【特集】
序説 ●坂井修二
11月号の特集テーマとして,“Precision Medicine時代の肺癌の画像診断”を企画させていただいた.
悪性腫瘍の治療は,乳癌のHER2陽性症例にトラスツズマブ(ハーセプチン®)が,続いて,肺癌のepidermal growth factor receptor(EGFR)遺伝子変異がみられる症例にゲフィチニブ(イレッサ®)が有効であることが証明されて以来,腫瘍の分子病理学的な分類と個別化治療が急速に進んでいる.また,血管新生阻害薬も多くの腫瘍の治療に取り入れられた.さらには,programmed cell death 1(PD-1)やprogrammed death ligand- 1(PD-L1)経路による,免疫チェックポイント阻害薬を用いた腫瘍免疫療法が,現在では初回治療に選択されつつある.
一方で,肺癌にゲフィチニブ(イレッサ®)投与を行った患者さんで,致命的な薬剤性障害が発生したことを発端に,分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬治療中患者で,それまでに経験したことのないような薬剤性肺障害のパターンの報告例も増え,画像診断医の役割が増している.そして,肺癌を初回治療,2次治療と進めて行く上で,Response Evaluation Criteria in Solid Tumors(RECIST)で治療効果を判定するのは基本であるが,より早期に次の治療法に転換するための治療効果の指標が求められているのが現状である.
最後に,肺癌の個別化治療を実践する上で,画像診断医としてinterventional radiology (IVR)が,肺癌患者のどのような合併症に有効であるか知っておくことも大変重要であり,診断レポートにコメントすることで,多くの患者さんに希望を与えることができると思われる.そして,肺癌患者さんにprecision medicineを実行する上で,将来的にartificial intelligence(AI)をどのように活用していくか考える機会になればと考えた.例えば,電子カルテの検査結果の分析や,家族歴や生活歴などを総合的に判断するとかである.
今回の企画では,上記のような分野にて第一線でご活躍の先生方に執筆をお願いした.各々の原稿をお読みいただき,画像診断医が肺癌のprecision medicine時代に何を知り,何を行うべきか理解していただければ幸いである.
序説 ● 坂井 修二
画像診断医が知っておくべき肺癌診断の新しい流れ ● 大林 千穂
非小細胞肺癌におけるPrecision Medicine ● 吉村 彰紘,山田 忠明ほか
Precision Medicineのための肺癌画像診断の基本 ● 石﨑 海子,坂井 修二
肺癌の遺伝子変異と画像診断 ● 遠藤 正浩,朝倉 弘郁ほか
薬剤性肺障害の画像診断 −免疫チェックポイント阻害薬を中心に− ● 負門 克典
肺癌薬剤療法後の効果判定 ● 藪内 英剛,神谷 武志ほか
肺癌診療に活用可能なInterventional Radiology(IVR) ● 荒井 保明,曽根 美雪ほか
Artificial Intelligence(AI)の胸部画像診断への応用と将来への展望 ● 木戸 尚治
【連載】
すとらびすむす
医学の華 ● 楠本 昌彦
画像診断と病理
乳頭状髄膜腫 ● 小山 貴生,小池 将隆ほか
ここが知りたい!
画像診断2018年6月号特集
「関節リウマチの画像診断」
● 田中 伸幸,渡邊 史郎
CASE OF THE MONTH
Case of November ● 成清 紘司,伊東 克能
The Key to Case of September ● 伊原 研一郎,伊東 克能
Picked-up Knowledge from Foreign Journals
骨形態解析 ● 青木 隆敏
他科のエキスパートにお尋ねします-ここを教えていただけますか?
肝臓編 ● 山下 竜也,小林 聡
Refresher Course
末梢神経の画像診断─MR neurographyを中心に─ ● 横田 元,向井 宏樹