類に合わせて変更されている傾向はあるものの,両者の疾患分類が必ずしも一致するとは限らない.特に,肝胆膵領域では両者の疾患分類には異なる部分も多く,混乱を招いているのは事実である.
放射線診断医の日常臨床において,WHO分類は知っておかなければならないものであると私は考えている.とりわけ肝胆膵領域では,WHO分類にしか存在しない疾患名や亜分類があり,病理,消化器外科,消化器内科の先生方はWHO分類を使う傾向にあるため,放射線診断医にとっても必須の知識である.しかし,私がこれまで携わってきた大学や病院の医局・読影室には,わが国の『癌取扱い規約』はひととおり置いてあっても,“WHO Classification of Tumours”の厚い洋書,いわゆる“blue book”はほとんど置かれていなかった.実際にWHO分類をきちんと理解できておらず,カンファレンスなどで他科の先生方と議論する際に腫瘍分類や定義などの知識が曖昧なままで困った経験をもつ放射線診断医も少なくないであろう.
2019年の夏に,消化器領域のWHO分類“WHO Classification of Tumors, 5th edition of the Digestive System Tumours”(WHO分類第5版)が9年ぶりに改訂された.肝胆膵領域では肝腫瘍をはじめとして前版から変更された箇所が多く,新規に追加された疾患名や亜分類も多く存在する.そこで,以下にポイントを置いた特集を企画させていただいた.
①各項目のポイント,特に画像診断において重要な部分を記載する.
②2010年の第4版からの変更点を記載する.
③わが国の『癌取扱い規約』との違いを明らかにする.
読者,特に放射線診断医に対して肝胆膵領域の新WHO分類をわかりやすく整理して解説し,理解していただくことが本特集の最大の目的である.本特集の執筆を担当してくださった先生方は,肝胆膵領域の画像診断の専門家の中でもWHO分類とその病理像まで精通し,かつそれぞれの疾患の画像や病理像を多数もち合わせている超エキスパートの方々である.いずれの論文も大変わかりやすくまとめられ,素晴らしい内容となっている.肝胆膵領域の画像診断に携わる上で新WHO分類に関して知っておくべき知識が網羅されている.
最後に,ご多忙の中執筆を担当してくださった先生方には誌面を借りて御礼申し上げたい.「本特集を読めば肝胆膵領域の新WHO分類はとりあえず事足りる」といっていただければ幸いである.
序説 ● 佐野 勝廣
良性肝腫瘍−限局性結節性過形成(FNH),肝細胞腺腫(HCA)− ● 原留 弘樹
悪性肝腫瘍−肝細胞癌,肝芽腫− ● 中村 優子,成田 圭吾ほか
肝内胆管腫瘍 ● 市川 新太郎
混合型肝癌,肝未分化癌,肝神経内分泌腫瘍 ● 山田 哲
胆嚢・肝外胆管腫瘍 ● 福倉 良彦,熊谷 雄一ほか
Pancreatic intraepithelial neoplasia(PanIN),膵管癌,膵神経内分泌腫瘍 ● 藤田 展宏,古賀 裕ほか
その他の膵腫瘍 ● 戸島 史仁,井上 大ほか
【連載】
すとらびすむす
私を探さないで? ● 久保 武
画像診断と病理
明細胞腺線維腫を背景とする明細胞癌とBrenner腫瘍
● 近末 智雅,角 明子ほか
ここが知りたい!
画像診断2020年10月号特集
「Value based medicine 時代の心血管画像診断」
● 真鍋 徳子,高木 英誠ほか
Picked-up Knowledge from Foreign Journals
CTコロノグラフィ ● 岡田 吉隆
CASE OF THE MONTH
Case of March ● 三好 秀直,藤井 進也
The Key to Case of January ● 山路 大輔,藤井 進也
General Radiology診断演習
旅は道連れ ● 井上 明星
Refresher Course
皮下脂肪,内臓脂肪の分布異常を示す疾患群の画像所見
● 山本 麻子,菊地 良直ほか