【特集】
序説 ●藤本 肇
今回は,“脊椎の画像診断再入門”と題して,骨軟部あるいは神経放射線を専門とする執筆陣により,この分野以外を専門とする放射線診断医を主な対象とした特集を企画した.
脊椎疾患は,MRIが広く普及しているわが国においては,日常診療で遭遇する機会の最も多い領域のひとつといっても過言ではない.その画像診断については,これまで様々な専門誌の特集で取り上げられ,また,大著とされる教科書の類も多数刊行されている.しかし,骨軟部あるいは神経放射線領域を専門としない診断医にとっては必ずしも容易なものではなく,ルーチン検査として惰性で日々の読影をこなしていることも多々あるのではないかと思う.
そこで,脊椎疾患の画像診断の基本的事項からちょっと進んだ内容までを総合的に俯瞰してみた.
最初に,脊椎の正常構造と正常変異について解説する.部位を問わず,解剖学的な正常構造についての基本的事項を理解することは,画像診断の第一歩である.また,脊椎には様々な正常変異や破格がみられる.例えば腰仙移行椎は頻度の高いもので,病変のレベルを記載する際に問題となることが多く,コミュニケーションエラーの要因ともなりえる.このような症例における脊椎のレベルの正しい同定と記載法について,特に重点を置いて説明してある.
次に各論として,脊椎の変性疾患,外傷,感染症,炎症,および腫瘍について,画像診断の要点を簡潔にまとめた.特に,変性疾患については頻繁に使用されるいくつかの基本的用語について解説することに重きを置いた.マルチスライスCTの普及により,放射線診断医が特に救急の現場で脊椎外傷の読影をする機会が増えている.また,高齢化社会において脆弱性骨折も増加している.これらについて基本的事項を解説した.脊椎の感染症は一般細菌による化膿性脊椎椎間板炎と抗酸菌による結核性脊椎椎間板炎に大別されるが,これらの所見の差異について特に重点を置いて解説した.また,脊椎関節炎やSAPHO症候群に代表される非感染性の炎症性疾患も臨床的に重要で,これらについて画像診断の要点を述べた.腫瘍については,特に遭遇する頻度が高く臨床的に重要な転移性腫瘍を中心に記載した.これらのcommon diseaseについての基本的知識をいつも整理しておくことは,画像診断に携わる者にとって必須事項といえるであろう.
最後に,脊椎病変として現れる全身性疾患のうち,特に重要なものについて解説を加えた.時として,脊椎病変の陰に思わぬ疾患が隠れていることがある.そのような疾患を診断し,その後の患者マネジメントの上での適切な指針を与えるのは,放射線診断医にとって重要な任務である.
執筆陣は,新進気鋭の若手からその道の重鎮といわれるベテランまで,バラエティに富んだ構成である.様々な注文に応えていただいた結果,どれもユニークな力作ぞろいとなった.執筆された先生方に感謝するとともに,この特集が読者諸氏の明日からの日常臨床に役立つことを期待している.
序説 ● 藤本 肇
脊椎の正常画像解剖 ● 福庭 栄治
脊椎の正常変異と破格 ● 鈴木 智大,江原 茂
脊椎の変性疾患 ● 米永 健徳,藤井 百合子ほか
脊椎・脊髄の外傷 ● 中塚 智也,稲岡 努ほか
脊椎の感染症 ● 神島 保
脊椎の炎症性疾患 ● 藤井 裕之,福田 友紀子ほか
脊椎の骨腫瘍 ● 寺村 易予,植野 映子ほか
脊椎病変として現れる全身性疾患 ● 森 墾
【連載】
すとらびすむす
決断力?! ● 望月 輝一
画像診断と病理
膵退形成癌 ● 野田 佳史,五島 聡ほか
ここが知りたい!
画像診断2017年4月号特集
「膵疾患の画像診断Update─診療ガイドラインを踏まえて─」
● 棚橋 裕吉,井上 大ほか
Picked-up Knowledge from Foreign Journals
EOB造影MRI ● 岡田 吉隆
CASE OF THE MONTH
Case of September ● 松永 敬二,井上 優介
The Key to Case of July ● 原 敏将,井上 優介
General Radiology診断演習
第1 回 非特異的な所見も,組み合わせれば特異的になる ● 木口 貴雄
他科のエキスパートにお尋ねします-ここを教えていただけますか?
膵臓編 ● 田島 秀浩,蒲田 敏文
Refresher Course
胸部単純X線写真側面像の基本的な読み方 ● 松下 彰一郎,浅田 達徳ほか