【特集】
序説 ● 松島理士
今回は「薬剤と画像−画像所見から薬剤による変化を想起する−」をテーマに取り上げさせていただいた.日常診療において,薬剤による治療は,治療の大きな主軸のひとつであることはいうまでもないが,以前から存在する有効な薬剤に加えて,新たな薬剤の開発がさらにいっそう進められ,日常診療に生かされている.
これらの薬剤による生体内の変化は,我々が読影する画像にも反映されることがあり,治療効果はもちろんのこと,薬剤に起因する偽病変や病変も描出されうるため,薬剤による画像所見の熟知が画像診断医にも求められていると感じている.
しかしながら,画像からある程度特異的な診断ができる薬剤性病変も存在する一方,薬剤の特定どころか他の疾患との鑑別が難しい病変も多数存在しており,日常診療において,画像診断を行う上で難しい内容のひとつと感じている.画像から薬剤性病変の可能性を言及できたら,薬剤継続・変更・中止といった治療方針に多大な貢献ができ,このためにも薬剤による画像変化について,常日頃,ぜひいろいろ知りたいと感じていた.ところが,様々な部位を網羅した薬剤と画像を主題とする特集はなかなか存在せず,一画像診断医の希望として「こんな特集があったら良いなあ」という思いから,編集の運びとなった.
各項目として,中枢神経,胸部,腹部,女性生殖器,骨軟部・小児,核医学といった広い分野を同一テーマで網羅し,一般的な薬剤から話題の新薬まで含め,様々な薬剤による画像所見や病変を解説していただいた.各分野の先生方の論文を拝読させていただき,私自身も日進月歩の薬剤の進歩を再度実感するとともに,これに随伴した画像に関する知識の整理とupdateをさせていただいた.きっと読者の先生方においても,大変興味深い内容になっていると確信している.
そして最後に,切り口を変えた領域にとらわれない,より実践的な読影法を学べるよう,case-based reviewの項目を設け,松木 充先生のお力を借りて,ベテランの実際の読影が学べるような形とした.
いままであまり取り上げられることが少なかったテーマであるので,執筆していただいた先生方には多大なご負担をお掛けしたと思いますが,最前線でご活躍のハイレベルな画像診断医の先生方のお力を借りることで,斬新かつこれ以上ない,明日からの診療に役立つ特集号が実現でき,ご協力いただいた先生方には感謝の気持ちでいっぱいである.この場を借りて謝辞を述べさせていただきたい.
読者の先生方の日常臨床において「薬剤性かも?」と考えられた際には,ぜひ何度も振り返って本特集号を広げていただき,臨床に直結する画像診断をしていただけると幸いである.
中枢神経領域 ● 松島理士
胸部−薬剤性肺障害− ● 南 康大,杉浦弘明ほか
腹部領域 ● 市場文功
女性生殖器(胎児を含む) ● 亀山恭子,木戸 晶ほか
骨軟部,小児 ● 野崎太希,堀内沙矢ほか
先行投与薬剤と核医学検査 ● 内山眞幸
薬剤の合併症の画像−case-based review−
● 松木 充,浜川岳文ほか
【連載】
すとらびすむす
わかりやすい話 ● 天野康雄
画像診断と病理
後腹膜の脱分化型脂肪肉腫 ● 松田めぐみ,佐野勝廣ほか
ここが知りたい!
画像診断2016年5月号特集
「エキスパートの診断過程を学ぶ中枢神経系の画像診断」
● 森 墾,坂田昭彦
投稿 症例
両側多発肺結節影が急速な増大を示したが,
治療に良好に反応した非免疫不全患者の肺クリプトコックス症の1例
● 藤原清宏,山﨑安寿弥ほか
Picked-up Knowledge from Foreign Journals
子宮腫瘍 ● 藤井進也
CASE OF THE MONTH
Case of October ● 岩佐 瞳,村田和子ほか
The Key to Case of August ● 西森美貴,田所導子ほか
救急CT診断演習
第2回 急いては事を仕損じる ● 木口貴雄
Refresher Course
原発性アルドステロン症―診断から治療まで― ● 小黒草太,栗原 勲ほか