【特集】
序説 ●西本優子
日本の放射線科医は,とにかく忙しい.画像管理加算を達成しつつ,ワークライフバランスを大事にするためには,沢山の所見を効率良くこなさないといけない.ついつい,1回前の検査と比較して「変化なし」と書いて終了することも多いと思う.大多数の症例はそれで差し支えない(はず)だが,時に次回の画像検査に,「うわっ!!」と心の中で絶叫し,もっと複数回の過去画像と比較しておけばよかったと反省する….本特集を手にとってくださった多くの先生には,そんなご経験がおありではないだろうか.
呼吸器領域に限らず,どの領域であっても,異常所見の拾い上げや鑑別診断の絞り込みには,過去画像を振り返り,経時的変化を確認することが有用である.
特に胸部領域では,使用できるモダリティが少なく,画像所見も非特異的な所見の組み合わせが多いため,複数回の胸部単純X線写真とCTから,経時的変化や進行速度を確認することで確定診断に近づいたり,治療方針決定に役立ったり,今後の経過で注意しておくべきことを予測できたりするようになってくる(もちろん,画像所見だけでなく,症状や病理所見を含めた各種検査などの臨床情報を押さえることも重要であり,臨床医との日常的なコミュニケーションやディスカッションが大切であることはいうまでもない).
ただ,こうした臨床経験は,数週間〜数か月程度で結果が判明する症例では比較的容易だが,数年〜十数年の経過を経て診断確定に至るような慢性疾患については,限られた施設でしか経験できない現状にあると思われる.
そこで,今回は画像経過に焦点を当てて,第一線でご活躍のエキスパートの先生と,次代の胸部画像診断を担う新進気鋭の若手の先生にご執筆いただいた.肺感染症は大分県立病院の岡田文人先生,職業性疾患は川崎医科大学総合医療センターの加藤勝也先生にご担当いただいた.達人がどの所見に着目し,どのように画像経過を考えるか,カンファレンスで解説を聞いているような臨場感に溢れる論文となっている.腫瘍性疾患は香川大学の石村茉莉子先生,気道病変,嚢胞性疾患は聖マリアンナ医科大学の松下彰一郎先生,肉芽腫性疾患,腫瘍性・腫瘍類似疾患は滋賀医科大学の大谷秀司先生にお願いした.いずれも沢山の症例をご提示いただき,大変読み応えのある論文となっている.筆者も,天理よろづ相談所病院において経験した間質性肺炎の症例を解説させていただいた.
手軽な読み物として読めて,なおかつ,明日からの診療に役立つ知識が得られる,お得な1冊になったと自負している.本特集を読んで,胸部画像診断に少しでも興味を持っていただけたら,大変嬉しく思う.
最後に,ご多忙の中,快くご執筆いただいた諸先生に,心よりお礼申し上げたい.
序説 ● 西本 優子
腫瘍性疾患 ● 石村 茉莉子,室田 真希子ほか
肺感染症 ● 岡田 文人,佐藤 晴佳ほか
職業性疾患 ● 加藤 勝也
気道病変,嚢胞性疾患 ● 松下 彰一郎,八木橋 国博ほか
間質性肺炎 ● 西本 優子,野間 惠之ほか
肉芽腫性疾患,腫瘍性・腫瘍類似疾患 ● 大谷 秀司
【連載】
すとらびすむす
ドラクエの思い出 ● 五島 聡
画像診断と病理
副腎神経節細胞腫 ● 吉田 耕太郎,蒲田 敏文ほか
ここが知りたい!
画像診断2019年6月号特集
「産科領域のCT,MRI update」 ● 坪山 尚寛,倉田 靖桐
画像診断再入門
単純X線写真におけるラインの位置確認の基本 ● 舩越 拓
Picked-up Knowledge from Foreign Journals
脊椎MRI ● 青木 隆敏
CASE OF THE MONTH
Case of November ● 秋元 達也,高瀬 圭
The Key to Case of September ● 佐藤 志帆,高瀬 圭
General Radiology診断演習
全身を駆け巡る ● 井上 明星
他科のエキスパートにお尋ねします-ここを教えていただけますか?
肝臓編 ● 山下 竜也,小林 聡
Refresher Course
胃X線検査によるHelicobacter pylori菌感染を意識した背景粘膜診断● 伊藤 高広,吉川 公彦