【特集】
序説 ●扇谷芳光
腎・泌尿器領域の画像は,多くの画像診断医が日常臨床として読影レポートの作成に関わっている.その一方で,腎・泌尿器の画像診断に関する最近のトピックは多岐にわたり,他の分野を専門とする放射線診断専門医や若手放射線科医にとって,最新の知識を保つことは大変な労力を要するだろう.そこで今回,このような放射線科医が腎・泌尿器の画像診断における最新の知識をupdateすることを目的として,本特集を企画した.
前立腺MRIの撮像・読影の標準化を目的に,PI-RADS v2が発表され,2019年にPI-RADS v2.1に改訂された.最近は,泌尿器科医からPI-RADSに基づいたカテゴリー分類を求められるようになっている.そこで,泌尿器領域を専門としない画像診断医がPI-RADS v2.1のカテゴリー分類ができるようになることを,目的のひとつとした.また,日常臨床で一般化されていないものの,今後導入されうる前立腺癌のMRIガイド下生検やPET/CTについての知識も確認できるようにしたいと考えた.
画像診断の標準化と流れの中で,膀胱癌に関しても,MRIの撮像法,レポートの標準化を目的としてVI-RADSが提唱されている.今後は,VI-RADSについての知識が求められるようになるだろう.
腎細胞癌に関しては,2016年あるいは2004年のWHO分類で加わった新たな組織型の腎細胞癌の一部はCT・MRI所見が報告されており,淡明細胞型腎細胞癌などの古典的腎細胞癌との違いを整理しておく必要があるだろう.また,腎部分切除術が多くの施設で施行されるようになり,腎・泌尿器領域を専門としない放射線診断専門医も,腎部分切除術前の評価が求められるようになっている.
原発性アルドステロン症は,最も頻度の高い二次性高血圧の原因であり,適切な診断と治療で治癒が見込めるため,画像診断医,IVR医にとって重要な疾患である.超選択的副腎静脈サンプリングと経皮的ラジオ焼灼術や副腎部分切除により,低侵襲に治療しうることを知っておくべきだろう.
愛知医科大学の都築豊徳先生には,前立腺癌の肉眼的・病理学的特徴とmulti-parametric MRIとの関係,intraductal carcinoma of the prostateについて解説していただいた.慶応義塾大学の有田祐起先生には,PI-RADS v2.1の判定基準とその問題点について詳述いただいた.熊本中央病院の片平和博先生には,MRIガイド下生検について豊富な経験に基づいてご教示いただいた.兵庫医科大学の北島一宏先生には,前立腺癌のFDG-PET/CTに加え,コリンやPSMAをトレーサとしたPET/CTについても解説していただいた.ラジオロネット東海の竹内 充先生には,VI-RADSに準じた膀胱癌の診断法を詳述いただいた.慶應義塾大学の秋田大宇先生には,稀な腎細胞癌ならびに血管筋脂肪腫の画像所見を解説していただいた.愛仁会高槻病院の高橋 哲先生には,腎部分切除術における術前画像評価のポイントをご教示いただいた.東北大学病院の清治和将先生には,原発性アルドステロン症の最新の診断・治療について詳述いただいた.
最後にご多忙の中,快く執筆を引き受けていただいた先生方に誌面を借りて心より感謝申し上げます.
序説 ● 扇谷 芳光
前立腺癌の病理診断 ● 都築 豊徳,伊藤 貴士ほか
前立腺癌のMRI診断 ● 有田 祐起,玉田 勉ほか
前立腺癌の局在診断とMRIガイド下生検 ● 片平 和博
前立腺癌のPET/CT ● 北島 一宏,河中 祐介ほか
VI-RADSによる膀胱癌の局所病期診断
● 竹内 充,上野 嘉子ほか
腎腫瘍の画像診断 ● 秋田 大宇,池田 織人
ロボット支援手術時代の腎低侵襲治療に対する画像診断 ● 髙橋 哲
原発性アルドステロン症の診断・治療 ● 清治 和将,大田 英揮ほか
【連載】
すとらびすむす
京都アニメーションと画像診断 ● 鹿戸 将史
『画像診断』40周年に寄せて
目指せ,東京ステーションホテル ● 荒木 力
未来へつなぐ ● 栗林 幸夫
画像診断と病理
膀胱paraganglioma ● 東堀 遥,富吉 秀樹ほか
ここが知りたい!
画像診断2019年12月号特集
「知っていると役立つ小児画像診断における正常と異常の境界」
● 安藤 久美子,宮坂 実木子ほか
CASE OF THE MONTH
Case of May ● 田崎 裕太郎
The Key to Case of March ● 池辺 洋平,上谷 雅孝
他科のエキスパートにお尋ねします-ここを教えていただけますか?
骨軟部編 ● 原 友紀,岡本 嘉一
Picked-up Knowledge from Foreign Journals
骨軟部腫瘍のMRI定量的評価 ● 青木 隆敏
General Radiology診断演習
胆管に疵もてば… ● 井上 明星
Refresher Course
急性期虚血性脳卒中の画像診断 ● 上谷 浩之,北島 美香ほか
【5月号 読者アンケートのご紹介】
・前立腺癌、膀胱癌、腎癌、さらに原発性アルドステロン症という腎・泌尿器のメイン・トピックス全体に及ぶ幅広い特集であった。盛り沢山の内容ながら、各分野の最新の知見が盛り込まれていて、40周年にふさわしい意欲的な内容だったと思う。
・特に印象的だったのが、MRIガイド下生検、腎腫瘍のロボット支援手術、原発性アルドステロン血症といった手技や治療をターゲットとする画像診断に比較的多くのページが割かれていたことであった。個人的には現状、いずれもあまり縁がないのだが、個々の治療方針に応じた画像診断が求められるようになってきていると感じた。他の領域も含め、治療や生検等診断の手段が刷新されていくにつれて、画像診断にもその振り分けや調整を担う役割が追加されていく。そういう意味でも、常に画像所見に止まらない各分野の最新の情報を掴んで行かなければならないと思う。
・一方、基礎となる病理についても巻頭でしっかりとまとめられていてよかった。特に悪性度が高いにもかかわらず、MRIで検出されにくいIDC-Pやcribiriformを含む前立腺癌については今回の特集で初めて知り、大変勉強になった。