【特集】
序説 ●野崎太希(聖路加国際病院放射線科)
関節のMRIについてどのように思うか,初学者および一般の放射線科医に印象を尋ねてみると,「とてもとっつきにくい領域で,好きではない」といわれることが多い.それはなぜかを考えてみると,人体の関節は,脊椎と顎関節を除くと,上肢が手・肘・肩の3関節,下肢が足,膝,股の3関節の計6関節あり,それぞれの日常診療での読影件数が毎日多いわけではない上に画像診断の基本となる解剖にもなじみが薄く,関節の解剖が複雑であるという固定概念と,そもそも他の領域と比べてあまり興味がなかったため知識が乏しいということが原因の多くを占めていると推察している.
関節にかかわらず,解剖学は医学の基本であり,画像診断学においても基本中の基本と考えられるが,現在までに既知となっている関節領域の解剖知識についてその常識が覆され,新知見として発表され世の中に周知されていくことが,これだけ医学が発展した現代においても少なからずある.大学院時代にそのことを学ばさせていただいた私の恩師であり,現在も精力的に骨関節領域の解剖研究をされている東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科運動器機能形態学講座教授の二村昭元先生に,メゾ解剖学的視点で,関節包や靱帯についての概念と形態に対する考え方からいくつかの関節解剖に至るまでの総説を御寄稿いただいた.素晴らしい内容の論文となっており,まずはじめにじっくりと読んでいただきたい.そして,骨関節・骨軟部領域を専門とするエキスパートの放射線診断医の先生方に,各関節の正常像および疾患各論について玉稿をいただいた.MRIにおける画像解剖を正常例として最初に提示していただき,注目すべき解剖構造,そして各施設での撮像シーケンスをご紹介いただいた.その後に日常診療でよく出あう解剖構造の破綻,異常所見としてみられる頻度の高い関節疾患を取り上げていただく形式にした.
関節領域のMRIは,大関節では近年かなり安定した画像が得られるようになってきたが,手関節や足関節などの小関節構造を含む領域ではまだ発展途上であり,今後もさらなる高分解能化をはじめとして発展が見込まれる.それとともに,“解剖学的再建術”を目指すという命題に応じて,さらなる詳細な解剖評価が求められる時代がやってくるであろう.さらに,動態MRIも日常的に要求される時代がくると私は考えている.したがって,今後も関節MRIの需要・要求は伸びていくはずである.
読者の先生方には本特集号を熟読していただき,日常診療において,関節のMRIを含め骨関節領域の画像診断に少しでも興味をもっていただき,「好きな領域のひとつです」といっていただけるきっかけになれば,望外の喜びである.
最後に,お忙しい中,多大なご負担をかけご執筆いただいた先生方に,感謝の気持ちをお伝えしたく,この場を借りて厚く御礼を申し上げます.
序説 ● 野崎 太希
関節の解剖学における正常構造の新知見 ● 二村 昭元,堤 真大ほか
膝関節MRI ● 福庭 栄治
股関節MRI ● 大木 望,上谷 雅孝
足関節MRI ● 山森 瑛子,常陸 真
肩関節MRI ● 荒井 学,野崎 太希ほか
手関節MRI ● 堀内 沙矢,野崎 太希ほか
肘関節MRI ● 柿木 崇秀,池口 良輔
【連載】
すとらびすむす
ターニングポイント ● 富山 憲幸
画像診断と病理
子宮血管腫(海綿状血管腫) ● 角 明子,内田 政史ほか
ここが知りたい!
画像診断2020年8月号特集
「ビギナーのための頭頸部画像診断 −Q&Aアプローチ−」
● 金田 隆,大澤 威一郎ほか
CASE OF THE MONTH
Case of January ● 山路 大輔,藤井 進也
The Key to Case of November ● 佐藤 登朗,坂根 誠ほか
General Radiology診断演習
勝って兜の緒を締めよ ● 井上 明星
Picked-up Knowledge from Foreign Journals
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)における心筋イメージング ● 中原 健裕,奥田 茂男ほか
Refresher Course
膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)に対する知識を整理する ● 戸島 史仁