【特集】
序説 ●原田雅史
本号と次号の2回に分けて「MRI再入門」と題し,MRIの理解に必要な最低限の基礎的事項から,全身の各領域にわたる検査施行のためのプロトコール,および検査や診断のための注意点・重要点についての特集を組ませていただいた.MRIの分野は,新しい技術や手法の開発が目覚ましく,新技術がすぐに臨床機に搭載され,新たな知見の蓄積に役立っている.さらに,放射線診断領域ではそれらの知見を整理して読影バイアスをできるだけ排除したシステム化の動向もみられ,読影の標準化に寄与することが期待されている.
まず,MRIの技術については,金澤裕樹先生に基本的な原理と撮像シーケンスに加え,新たに臨床機に搭載されるようになった圧縮センシングやマルチバンドといった先端技術も含めて解説していただいた.臨床の日常診療にもMRIの専門用語が既に使用されるようになっているため,MRIにあまり馴染みのない読者の方にも知識として知っておいていただくことも大切と思う.
さらに各部位ごとに,その領域のエキスパートの先生方に,MRI検査のプロトコールを立案するための必要なシーケンスの組み合わせと,その際の注意点や必要事項についてまとめていただいた.各項目の後半には実際の症例画像を通して,撮像方法のノウハウが理解できるように工夫していただいた.
最近では,MRI検査で採用されるシーケンス数が増加し,検査時間が延びる傾向が著しくなっている.一方で,各診療科におけるMRIの必要性は益々高まり,放射線科医は検査依頼数の増加に悩まされることに加えて,医療経済を取り巻く環境の厳しさや病院経営の面からも,検査数の増加を要望されることが多い.MRIの検査時間は,プロトコール策定が最も影響を及ぼし,診断に必要十分なシーケンス数に限定した検査プロトコールの立案が重要である.一方で,“abbreviated MRI”という考え方が提唱されているが,どこまで簡素化が可能かについては,十分なコンセンサスが広く得られているわけではない.そのような現状において,いわゆる○○-RADS(Reporting and Data System)と呼ばれる読影のシステム化が提唱され,領域によってはかなり普及が始まっている.abbriviated MRIについても,この診断システムと併せて考えることによって,普遍性の高いMRIプロトコールの簡素化が可能となる可能性がある.そこで,このような読影システムが提唱されている疾患については,できるだけ紹介していただくようにした.
本特集では人工知能(AI)は対象ではないが,MRIではどのような撮像法をAI診断に用いるかでかなり精度が異なることが予想される.また同じ撮像法でも,撮像パラメータや処理方法によって画像情報の質と量が異なってくる.本特集が,AI診断の前段階に放射線科医が直接関与するための必要最低限なMRI知識を整理した内容として,今後のAI診断においても重要な意義をもつと考えている.本特集が多くの放射線科医と技師,およびMRIに関連する方々のお役に立つことを祈っている.
序説 ● 原田 雅史
MRIの原理と各種撮像シーケンス ● 金澤 裕樹
頭部MRI:脳血管障害 ● 阿部 考志,兼松 康久ほか
頭部MRI:脳腫瘍と脱髄・炎症疾患 ● 藤間 憲幸,清水 幸衣ほか
頭頸部MRI ● 安藤 知広,加藤 博基ほか
乳房MRI ● 喜馬 真希,後藤 眞理子
心臓MRI ● 石田 正樹,北川 覚也
MRIの安全性 ● 黒田 輝
【連載】
すとらびすむす
Face to Face ● 加藤 勝也
『画像診断』40周年に寄せて
時時の初心忘るべからず ● 似鳥 俊明
画像診断と病理
腎芽腫 ● 三谷 英範,福本 航ほか
ここが知りたい!
画像診断2019年9月号特集
「血管壁を意識した脳血管障害の画像診断」
● 渡邊 祐司,櫻井 圭太
Picked-up Knowledge from Foreign Journals
肺線維症 ● 小野 修一
CASE OF THE MONTH
Case of February ● 瀬川 景子,上谷 雅孝
The Key to Case of December ● 佐藤 友美,高瀬 圭
General Radiology診断演習
私はこれを知っていますか? ● 黒川 遼,張 申逸
Refresher Course
嚢胞性肺疾患のCT診断 ● 鈴木 一廣,瀬山 邦明