【特集】
序説 ●石神康生
肝胆膵の画像診断では,多くの放射線科医が日常診療でのCT・MRI診断レポート作成に関わっている.また,消化器内科,消化器外科など複数の診療科が肝胆膵疾患の診療に携わっており,CT・MRIのみならず造影超音波,超音波内視鏡,ERCPなどのマルチモダリティで診断にアプローチしている.
消化器内科や消化器外科とのカンファレンスや院外の研究会では,放射線科医がCT・MRIにおける“重要な所見とその診断的意義”を簡潔かつわかりやすくコメントすることが求められる.一方,CTやMRI以外のモダリティの画像が提示された際,放射線科医がその画像所見を十分に理解できないことも少なくない.CT・MRI以外のモダリティでの肝胆膵の代表的疾患の典型的所見を知っておくことは,放射線科医としての視野を広げるだけでなく,消化器内科・外科とのディスカッションを円滑にし,相補的かつ総合的な診断アプローチの一助になるのではないかと考えられる.
人工知能(AI)の医療への参入が今後の放射線科医のあり方に大きな変革を起こすことは疑いないことだが,放射線科医が他の診療科とコミュニケーションを取りながら診療に携わってくことの重要性は今後も変わらない.
そこで,本特集を企画し,放射線科医の立場からCT・MRIが診断の決め手となる肝胆膵疾患の画像所見とその診断的意義について,消化器内科医の立場から肝胆膵の代表的疾患の造影超音波,超音波内視鏡所見について各分野のエキスパートの先生方にご執筆いただいた.また,本特集では,学術性の高い内容よりも日常診療やカンファレンスで参考になる内容により主眼を置いたが,新しい撮像法や新しい知見,診療ガイドライン改訂などでも日常診療に有用と考えられる情報があれば,取り入れていただいた.
九州大学の西江昭弘先生にはEOB-MRIによる肝腫瘍の鑑別診断や脈管浸潤,肝機能評価について,信州大学の雄山一樹先生には肝内胆管癌の分類,鑑別診断,進展度・進行度診断について,さらに新小倉病院肝臓病センターの山下信行先生には肝腫瘤性病変の代表的疾患の造影超音波所見とその役割についてご解説いただいた.鹿児島大学の福倉良彦先生には膵の充実性腫瘤,嚢胞性腫瘤の特徴的CT・MRI所見について,金沢大学の出雲崎 晃先生には自己免疫性膵炎や急性膵炎・慢性膵炎のCT・MRIによる評価についてご解説いただいた.浜松医科大学の五島 聡先生には胆嚢,胆管病変でのCT・MRI診断,良悪性の鑑別についてご解説いただいた.がん研有明病院肝・胆・膵内科の笹平直樹先生には胆・膵の代表的疾患の超音波内視鏡所見,CT・MRIでの診断困難例での有用性,EUS下生検についてご解説いただいた.
ご多忙の中,執筆をご快諾いただいた先生方には誌面を借りて御礼申し上げたい.どの論文もわかりやすく素晴らしい内容であり,本特集号が放射線科医のみならず消化器内科医や消化器外科医の先生方に役立てば幸いである.
序説 ● 石神 康生
EOB-MRIによる肝の画像診断 ● 西江 昭弘,浅山 良樹ほか
肝内胆管癌のCT・MRI診断 ● 雄山 一樹,小林 健太郎ほか
造影超音波検査による肝の画像診断● 山下 信行,堀 史子
膵腫瘤性病変のCT・MRI診断 ● 福倉 良彦,熊谷 雄一ほか
膵炎のCT・MRI診断● 出雲崎 晃,井上 大ほか
胆嚢・胆管病変のCT・MRI診断 ● 五島 聡
胆膵疾患の超音波内視鏡診断 ● 笹平 直樹,三重 尭文ほか
【連載】
すとらびすむす
飲水思源 ● 大須賀 慶悟
画像診断と病理
粘液性嚢胞腫瘍 ● 冨士 智世,西田 俊博ほか
ここが知りたい!
画像診断2020年1月号特集
「脳腫瘍診断update 2020」
● 森谷 聡男
CASE OF THE MONTH
Case of June ● 吉見 聡美,上谷 雅孝
The Key to Case of April ● 大木 望,上谷 雅孝
Picked-up Knowledge from Foreign Journals
神経放射線:ANCA関連血管炎 ● 森 墾
General Radiology診断演習
視野狭窄は難病の元 ● 黒川 遼
Refresher Course
知っていると差がつく!
頭頸部感染症のピットフォール ●神田 知紀
特別寄稿
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の画像診断● 戌亥 章平,藤川 章ほか