【特集】
序説 ● 近藤浩史
「院内遠隔読影」ある高名な放射線科医から聞いた言葉である.多くの施設では画像診断医が少ないにもかかわらず毎日多くの読影レポートを記載しなければならない.画像診断管理加算を維持するために,1件の読影に割ける時間も限られている.本来であれば,検査室で患者の病状を把握し,検査目的を依頼情報から読み取りながら撮影条件を診療放射線技師と協議し,検査を行うべきであるが,そうもいっていられないという現状を嘆いて,「可能なかぎり検査室に足を運ぶ,検査室で読影するという環境整備をして,質の高い検査を行うべきである」と言っておられた.まさにその通りであり,急性腹症の画像診断を行う上では非常に重要なことと感銘を受けた.
一般的に,急性腹症は急激な腹痛を主訴とし,緊急手術や緊急処置などの迅速な初期対応が求められる疾患群であり,その原因は多岐にわたる.急性腹症に用いられる画像診断には,単純X線検査,超音波検査,CT,MRIなどがあり,それぞれの疾患に対する有用性,限界を熟知した上で,適切な検査法を選択し,正しく画像を解釈する必要がある.
今回の企画では,まず急性腹症ガイドライン2015の作成委員のお2人に,救急医と放射線科医の立場から,画像診断の役割と画像検査の選択について解説いただいた.救急医の先生には,救急の現場で急性腹症をどのように診断し対処しているかを詳細に解説していただいた.急性腹症で最も大切なことは,手術やIVRなどなんらかの介入が必要な病態か否かの判断である.そのための診療アルゴリズムを提示し,画像診断の必要性を解説いただいている.普段,救急の現場に居合わせない放射線科医にとって有用な情報がわかりやすく解説されている.また,放射線科医の立場からは,時間的に余裕がないことが多い救急の現場での適切な画像検査の選択について,詳細に解説いただいた.
その後,急性腹症の中から,肝胆膵脾,消化管,泌尿器・男性骨盤領域,女性骨盤領域,血管系の画像診断を取り上げて,エキスパートの5人の先生に詳しく解説いただいた.まず,肝胆膵脾については,common diseaseから比較的稀な疾患まで多くの疾患と,造影CTの有用性に関しても言及していただいた.消化管については,MDCTを中心とした,閉塞性腸疾患や他の急性腹症になりうる炎症性腸疾患に関する詳細な診断を解説していただいた.泌尿器・男性骨盤領域の代表的疾患に関して典型画像を提示し解説していただいた.女性骨盤領域では急性腹症の検査として施行されるCTおよびMRIにおいて,その特徴を,出血(異所性妊娠,卵巣出血),虚血梗塞(各種の捻転疾患,赤色変性),感染症に大別して臨床上の要点とともに解説いただいた.血管系の救急疾患では,内臓動脈由来の代表的疾患を取り上げ,診断のみならず治療適応や治療方法に関して解説いただいた.
執筆いただいた先生方のご尽力のお陰で,本特集が急性腹症の最新の画像診断を学ぶ最高の書となったことに深く感謝申し上げ,多くの読者の日常臨床の一助となることを祈っている.
救急医からみた急性腹症における画像診断の役割 ● 真弓俊彦,新里 到ほか
急性腹症における画像検査の選択 ● 古川 顕,白川崇子ほか
肝胆膵脾 ● 子安裕美,五島 聡ほか
消化管 ● 本郷哲央,松本俊郎ほか
泌尿器・男性骨盤領域 ● 山田謙太郎,新本 弘ほか
女性骨盤領域 ● 又吉 隆,吉長正富ほか
血管系 ● 下平政史,中川基生ほか
【連載】
すとらびすむす
矢状断はなぜ左向きか ● 百島祐貴
画像診断と病理
混合型肝癌 ● 山口晴臣,佐野勝廣ほか
ここが知りたい!
画像診断2016年7月号特集
「膠原病と類縁疾患の肺病変」
● 酒井文和
Picked-up Knowledge from Foreign Journals
MR neurography ● 森 墾
CASE OF THE MONTH
Case of December ● 仰木健太,村田和子ほか
The Key to Case of October ● 岩佐 瞳,村田和子ほか
救急CT診断演習
第4 回 切るべきか,切らざるべきか ● 木口貴雄
Refresher Course
今日からはじめる心臓MRI ● 城戸倫之