【特集】
序説 ● 陣崎雅弘
症状のある病変や質的診断のはっきりした病態に対するマネジメントは,近年,ガイドラインできちんと規定されるようになっており,カンファレンスで,主治医の先生方とガイドラインに基づき更なる検査法や治療方針を議論するのは,放射線科医の醍醐味である.一方,読影を行っていると,依頼目的とは関係のない偶発的所見をしばしばみかけることがある.その病変による症状はなく,良悪性の判定が困難で,特に依頼医がその病変の専門科の医師ではない場合に,読影レポートにおいて経過観察を指示するのか,専門科に相談することを勧めるのかを悩むことがある.経過観察とする場合は,どのくらいの頻度で画像検査を行うように指導するかも悩みどころである.
このような悩みに答えるべく今回の企画では,偶発的所見のレポートを,各領域のエキスパートはどのように記載しているかを提示した.特に以下の3つの点を盛り込んでの執筆をお願いした.
・偶発的所見の画像上の鑑別のポイント.
・どのような所見であれば,その疾患を担当する科への併診を読影レポートにおいて勧めるか.
・経過観察をする場合の画像での経過観察期間を含めた治療方針.
偶発的所見については,American College of RadiologyのManaging Incidental Findingsに明確なガイドラインが出ている病態もあれば,総説論文の中で触れられている程度のものもあり,そして個人的見解しか書けないようなものもある.各執筆者には,ガイドラインに基づく記載であるのか,複数の論文に基づくのか,個人的見解であるのかを,ある程度明確にしながら記載していただいた.ガイドラインに基づくものは,可能であれば原文のガイドラインも読んでみていただきたい.個人的見解のものは,違う意見もありうることを承知しながら,執筆者がかなりの勇気をもって記載してくれている.今後,このような領域の偶発的所見のマネジメントに興味をもっていただける人が増え,エビデンスの研究が進むことを期待したい.
今回は,脳神経,頸部,胸部,肝胆膵脾,泌尿器,婦人科,骨軟部,血管,全身の領域について主にCT,MRIでの偶発的所見を取り上げた.偶発的所見のマネジメントをどのように報告するかについても,放射線科医の重要な役割であり,本特集はすべての放射線科医に読んでいただきたい.
1 脳神経
1. 髄膜腫 ● 渡邉嘉之
2. 下垂体腺腫 ● 森 墾
3. Rathke嚢胞 ● 森 墾
4. くも膜嚢胞 ● 赤田 渉,山田 惠
5. 脈絡叢嚢胞 ● 赤田 渉,山田 惠
6. low-grade glioma ● 増本智彦
7. 海馬萎縮 ● 德丸阿耶,櫻井圭太ほか
8. 正常圧水頭症の所見がある場合 ● 佐藤志帆,麦倉俊司
9. 脳動脈瘤 ● 藤原広和
2 頸部
1. 非特異的リンパ節腫大 ● 加藤博基,松尾政之ほか
2. 甲状腺腫瘤 ● 齋藤尚子
3 胸部
1. すりガラス影を含む小結節 ● 丸山雄一郎
2. 充実性小結節 ● 負門克典
3. 軽度の間質性陰影 ● 岩澤多恵
4. 気管支壁肥厚 ● 新田哲久,村田喜代史ほか
5. 肺野の索状陰影,不整形陰影 ● 森谷浩史,箱崎元晴
6. 胸腺過形成と胸腺腫 ● 本多 修,秦明典ほか
7. 前縦隔小腫瘤 ● 秦明典,本多 修ほか
8. 心膜嚢胞,気管支原性嚢胞 ● 佐土原順子,藤本公則
4 肝胆膵脾
1. 肝臓の変形 ● 清水辰哉,本杉宇太郎
2. 肝臓のびまん性高吸収域 ● 清水辰哉,本杉宇太郎
3. 胆嚢ポリープ ● 浅山良樹,西江昭弘ほか
4. 膵管内乳頭腫瘍 ● 浅山良樹,西江昭弘ほか
5. 膵小石灰化 ● 浅山良樹,西江昭弘ほか
6. 脾腫瘤 ● 松本俊亮,陣崎雅弘
5 泌尿器
1. 副腎腺腫 ● 小黒草太,陣崎雅弘ほか
2. 嚢胞性小腎腫瘍 ● 秋田大宇,陣崎雅弘
3. 充実性小腎腫瘍 ● 秋田大宇,陣崎雅弘
4. 腎動脈狭窄 ● 田中良一
6 婦人科
1. 卵巣単純嚢胞 ● 木口佳代,木戸晶ほか
2. 子宮内膜肥厚 ● 木口佳代,木戸晶ほか
3. 子宮頸部の嚢胞性病変 ● 麻谷美奈
4. 卵巣出血性嚢胞 vs.チョコレート嚢胞 ● 麻谷美奈
5. 子宮変性筋腫 ● 山田幸美,高畑暁子
6. 骨盤静脈叢の拡張 ● 山田幸美,高畑暁子ほか
7 骨軟部
1. 脊椎血管腫 ● 北村範子,稲岡努ほか
2. 限局性骨髄信号異常 ● 橘川 薫
3. 限局性骨硬化 ● 長田周治,倉田精二ほか
4. 脂肪性腫瘍 ● 松本俊亮,陣崎雅弘
5. 膝の骨端骨化不整 ● 志賀久恵,木下雄介ほか
6. 脊椎癒合 ● 髙尾正一郎,上野淳二
7. 膝蓋骨の分離 ● 勝俣智美,小橋由紋子ほか
8 血管
1. 大動脈拡張 ● 大田英揮
2. 内臓動脈瘤 ● 大田英揮
3. 限局性大動脈解離 ● 塚田実郎,中塚誠之ほか
9 全身
1. 神経鞘腫 ● 小山 貴
2. 神経節神経腫 ● 熊澤高雄,小山 貴
【連載】
すとらびすむす
見逃し症例から学ぶ ● 園村哲郎
画像診断と病理
黄色肉芽腫性胆嚢炎 ● 上原崇弘,佐野勝廣ほか
ここが知りたい!
画像診断2016 年3月号特集
「肺感染症のすべて─臨床,病理,画像を学ぶ─」
● 酒井文和,狩野麻実ほか
Picked-up Knowledge from Foreign Journals
胸部CTの放射線被ばく低減 ● 小野修一
CASE OF THE MONTH
Case of August ● 西森美貴,田所導子ほか
The Key to Case of June ● 奥田花江,小野優子ほか
Refresher Course
拡散MRIのもつ役割─灌流と非ガウス拡散─
● 飯間麻美,片岡正子ほか