【特集】
序説 ●齋藤尚子
頸部領域の画像診断は大変興味深く奥が深い分野であると,日々の診療の中で実感している.私は,この頭頸部画像診断の領域に携わることができて良かったと心から思っており,これまで私を指導してくださった先生方や,ともに診療を行ってきた先生方に感謝している.
しかし一方で,日々読影していると,PACSの読影リストで頭頸部の症例が夕方までずっと未読のまま残っている状況が多くみられ,初期研修医や若い画像診断医からはあまり人気がないのでは…? という切ない想いを以前からもっていた.そのような状況の中で研修医から,「頭頸部はビギナーにとって魔境!」という衝撃的な声を聞いてしまった.研修医の先生方から改めて詳しく聞いてみると,「解剖が難しい」,「頭頸部は狭い範囲にたくさんの構造があり,細かすぎて拒否反応を起こす」,「どこを注意して読影してよいのかよくわからない」,という声が多く聞かれた.そのような背景を鑑みると,頭頸部領域の画像診断のビギナーにとってやさしく,またビギナーが勉強しやすいような,きわめて基本的な頭頸部画像診断の知識の整理が必要とされているように感じる.
そこで,過去の『画像診断』特集の中で,胸部(2014年7月号),頭部(2015年9月号)でとても好評であった“Q&Aスタイル”の企画を考えた.研修医や若い先生方にも協力していただき,たくさんの項目のリクエストを頂戴した.また他にも,頭頸部を専門としていない画像診断医の先生方が読影する際に出てきそうな疑問点を,できるだけリストアップした.本特集は,彼らの疑問点を基に,その質問にわかりやすく答えるような形式になっている.本特集では,ビギナー目線に立って,できるだけわかりやすく解説することを心がけた.そして,ビギナーの先生方に最低限知っておいてほしい頭頸部画像診断の要点を中心に取り扱うことにした.
本特集の執筆を担当してくださった先生方は,頭頸部領域の画像診断をリードしているエキスパートの先生方ばかりである.どの項目も大変わかりやすく,素晴らしい内容になっている.ご多忙の中,そして未曾有の新型コロナ禍の中,執筆を担当してくださった先生方と編集者の方々には誌面を借りて厚く御礼を申し上げたい.
ビギナーの先生方が読影時に疑問が生じた際,まずみてもらえるような,また疑問点がすぐに解消できるような,そんなビギナーの先生に役立つ特集になれば幸いである.本特集をきっかけに,頭頸部画像診断に対する苦手意識がなくなり,日本中の夕方の未読リストに頭頸部の症例が少しでも減ることを願っている.そして最終的には,本特集を通じて頭頸部画像診断の魅力に気づき,興味をもってくださる先生方が少しでも増えていくことを心から願っている.
序説 ●齋藤 尚子
1. 検査の基本
Q1 CTとMRIをどう使い分けますか? ● 馬場 亮
Q2 CTおよびMRIにおける造影剤投与の適応を教えてください.● 馬場 亮
Q3 拡散強調像はどのような疾患に役立ちますか? ● 藤田 晃史
Q4 注意すべきMRIでのアーチファクトを教えてください.● 藤田 晃史
2. 解剖
Q1 ビギナーが知っておくべき頭頸部の解剖をわかりやすく教えてください.● 松浦 紘一郎,齋藤 尚子
Q2 舌根部って舌じゃないのですか? ● 勇内山 大介,大久保 充ほか
Q3 内視鏡写真の見方がわかりません.CT・MRIではどう対比すればよいですか? ● 勇内 大介,大久保 充ほか
Q4 内視鏡下鼻内手術や経蝶形骨洞下垂体腫瘍摘出術などの術前CTで,指摘しておく箇所を教えてください.● 加藤 博基,安藤 知広ほか
Q5 耳下腺深葉と浅葉,下極の区別と,その必要性を教えてください.● 三浦 あづさ,柏木 伸夫
Q6 智歯抜歯や口腔インプラントの術前画像検査で,指摘しておくべきポイントを教えてください.● 金田 隆,村岡 宏隆
Q7 頸部リンパ節の区分,レベルを教えてください.● 内匠 浩二,酒井 修
3. 所見からのアプローチ
Q1 どういう時に“有意なリンパ節腫大”といってよいですか? ● 内匠 浩二,酒井 修
Q2 CTで内部に低吸収域を伴うリンパ節腫大の鑑別を教えてください.● 藤間 憲幸,酒井 修
Q3 リンパ節の節外浸潤の画像所見と,その必要性を教えてください.● 藤間 憲幸,酒井 修
Q4 耳下腺に腫瘤を認めた時,どのように読影・診断をすればよいですか? ● 柏木 伸夫
Q5 鼻腔に腫瘤を認めた時,どのように読影・診断すればよいですか? ● 田中 宏子
Q6 甲状腺に腫瘤を認めた時,どのように読影・診断すればよいですか? ● 松浦 紘一郎,齋藤 尚子
Q7 側頸部に嚢胞性疾患を認めた時,どのように鑑別すればよいですか? ● 勇内山 大介,大久保 充ほか
Q8 頸動脈間隙に腫瘤を認めた時,どのように鑑別すればよいですか? ● 檜山 貴志
Q9 咽頭後間隙に浮腫を認めた時の鑑別診断を教えてください.● 馬場 亮
Q10 顎骨に嚢胞性病変を認めた時,どのように読影・診断すればよいですか? ● 金田 隆,平原 尚久ほか
Q11 “ただの中耳炎”でよいですか? 見逃してはいけない疾患のチェックポイントを教えてください.● 大澤 威一郎,山本 裕也ほか
Q12 “ただの副鼻腔炎”でよいですか? 見逃してはならない疾患のチェックポイントを教えてください.● 豊田 圭子
4. 疾患からのアプローチ
Q1 中咽頭癌でp16 陽性か陰性かをカルテチェックした方がよいですか? ● 久野 博文
Q2 上咽頭癌で頭蓋底浸潤を見逃さないコツは何ですか? ● 久野 博文
Q3 真珠腫を疑われた時,見逃さないためのコツを教えてください.● 大澤 威一郎,白鳥 泰良ほか
Q4 内反性乳頭腫を疑われた時,見逃さないためのコツを教えてください.● 加藤 博基,安藤 知広ほか
Q5 原発不明癌ではどこに注意すればよいですか? ● 檜山 貴志
Q6 視神経炎が疑われた時,どこを注意すればよいですか? ● 大澤 威一郎,田中 小百合ほか
Q7 神経周囲進展について教えてください.● 田中 宏子
5. 症状からのアプローチ
Q1 嗄声の検査では,どこに注意して読影すればよいですか? ● 豊田 圭子
Q2 難聴の精査では,どこに注意して読影すればよいですか? ● 大澤 威一郎,海津 茜ほか
Q3 眼窩部の骨折で見逃してはいけない合併症を教えてください.● 浮洲 龍太郎
Q4 Le Fort骨折のタイプと読影のポイントを教えてください.● 浮洲 龍太郎
6. その他
Q1 代表的な頭頸部癌の術後性変化を教えてください.● 斎藤 哲,齋藤 尚子
Q2 頭頸部癌の再発を診断するポイントを教えてください.● 斎藤 哲,齋藤 尚子
Q3 放射線治療後の画像所見を教えてください.● 斎藤 哲,齋藤 尚子
【連載】
すとらびすむす
他人は皆,師匠 ● 森 墾
画像診断と病理
鼻腔軟骨肉腫 ● 曽々木 昇,志村 亮祐ほか
ここが知りたい!
画像診断2020年3月号特集
「MRI 再入門−放射線科医のためのマストアイテム−Part 2」
● 舟山 慧,江戸 博美
CASE OF THE MONTH
Case of August ● 佐藤 力,東山 央ほか
The Key to Case of June ● 吉見 聡美,上谷 雅孝
General Radiology診断演習
結果の中に原因がある ● 黒川 遼
Picked-up Knowledge from Foreign Journals
ウイルス性肺炎・COVID-19のCT診断 ● 小野 修一
Webカンファレンス入門
Webカンファレンスに参加しよう! −Zoomアプリの使い方−
● 池之内 穣,青木 茂樹
Refresher Course
ダイナミック・スタディの造影パターンに基づく卵巣腫瘍の鑑別診断
● 蟹江 悠一郎,三森 天人