【特集】
序説 ●吉浦 敬
WHO分類が2016年に改訂され,形態学に基礎を置く古典的組織分類から,分子遺伝学的な分類へと大きく舵が切られた.改訂後数年が経過したが,その間に,この新しい分類に従って診断された腫瘍の画像データが蓄積するとともに,画像所見に関する知見も蓄積され,分子遺伝学的情報と画像の対応づけが,少しずつ明らかにされてきた.
本特集では,WHO2016分類に対応した新たな画像所見を反映させつつ,様々な脳腫瘍のMRI,CTを中心とした画像所見をある程度広く網羅した,神経領域を専門としない放射線科医や若手放射線科医にとっても実用的な特集となることを目標とした.
本誌『画像診断』では,2016年11月に「脳腫瘍WHO2016」と題して,WHO2016分類の主な改訂点や関連する遺伝子異常の基礎知識まで含めた有意義な特集が組まれた.これを踏まえ,今回は,前回の特集でカバーされなかった一部の腫瘍も含め,より具体的な画像所見にフォーカスした内容にできれば,と考えた.誌面の都合上,残念ながらすべての脳腫瘍を網羅することはできなかったが,最終的に8つの領域に分けてご執筆いただくことになった.すなわち,分子遺伝学的情報が診断に大きく取り入れられた,びまん性星細胞系・乏突起膠細胞系腫瘍を栂尾理先生に,その他の多種にわたる神経膠腫や神経細胞系腫瘍を東美菜子先生に,遺伝子分類が追加された髄芽腫を中心とした胎児性腫瘍を森谷聡男先生に,上衣腫や脳室内腫瘍を増本智彦先生に,松果体部腫瘍・胚細胞腫瘍を田中史根先生に,悪性リンパ腫や組織球症を上谷浩之先生に,頻度が高く組織亜型も多い髄膜腫瘍や孤立性線維性腫瘍/血管外皮腫,その他の間葉系腫瘍を井手口怜子先生に,そして下垂体とその周囲の腫瘍を中條正典先生にご担当いただいた.執筆者の先生方には,特に以下の点にご留意いただくよう,お願いした.
●特にWHO2016分類で変更のあった腫瘍や新たに定義された腫瘍については,できるだけ画像を掲載する.
●前回の特集でやや手薄だった部分は十分解説する.
●WHO2016分類で変更のなかった腫瘍についても,できるだけ最新の情報を取り入れ,アップデートする.
●拡散強調像はもちろん,灌流画像や磁化率強調像などもすでに一般的に利用されているので,診断に重要な場合は積極的に取り入れる.
●予後などの臨床的事項も,できるだけWHO 2016分類での定義を意識した記述になるように注意する.
WHO分類改訂後,数年経ったとはいえ,まだ過渡期の面もあり,執筆にご苦労されたと思うが,いただいた原稿はいずれも大変内容の濃いものとなった.ご多忙の中,貴重な時間を割いて執筆していただいた先生方には,改めて深く感謝申し上げたい.
本特集が,多くの方のお役に立つことを祈念する.
序説 ● 吉浦 敬
びまん性星細胞系・乏突起膠細胞系腫瘍 ● 栂尾 理,樋渡 昭雄ほか
その他の神経細胞・膠細胞系腫瘍 ● 東 美菜子,平井 俊範
胎児性腫瘍 ● 森谷 聡男,中山 真理子ほか
上衣系腫瘍,脈絡叢腫瘍,その他の脳室内腫瘍 ● 増本 智彦
松果体部腫瘍,胚細胞腫瘍 ● 田中 史根,前田 正幸ほか
悪性リンパ腫,組織球症 ● 上谷 浩之,北島 美香ほか
髄膜腫,間葉系腫瘍 ● 井手口 怜子,森川 実ほか
下垂体とその周囲の腫瘍 ● 中條 正典,上村 清央ほか
【連載】
すとらびすむす
JRS 2020 ● 青木 茂樹
『画像診断』40周年に寄せて
光陰矢のごとし ● 大友 邦
画像診断と病理
肝血管筋脂肪腫 ● 赤木 元紀,中村 優子ほか
ここが知りたい!
画像診断2019年8月号特集「全身性疾患に対するエキスパート達の千思万考」
● 木口 貴雄,服部 真也ほか
Picked-up Knowledge from Foreign Journals
血管周囲の脂肪 ● 中原 健裕,奥田 茂男ほか
CASE OF THE MONTH
Case of January ● 石山 彩乃,上谷 雅孝
The Key to Case of November ● 秋元 達也,高瀬 圭
General Radiology診断演習
八百万の○○○○ ● 井上 明星
画像診断 再入門
認知症が疑われる患者の画像診断 ● 與儀 彰