肝造影検査Update 2014
【特集】
序説 ● 兼松 雅之
肝は人体最大の実質性臓器であり,病態の進行によりダイナミックな形態やテクスチャの変化を遂げ,さらには様々な腫瘤が発生する.容積が大きく,原発性・転移性または肝細胞性・非肝細胞性の様々な病変が発生し増大しやすい背景もあり,古くから放射線画像診断の格好の対象となってきた.
CTにおいては,わが国を中心に撮像タイミングやヨード負荷に関する造影理論がほぼ確立したが,若手の医師や技師に対し継続して教育する必要がある.X線管球の大容量化が進み,逐次近似法が多くの装置に実装されるに伴い,従来,小児を中心として行われてきた低電圧CT検査がより身近なものとなった.EOB・プリモビスト造影MRIはマルチアーテリアル(多相動脈相)撮像が容易でなく,肝結節の血流動態の詳細な評価に十分活用できていなかったが,ラジアルシーケンスの開発とともに,1回の息止めで,画質を維持しつつ,高い時間分解能をもって血流動態を可視化できるようになりそうである.
一方,硬変肝,非硬変肝,アルコール性肝炎,脂肪肝などに生じる様々な肝細胞性結節,非肝細胞性結節を検出,鑑別する上で,ヨード,Gd,EOBによる造影検査や,phase-shift像や拡散強調像などに代表される他のMRIシーケンスを併用した総合的診断は,今や放射線科医の十八番となりつつあり,腹部画像診断専門医であるか否かにかかわらず診断学を修めたいものである.
肝実質や肝腫瘤の灌流情報を可視化,定量化する試みは以前からCT,MRI,超音波検査により行われてきたが,それぞれの領域で技術革新が生じた今日,実臨床へのインパクトに関しても明らかにしていきたい.本特集が明日からの診療に役立つものとなることを祈念してやまない.
肝造影ダイナミックCTにおける造影理論 ● 野田 佳史,近藤 浩史ほか
低電圧CTによる肝造影検査 ● 中浦 猛
Gd-EOB-DTPA造影MRIによる肝腫瘤診断の基本的考え方 ● 吉満 研吾
造影ダイナミックMRIの進歩 ● 藤永 康成,大彌 歩ほか
肝硬変に生じる肝細胞性腫瘤の造影CT・MRI診断
● 小坂 一斗,小林 聡ほか
非硬変肝に生じる肝細胞性腫瘤 ● 佐野 勝廣,市川 智章
非肝細胞性良性腫瘍および腫瘍類似病変の造影CT・MRI診断
● 山本 亮,玉田 勉ほか
非肝細胞性悪性腫瘍の造影CT・MRI診断 ● 大西 裕満,金 東石ほか
肝におけるCT perfusion ● 岡田 真広,兵頭 朋子ほか
肝造影超音波診断 ● 井上 達夫,前川 清ほか
【連載】
すとらびすむす
Kiss and Cry ● 大西 洋
画像診断と病理
毛様細胞性星細胞腫 ● 原田 雅史,阿部 考志ほか
ここが知りたい!
画像診断2014年1月号特集
「いま,注目の疾患 2014」 ● 大谷 秀司,上野 嘉子
Picked-up Knowledge from Foreign Journals
神経放射線:ferumoxytol ● 森 墾
CASE OF THE MONTH
Case of June ● 西本 優子,吉川 公彦
The Key to Case of April ● 高濱 潤子,吉川 公彦
Refresher Course
すりガラス影を伴う結節(GGN)─歴史的背景から最近の動向まで─
● 新田 哲久,高橋 雅士ほか