【特集】
序説 ●坪山 尚寛
診断を“決める”――読影やカンファレンスで私が唯一心掛けていることです.診断を“当てる”ことが何より重要と信じていた(憧れていた)頃もありました.確かに画像診断の精度は向上しています.画像診断は当たって当然,という風潮さえ漂っているように感じます.しかし,それは幻想です.現実において画像診断は不完全なものであり,一定の割合で必ず間違えます.特に,腫瘍の画像診断は細胞レベルへの挑戦であり,画像で細胞がみえない以上,そもそも当たるわけがないのです(当たることは逆にすごいことなのです!).それでも臨床の現場で感じるのは,「ある程度間違えてもいいから,診断を決めて欲しい」という画像診断への期待です.診断を決めないことには治療方針が決まりません.放射線科医が間違いを恐れて明確な診断を避けた場合でも,診断を決める必要性は厳然として残り,その任務を主治医に丸投げしたにすぎません.もちろん,最終診断は様々な臨床情報を加味して主治医によって決定されるべきですが,画像診断に関する決定を放射線科医が担うか否かは,放射線科医の存在意義に関わる問題ではないでしょうか.放射線科医の仕事は診断を“当てる”ことではなく,むしろ完全には当たらないからこそ,“決める”ことだと思うのです.
本特集は,読者の皆さんが婦人科画像診断をビシバシ当てられるようになるためのものではありません.診断を“決められる”ようにサポートするためのものです.診断を決めるためには,解剖の境界線はどこなのか,信号や集積の高さの基準は何か,良悪性や浸潤の診断基準は何か,などの“診断のルール”を知る必要があります.これらのルールは,『癌取扱い規約』や国内外のガイドラインに記載されている場合もありますし,論文の方法欄にそっと書かれていることもあります.近年盛んなRADS(Reporting and Data System)も,画像診断ルールに他なりません.このようなルールを拾い集め,現時点における“婦人科画像診断のルールブック”として活用していただくべく,本特集を企画いたしました.また,診断を決めるという点において,病理学ほど良い模範はありません.病理診断の実践方法や診断ルールへ向き合う姿勢には,大きなヒントがあるはずです.一方で,病理診断にも曖昧さが存在することは,画像と病理が一致しない原因を探る上で知っておく必要があります.
執筆は,私が常日頃敬服の念に堪えないエキスパートの先生方にお願いしました.大変お忙しい中,快くお引き受けいただき,私の稚拙な意図を補って余りある素晴らしい解説をしていただいたことに深謝いたします.読者の皆さん,本特集を片手に,ぜひ診断を“決めて”ください.ルールに則った以上,間違いを恐れる必要はありません.それは現時点での画像診断の限界でしかないのですから.
序説 ● 坪山 尚寛
画像診断に役立つ婦人科病理組織学 ● 山田 隆司
子宮頸癌のMRI ● 樋本 祐紀,山ノ井 康二ほか
子宮内膜癌のMRI ● 上野 嘉子,今岡 いずみほか
子宮筋腫・肉腫のMRI ● 麻谷 美奈,布澤 悠磨ほか
子宮内膜症のMRI ● 中井 豪,山本 和宏ほか
付属器腫瘤のMRI ● 坪山 尚寛,福井 秀行ほか
リンパ節転移の画像診断-FDG-PET/CTを中心に- ● 尾谷 知亮,中本 裕士
【連載】
すとらびすむす
新三種の神器 ● 真鍋 徳子
画像診断と病理
Dysplastic cerebellar gangliocytoma(Lhermitte-Duclos disease) ● 星野 豊,亀田 浩之ほか
ここが知りたい!
画像診断2020年6月号特集
「肝胆膵の画像診断−おさえておきたいモダリティ別ポイント−」
● 福倉 良彦,出雲崎 晃
CASE OF THE MONTH
Case of November ● 佐藤 登朗,坂根 誠ほか
The Key to Case of September ● 沖野 佳,山本 聖人ほか
General Radiology診断演習
他人の空似 ● 井上 明星
Picked-up Knowledge from Foreign Journals
脊椎 ● 青木 隆敏
他科のエキスパートにお尋ねします−ここを教えていただけますか?
泌尿器編 ● 伊藤 敬一,新本 弘
Refresher Course
脳内鉄沈着を伴う神経変性症(NBIA)の画像診断
● 木村 有喜男,佐藤 典子