【特集】
序説 ●小橋由紋子
数年前に,関節の単純X線写真の翻訳を手がける機会を得た.この本はイギリスの医学生教育のために作成された教科書で,細部にわたり単純X線写真を理解するための工夫がなされていた.私にとっても復習になったり新たに学んだりと,単純X線写真の価値を再認識することができたと思う.しかしながら,医学生が臨床に携わる機会がないうちに,185ページもある単純X線写真の教科書を勉強するのは大変だろうなとも感じた.
さて,学生時代はそれほど単純X線写真を学ぶ機会のないわが国ではどうだろうか? 放射線科医も果たして系統立てて学んでいるのだろうか? 若手の放射線科医にとって「単純X線写真は撮影しているけど情報が乏しいよね」なんて思っていないだろうか? もしくは「単純X線写真は整形外科の先生が読むもので,放射線科医はやっぱりCTやMRIでしょ」と考えていないだろうか? もしもそう考えている若手が増えているのであれば,単純X線写真の魅力や必要性を伝えられていないベテラン放射線科医の深い反省が必要である.ここで一度立ち止まり,原点に帰って単純X線写真について考えてみよう.
骨軟部領域において,単純X線写真は疾患を知る最初の手がかりである.様々な撮影方法があり,患者の情報を元に主治医のオーダーで放射線技師が撮影するわけだが,放射線技師がどのような工夫をして撮影をするのか,どのようなことで(人知れず)苦労しているのかについて佐藤光洋技師,本技師に,技師の目線から原稿をご執筆いただいた.骨軟部領域の外傷は骨折の指摘が重要であり,その分類や読影方法を荻原 翔先生に,様々な関節炎についての単純X線写真での診断や鑑別を,山本麻子先生,神島 保先生,福田健志先生にMRIやCTと対比も加えてご執筆いただいた.鈴木智大先生には骨腫瘍の読影方法をご執筆いただいた.骨腫瘍はCTやMRIより単純X線写真での所見が重要視される領域であり,きめの細かい読影能力が要求される.整形外科の穴澤卯圭先生には,骨関節の術後の評価にどのように単純X線写真を用いているか述べていただいた.また,手術で用いている内固定具のトラブルの判定方法,人工骨や自家骨の自然経過の判定方法など,放射線科医がなかなか理解できていない部分をご説明いただいた.藤本 肇先生には,時に異常なのか正常なのか判断に迷う正常変異・偽病変について具体例を多数挙げていただいた.ご執筆いただいた先生方に深謝するとともに,本企画が画像診断に対する新たな情報提供となることを祈っている.
最後に,この序説を書いている今はまさに緊急事態宣言の最中である.放射線科医だけではなく,すべての医療従事者がCOVID-19対策に追われ,疲弊している方々も多いと思う.学会や研究会,カンファレンスが中止や延期になり,病院以外の外出もろくにできない状態であるが,常に学ぶ気持ちを忘れずに頑張っていきたいと思う.
序説 ● 小橋 由紋子
単純X線写真の撮影法 ● 佐藤 光洋,本 佑一郎
変形性関節症 ● 山本 麻子,石川 祐一
関節リウマチ ● 神島 保
脊椎関節炎,結晶沈着性関節炎 ● 福田 健志,渡嘉敷 唯司ほか
骨折 ● 荻原 翔,小橋 由紋子ほか
術後単純X線写真の診断 ● 穴澤 卯圭,堀田 拓ほか
原発性骨腫瘍,転移性骨腫瘍 ● 鈴木 智大,江原 茂
正常変異,偽病変 ● 藤本 肇,宮川 国久
【連載】
すとらびすむす
Followership? ● 扇谷 芳光
画像診断と病理
縦隔原発混合型胚細胞腫瘍 ● 井浦 孝紀,吉川 仁人ほか
ここが知りたい!
画像診断2020年2月号特集
「MRI 再入門−放射線科医のためのマストアイテム−Part 1」
● 金澤 裕樹,阿部 考志ほか
CASE OF THE MONTH
Case of July ● 松岡 俊裕,北埜 玲美ほか
The Key to Case of May ● 田崎 裕太郎
General Radiology診断演習
色眼鏡をはずす ● 井上 明星
Picked-up Knowledge from Foreign Journals
虚血性心筋症 ● 中原 健裕,奥田 茂男ほか
他科のエキスパートにお尋ねします-ここを教えていただけますか?
頭頸部編 ● 結束 寿,馬場 亮
Refresher Course
免疫チェックポイント療法による合併症 ● 原田 太以佑