【特集】
序説 ●上谷雅孝
本特集では,日常診療でしばしば認められるスポーツ外傷・障害の画像診断について,代表的な症例を示し,損傷のメカニズムと臨床所見,画像診断の要点,治療方針との関連などについて,第一線で活躍する先生方に最近の知見も含めてまとめていただいた.
スポーツ外傷・障害の診断には,それに関連したスポーツやトレーニングの種類と期間,急性外傷の有無と外傷機転,症状,身体所見が重要であり,これらの情報だけで診断が行われることも少なくない.MRIやCTを含めた画像診断は,これらの診断をさらに早期に確実に行うことを可能にするだけでなく,治療効果の判定あるいは治療効果が十分得られない症例における原因の精査として行われる.特に第一線で活躍するスポーツ選手にとってはなるべく早く競技に復帰する必要があり,損傷の有無だけでなく,その程度を明確にし,診断方針を早急に決定する必要がある.また,損傷を目にみえる形で選手本人に提示することは,治療や安静の必要性と方法をわかりやすく説明するためにも有用性が高い.このような背景を考えると,画像診断の役割と責任はきわめて大きいことがわかる.
スポーツ外傷・障害の画像診断において,私が心がけていることをここで述べておきたい.
1)スポーツ外傷を扱う整形外科医とのコミュニケーションを緊密にとること:定期的なカンファランスも重要であるが,それぞれの症例における問題点,画像診断で求められていることを十分に把握し,画像診断のモダリティや撮像法の選択を行い,その結果を的確に伝える必要がある.画像診断のすべての領域に共通することであるが,画像診断を求める側と伝える側の両者の信頼関係が重要である.
2)逆に依頼医の診断に引きずられすぎないこと:症状や身体所見に基づく診断は重要であるが,それにこだわると視野を狭くしてしまい,重要な所見を見逃すことがある.
3)軽度にみえる損傷であっても,スポーツを行う上では大きな障害となりうる:普段はあまり問題にされないような軽微な所見であっても,スポーツ選手にとっては有意な所見となりうる.このような所見を見逃さないためには障害の状態を十分把握しておくことが重要である.
スポーツ外傷・障害の診断・治療に関する知見は日々進歩しており,画像診断もそれに追従して変化していかなければならない.専門的な知識と経験が必要であるが,知識を深めるほどに,画像診断の役割を実感することができるやりがいのある仕事でもある.本特集がその面白さを味わってもらう一歩になってもらえば幸いである.
最後に,お忙しい中,ご執筆の労をいただいた先生方に心から感謝いたします.
序説 ● 上谷 雅孝
疲労骨折 ● 近藤 みほこ,河野 奈緒子ほか
筋損傷 ● 林田 佳子,上谷 雅孝
肩関節 ● 野崎 太希,田崎 篤
肘関節 ● 武井 洋平,小川 健ほか
手関節 ● 青木 隆敏,寺澤 岳ほか
股関節 ● 川原 康弘,上谷 雅孝
膝関節 ● 大木 望,上谷 雅孝
足関節 ● 小橋 由紋子,矢ヶ部 浩之ほか
大腿骨寛骨臼インピンジメントの診断と治療 ● 内田 宗志,中島 裕貴
【連載】
すとらびすむす
森林限界を越えて ● 原留 弘樹
画像診断と病理
子宮平滑筋肉腫 ● 櫻井 悠介,岩野 信吾ほか
ここが知りたい!
画像診断2018年12月号特集
「ちょっと悩む画像検査のプロトコール」 ● 隈丸 加奈子,相田 典子
画像診断 再入門
肝細胞癌の画像診断 再入門 ● 祖父江 慶太郎,上嶋 英介ほか
Picked-up Knowledge from Foreign Journals
骨軟部−MRIの新たな評価法 ● 青木 隆敏
他科のエキスパートにお尋ねします-ここを教えていただけますか?
胸部編 ● 上田 和弘,田中 伸幸
CASE OF THE MONTH
Case of May ● 浦瀬 靖代
The Key to Case of March ● 下山 真介
General Radiology診断演習
招かれざる客 ● 井上 明星
Refresher Course
がん診療に役立つ画像診断
頭頸部病変による脳神経症状別アプローチ−前編− ● 檜山 貴志