【特集】
序説 ● 豊田圭子
頭頸部領域では,画像にて腫瘤をみた場合に通常は新生物すなわち癌(主に扁平上皮癌)であり,その進展範囲を診断していくのが一般的な道筋かと思われる.悪性腫瘍が病理にて証明されれば,視・触診とともに病期診断が決定され,治療としては放射線療法や化学療法が控えている.しかし,頭頸部病変が治療まで進む前に,画像で腫瘍か腫瘍でないかを診断するのは難しい場合がある.また,腫瘤性病変として依頼医(ここでは主に耳鼻科医,眼科医,口腔外科医)が視診上あるいは病理上で癌と同定しえない場合や,癌に非典型的な視診所見がある際に,画像診断医は意見を求められる.一方,急性の頭頸部炎症である場合は緊急の治療が必要となってくるので,迅速な画像診断が求められる.
画像診断医としては,頭頸部病変で腫瘍か炎症かで迷う症例は意外と多いのではないか思う.臨床所見を加味すればかなり診断に迫れるかとは思うが,依頼医にとっては治療を決定する上で重要な分かれ道になるので画像所見は重要である.多施設での頭頸部画像カンファレンスで情報交換していても,診断に苦渋した炎症症例が挙がってくる.何年も画像診断医をしていても解決されないという忸怩たる思いがある.しかし,頭頸部炎症性疾患での画像診断だが,やはり成書での解説は多くない.
そのように悩んでいるうちに,ちょうど頭頸部画像診断の企画の依頼をいただき,過去のいくつかの企画をみさせていただいたところ,2015年12月号で倉敷中央病院 小山 貴先生の「Tumor or not tumor? That is the question」に当たった.引き続き,2016年1月号は,徳島文理大学/徳島大学 松崎健司先生の「骨盤部感染症の画像診断」の特集であった.まさに,頭頸部領域に絞り特集したいもの,と考え及んだ.
今回の号は,頭頸部の炎症性疾患の画像診断を,腫瘍性疾患との鑑別・対比を重点にして特集した.頭頸部と一口にいってもそれぞれの領域で炎症性疾患の顔は異なる.
執筆は,若手から新進気鋭・中堅の頭頸部画像診断を専門とされ,頭頸部が大好きという経験豊富な画像診断医の先生方にお願いした.実践的な日常臨床に直結する内容で,形式はcase based review の項が多く,各炎症性症例の最後に悪性腫瘍の画像を対比していただいたが,総説としてオーソドックスな形式で解説をしていただいた項もある.いずれも画像診断の臨場感を出していただこうとお願いした.お忙しい合間を縫って執筆された先生方に深謝いたします.いただいた内容はどれも素晴らしく,臨床の現場で大変に役に立つと確信している.
読者の先生方には,通しで読んでいただき,頭頸部炎症性病変を画像から考えていただければ幸甚である.
上咽頭 ● 神田知紀,中井雄大ほか
口腔・中咽頭 ● 藤田晃史
下咽頭・喉頭 ● 齋藤尚子
耳下腺・顎下腺 ● 小久江良太,海野真記ほか
外耳・中耳 ● 中井雄大,神田知紀ほか
副鼻腔 ● 加藤博基,水田啓介ほか
リンパ節 ● 北村弘樹
眼窩領域 ● 大原有紗
【連載】
すとらびすむす
現代に通じる故事成語 ● 中本裕士
画像診断と病理
海綿状血管腫(一部硬化型) ● 清水辰哉,本杉宇太郎ほか
ここが知りたい!
画像診断2016年9月号特集
「非腫瘍性消化管疾患の画像診断
─beyond barium study and endoscopy─」● 北詰良雄
Picked-up Knowledge from Foreign Journals
肺癌の画像診断 ● 小野修一
CASE OF THE MONTH
Case of February ● 水谷陽一,長町茂樹ほか
The Key to Case of December ● 仰木健太,村田和子ほか
救急CT診断演習
第6回 塞栓症? ● 木口貴雄
Refresher Course
全身拡散強調画像(DWIBS法)
─読影のポイントと基本的な臨床応用─ ● 高原太郎,有田祐起ほか