【特集】
序説 ● 岡田文人(大分県立病院放射線科)
神戸から赴任された杉村和朗先生に勧誘され,大学6年5月に放射線科入局を決めた.放射線科の授業に出席したことがなかったが,何らかの手技を身につけたかった.当時,島根医科大学(現:島根大学医学部)放射線科では,気管支鏡検査,上・下部内視鏡検査,ERCPを含めた数多くの検査・治療を行っていた.初代教授の故 石田哲哉先生は,医局員は平等であること,公私混同をしないこと,そして約束を守ることを基本方針としており,全く無知な私でもとても楽しく,充実した医師生活が始まった.立派な先輩方から本当に親切に丁寧に多くのことを教わった.仲良しの同級生や素敵な後輩たちにも恵まれた.杉村先生が神戸大学の教授に就任された時と同じくして,大分医科大学(現:大分大学医学部)放射線科に入局したのは医師10年目のことであった.森 宣教授のもと,新しい放射線科生活が始まった.時には深夜に及ぶカンファレンス,海外での学会活動や論文作成など,新しい教育現場に携わることとなった.好きなことを自由に研究させていただいている中で,胸部画像診断に興味をもち,研究・学会発表することを楽しみに過ごしてきた.令和2年2月,浅山良樹教授が赴任され,新しい風の中,みんなに感謝しながら医師生活を過ごしている.今までご教授いただいた先生への感謝の気持ちを決して忘れないこと,そして同僚や後輩たちにその恩返しをすることを私の信念として,毎日を大切に生きている.
私は以前から血液疾患に興味があり,それもあって感染症の研究をすることが多かった.おそらく,胸部を得意とされている先生でもしばしば悩まれるであろう「院内発症の肺病変」について特集を組んだ.まず,造血幹細胞移植に関する基本的事項と生着前後によって考えるべき疾患などについて石川和宏先生,森 信好先生にご執筆いただいた.自家移植の生着後,同種移植の生着前・後などに好発する2大感染症(アスペルギルスとサイトメガロウイルス)に加えて,肺真菌症について芦澤和人先生に,ニューモシスチス肺炎,ウイルス肺炎などについて田中伸幸先生にお願いした.肺癌治療に伴う様々な肺病変について薬剤性肺障害を含めて,負門克典先生にお願いした.院内発症とはいえないかもしれないが,私たちの生活や入院患者に多大なる影響を与えている新型コロナウイルス感染症やインフルエンザウイルス感染症について,田中健之先生,泉川公一先生にご執筆いただいた.また,新型コロナウイルス感染症の画像所見について鑑別疾患とその鑑別点を含めて,杉浦弘明先生にお願いした.最後に,感染症と区別すべき院内発症の肺疾患について上野 碧先生,栗原泰之先生にご執筆いただいた.
ご執筆いただいた先生方はご存知のとおり,とてもご高名で経験豊富な先生ばかりである.先生方の知識や考え方を後輩に伝授される橋渡しとなれば,私の恩返しになると思う.
末筆になりましたが,本当にお忙しい中,執筆を快く引き受けて受けてくださった先生方に心から感謝いたします.
序説 ● 岡田 文人
細菌性肺炎序論 ● 岡田 文人,佐藤 晴佳ほか
造血幹細胞移植と免疫不全 ● 石川 和宏,森 信好
肺真菌症 ● 芦澤 和人,岩野 佑介ほか
ニューモシスチス肺炎とウイルス肺炎 ● 田中 伸幸,小林 大河ほか
肺癌治療に伴う肺病変 −薬剤性肺障害を中心に− ● 負門 克典,佐藤 嘉尚ほか
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)とインフルエンザウイルス感染症 ● 田中 健之,泉川 公一
新型コロナウイルス(COVID-19)肺炎 −鑑別診断を含めて− ● 杉浦 弘明
感染症と区別すべき肺疾患 ● 上野 碧,栗原 泰之
【連載】
すとらびすむす
ご当地名字 ● 藤本 肇
画像診断と病理
悪性Wolff 管腫瘍 ● 角 明子,横地 美哉ほか
ここが知りたい!
画像診断2020年9月号特集
「時系列から学ぶ中枢神経疾患の画像診断−MR Retroscopy−」
● 木村 有喜男,岡本 浩一郎
Picked-up Knowledge from Foreign Journals
肺COVID-19の放射線診断 ● 小野 修一
CASE OF THE MONTH
Case of February ● 石橋 愛,藤井 進也
The Key to Case of December ● 船越 麻衣,中井 豪ほか
AI画像診断は,いま
第1回 連載序説−AI時代を迎えて− ● 陣崎 雅弘
第2回 AIの歴史と課題−なぜこれまでのAIはブームで終わったのか− ● 木戸 尚治
General Radiology診断演習
気にしていくべきもの ● 黒川 遼
Refresher Course
頭頸部癌病期分類の画像診断 ● 馬場 亮,尾尻 博也