【特集】
序説 ●原田雅史
2月号に引き続き,“MRI再入門”と題して,MRIの理解に必要な最低限の基礎的事項について,前回含まれなかった領域における検査施行のためのプロトコールや,検査と診断のための注意点および重要点を中心に特集した.この2号にわたる特集を読んでいただければ,放射線科におけるMRI検査に必要な基礎知識を十分に身につけていただけると信じている.また,代表的な症例についても,その所見や読影の注意点も含めて紹介されており,日常画像の理解の向上に利用していただけるものと思う.
本特集を通して,MRIのもつ多くの可能性と潜在力を感じていただけるのではないだろうか? ただその内容が,時には煩雑で複雑であり,場合によっては解釈に混乱を生じさせることがあるかもしれない.本特集を参考に自分なりの方法で知識を整理していただければ,MRIの診断能の柔軟性が理解できるのではと思っている.
現在,深層学習などの人工知能(AI)が花盛りであり,近い将来必ず放射線診断領域にAIが入ってくると考えられる.しかし,MRIなどのモダリティを選択し,画像診断のプロトコールを決定して,最適な測定条件と解析処理を計画するのは,画像診断医や技師である.そのため,我々にはMRIの技術を最適化して最も有用で高品質なデータを取得できる知識と能力が求められているといえる.本特集は,近い将来起こりえる画像診断の環境変化においても,我々に必要な基礎知識を整理して提示したものと思考えている.今日からの日常診療にも大いに役立つとともに,これからのAI時代への準備のためにも利用していただきたい.
最後に,これからのMRIの可能性について少しだけ触れておきたい.AIの技術はMRIの撮像や再構成においても進歩をもたらし,高速化と高解像化の両立に役立っているが,さらに定量化技術においても応用されてきている.synthetic MRIやfinger printingの応用は今後も増加するであろうし,標準撮像となる可能性を有している.また,7Teslaの超高磁場装置が臨床用として認可され,臨床応用可能になると,新たな代謝や機能的なイメージングもさらに高精度となることが期待できる.functional MRIやCESTのみではなく,拡散情報による微小環境の評価も高精度に行える可能性がある.
一方,現在社会的に注目されている“持続可能な開発目標(sustainable development goals;SDGs)”もMRI装置に無縁ではなく,Heや電気の省力化を含めた開発が続けられており,フィリップス社が最近発表したHeレス装置は注目に値する.このような新たな装置の開発は,独創的な技術開発と融合して,医療現場にこれまでにない変革をもたらす可能性がある.
このようにMRIの進歩は目覚ましいが,最も重要なのは患者第一主義であり,いつの時代でも忘れてならない原理原則である.MRIの革命的な進歩とAIの爆発的な普及拡大があったとしても,患者第一目線で対応する限り,我々の目指す方向に誤りはないと考えている.これからのMRIの発展を正しく理解し,有効利用するためにも,本特集が皆様の一助となることを祈っている.
序説 ● 原田 雅史
肝MRI ● 舟山 慧,本杉 宇太郎
胆道系および膵のMRI ● 福倉 良彦,熊谷 雄一ほか
女性骨盤MRI ● 竹内 麻由美,松崎 健司ほか
男性骨盤MRI ● 江戸 博美,新本 弘
膝および肩関節MRI ● 稲岡 努,寺田 一志
骨軟部腫瘍のMRI ● 髙尾 正一郎,近藤 みほこほか
脊椎MRI ● 藤田 大真,掛端 伸也ほか
【連載】
すとらびすむす
考えない動物 ● 掛田 伸吾
『画像診断』40周年に寄せて
『画像診断』とともに過ごした40年 ● 杉村 和朗
この40年で変わったこと,変わらないこと,これからも変わらないであろうこと−beyond artificial intelligence−
● 酒井 文和
画像診断と病理
腎平滑筋腫 ● 近藤 翔太,豊田 尚之ほか
Picked-up Knowledge from Foreign Journals
膵腫瘍 ● 岡田 吉隆
CASE OF THE MONTH
Case of March ● 池辺 洋平,上谷 雅孝
The Key to Case of January ● 石山 彩乃,上谷 雅孝
General Radiology診断演習
一期二会 ● 井上 明星
他科のエキスパートにお尋ねします-ここを教えていただけますか?
胸部編 ● 伊藤 光佑,小林 大河ほか
Refresher Course
新しい術後膵液瘻(POPF)分類に沿った画像診断とマネージメント
● 小田 晃義,鶴﨑 正勝
【読者アンケートのご紹介】
・特集タイトル「MRI再入門」を最初に見たとき、限られた誌面ではざっくり網羅的、大味な仕上がりになるのではないかと危惧したが、実際読んでみると全くそんなことはなかった。各分野について、基本的な疾患、ちょっとだけ珍しい疾患について具体的なプロトコルを含めて詳細に解説してくれる。例えば肝胆膵分野でのT1WI in-outなど、もう当たり前になっていて、なぜその撮像をするのか、どう撮像すればより役立つ画像が手に入るのか等、普段思い至らないことに改めて気づかせてくれた。特に各疾患について、「撮像プロトコルのポイント」「疾患基本事項」「読影のポイント」がそれぞれ分けて書かれていたのがわかりやすくてよかった。
・勤務先の病院は救急疾患と手術件数の多い市中病院だが、とにかく画像検査件数が多いため、効率的かつ診断治療に役立つ画像診断が求められる。改めて目的(スクリーニング、術前の最終診断等)に合わせた検査計画が必要とされている時に、大変タイムリーな内容で助けられた。
・新しく入局してくる若手のためにも、基本的な画像所見だけでなく、なぜその検査をするのかという基礎知識の習得にお勧めしたい内容であった。