【特集】
序説 ●渡邉 嘉之
最近の15年間で治療法が大きく進歩した疾患のひとつに急性期脳梗塞がある.2005年にわが国で遺伝子組み換え組織型プラスミノゲン・アクチベータ(recombinant tissue-type plasminogen activator;rt-PA)静注血栓溶解療法(intravenous rt-PA;IV rt-PA)が認可され,積極的に血栓溶解療法を行う時代に入った.その後,適応時間が発症後3時間から4.5時間に延長され,血管内治療である機械的血栓回収療法のエビデンスが確立され,適応時間も発症8時間以内から24時間以内へ延長されている.この進歩には,各種デバイスの発展と画像診断による適切な患者選択の影響が大きい.
脳梗塞治療では長い間“Time is brain”が提唱され,早く治療開始することが重要といわれてきた.特に,発症6時間以内の超急性期では早期治療介入が予後に直結し,できる限り短時間で画像診断を含む検査を行い,治療介入できる環境整備が進められてきた.実臨床では発症6時間以降での来院や発症時刻未確認の症例も多くあり,これらの症例に対しても画像診断で虚血領域を的確に判断することで再開通療法が有効であることが証明され,“Imaging is brain”の時代になったといえる.
2018年のStroke誌に“Late window paradox”として,遅い時間を対象としたDAWN,DEFFUSE 3トライアルの結果が6時間以内の先行研究と比べても治療効果が高いことがコメントされている.これは,画像を用いてペナンブラの診断を正確に行い,機械的血栓回収療法が有効である症例を選択することの重要性が再確認されたといえる.
本特集では「急性期脳梗塞診断と治療法の進歩」として,各領域のエキスパートの先生方に執筆をお願いした.この分野のトピックとして2018年12月に「脳卒中・循環器病対策基本法」が成立したので,その経緯や今後の基本計画について,その成立に関与された峰松一夫先生にご執筆いただいた.脳梗塞の治療では内科的治療と血管内治療について,画像診断に関しては脳梗塞の画像診断全般とペナンブラ診断に重要とされている灌流画像,脳梗塞mimicsといわれる“脳梗塞疑い”と依頼され,画像診断から除外が必要な症例について解説していただいた.最後には,脳梗塞後の機能予後に大きく関与するリハビリテーションにおける画像診断の意義について記述していただいた.本特集一冊で最新の画像診断を中心に対策基本法から治療法まで広く解説されているので,2020年時点での脳梗塞診療の現状や今後の課題が理解できる内容になっている.
最適な脳卒中医療を提供するには,院内では脳卒中医,救命医,放射線科医,放射線技師などが協力し,最短時間で適切な検査を行い,短時間で治療介入できる環境整備が必要である.急性期脳梗塞医療は各病院内でのチーム医療,病院連携を含めた地域での総合力が問われる医療であり,画像診断医および放射線技師もその環境の中で最善を尽くす必要がある.本特集で急性期脳梗塞医療の進歩を理解していただき,最適化された画像診断で一人でも多くの患者の予後改善に寄与できることを願っている.
序説 ● 渡邉 嘉之
脳卒中・循環器病対策基本法と今後の脳卒中対策 ● 峰松 一夫
急性期脳梗塞の治療の進歩 ● 小川 暢弘,北村 彰浩ほか
急性期脳梗塞における血管内治療の進歩 ● 山上 宏
急性期脳梗塞の画像診断 ● 篠原 祐樹
急性期脳梗塞の画像診断における灌流画像の意義 ● 井上 学
急性期脳梗塞mimics−脳梗塞と間違えてはいけない疾患− ● 勝部 敬,河原 愛子ほか
脳卒中のリハビリテーションにおける画像診断の役割 ● 服部 憲明
【連載】
すとらびすむす
スポーツジム ● 浅山 良樹
画像診断と病理
髄芽腫(desmoplastic/nodular type) ● 竹中 淳規,山口 晃典ほか
ここが知りたい!
画像診断2020年7月号特集
「原点回帰! 骨軟部の単純X線写真を深く読み解こう」
● 神島 保,福田 健志ほか
CASE OF THE MONTH
Case of December ● 船越 麻衣,中井 豪ほか
The Key to Case of October ● 堀 章裕,重里 寛ほか
General Radiology診断演習
名が体を表さない ● 黒川 遼
Picked-up Knowledge from Foreign Journals
GFAP astrocytopathy ● 森 墾
Refresher Course
血液内科疾患の移植後肺病変:特発性肺炎症候群
● 田中 伸幸,小林 大河ほか