【特集】
序説 ●楠本昌彦
物事を完璧に理解できることは素晴らしい.しかし,すべてのことがすんなりと完璧に理解できるかといえば,そうではない場合もある.特に対象物が複雑でかつ曖昧なものが多い場合,細かい理解はもちろん,本筋となる事柄の理解も難しい場合がある.ましてや類似の事柄との区別識別は困難を極める.
肺に淡い陰影が広がっていたらどう診断するか?ここでいう淡い陰影とは,“もわっとした”,あるいは“ふわっとした白っぽい影”が,肺にみられる状態を指す.多少濃くても,淡くても構わない.均一であっても,不均一であっても構わない.淡い陰影には,すりガラス影が含まれるが,必ずしもすりガラス影には限定しない.白っぽい影が大きく広がっていても,小さな淡い影がたくさんみられる場合も含まれる.言葉で表現することが難しい陰影もある.
このような陰影をみた時,放っておいていいのか,抗菌薬や抗生剤を投与するのがいいのか,ステロイドを投与すべきなのか,水を抜くのか,そんな道しるべを画像に求められることがある.その上で,この病態が治療に反応して元通りになることが期待できるのか,治療しても傷跡のようなものを残して安定した状態になることが予想されるのか,あるいは有効な治療が見込めず,もうどうしようもないのか示すことができれば,患者のマネージメントに役立つ.
淡い陰影の中には,すりガラス影が含まれるが,必ずしもすりガラス影には限定はしていない.すりガラス影の定義,成り立ち,代表的疾患については,冒頭の論文「すりガラス影の成り立ち」で解説いただいた.まず,これを理解するのが基本である.
各論では,間質性肺炎,急性感染症,アレルギー性肺疾患,循環障害,薬剤性肺障害,その他の病態に分類した.それぞれの病態からみた画像上の診断の重要な点,着目点について詳述いただいた.その上で,放射線診断医が知っておくべき臨床情報,患者の病態や症状,既往や環境などについても記載いただいた.これらを知っておくことで,依頼医から情報が得られない場合は,逆に放射線診断医側から問い合わせることもできる.さらに,診断上の鍵となる血液検査などの臨床検査情報についても記述いただき,病態の理解と診断への道筋とできるようにした.各病態間で重複して記載されている疾患もあるが,あえて病態からみた疾患の理解を深めることができるように,重複をも大切にしている.
最後に,その他の病態のところに,吸気不足のCT画像についても解説いただいた.吸気不足の画像を間質性肺炎などの病気と診断してはいけない.ビギナーが時に陥りやすい誤りのひとつであるが,病気でないのに診断医が病気を作ってはいけない.
「肺に淡い陰影が広がっていたらどう診断するか?」という点について,ビギナーや肺病変があまり得意ではない診断医にできる限り大筋で病態を理解してもらい,より深い理解につながっていくことを願っている.
序説 ● 楠本 昌彦
すりガラス影の成り立ち ● 島本 綾,芦澤 和人
間質性肺炎から考えてみよう ● 冨永 循哉,佐藤 嘉尚
急性感染症を考えなければならない所見 ● 國弘 佳枝,田中 伸幸
アレルギー性肺疾患を疑うとき ● 松本 晋作,杉浦 弘明ほか
循環障害を考えてみるとき ● 神谷 武志,藪内 英剛ほか
薬剤性肺障害を疑うとき ● 遠藤 正浩,朝倉 弘郁
その他の病態を考えるとき ● 江頭 玲子,中園 貴彦ほか
【連載】
すとらびすむす
AI,放射線診断の救世主あるいは征服者 ● 栗山 啓子
画像診断と病理
縦隔奇形腫 ● 中根 俊樹,岩野 信吾ほか
ここが知りたい!
画像診断2018年11月号特集
「Precision Medicine時代の肺癌の画像診断」 ● 石﨑 海子,藪内 英剛
画像診断 再入門
第1 回 救急外来で見落としやすい骨折の画像診断−小児から高齢者まで−
● 宇田川 和彦
Picked-up Knowledge from Foreign Journals
子宮頸癌 ● 高濱 潤子,吉川 公彦
CASE OF THE MONTH
Case of April ● 神田 知紀
The Key to Case of February ● 田中 宇多留
General Radiology診断演習
Where are you from? ● 黒川 遼,中井 雄大
他科のエキスパートにお尋ねします-ここを教えていただけますか?
膵臓編 ● 花田 敬士,蒲田 敏文
Refresher Course
膵充実性腫瘍のCTおよびMRI ● 福倉 良彦,熊谷 雄一ほか
「画像診断」各賞受賞者発表 第24回 MVP賞,第15回 BIE賞
CASE OF THE MONTH 2018年成績優秀者発表