序説 ● 青木　茂樹
今回は，「脳のcommon diseaseの画像スペクトラム－よくある疾患は多岐多彩－」というタイトルで，よくある疾患の多彩な面に光を当ててみた．
脳の画像診断もCT，MRIが臨床応用されてから30年ほど経て，日常遭遇するほとんどの疾患の画像所見についてはすでに詳細な報告があり，教科書も多く出版されている．教科書では，稀な疾患まで記載しようとすると，common diseaseの画像スペクトラムの提示が削られがちとなる．だから“教科書的”な画像所見というわけである．そのような環境では，若手や脳を専門としない放射線科医は，稀な疾患の画像は教科書に載っているために，得てして稀な方に診断が偏りがちになる．しかし実際の臨床現場で頻度が高いのは，common diseaseのatypicalな画像で，世界で数十例しかない疾患ではない．
そこで，脳のよくある疾患がどれほど幅広い画像スペクトラムを示しうるかについてまとめて提示することで，経験の少ない若手，あるいは脳画像を読影する機会の少ない放射線科医が，よくある疾患をごく稀な疾患と誤診しないことを目的とした特集を考えた．もちろんベテランにも，そういえばこの疾患はこんな風にもなったのだ！という，リフレッシュとなるはずと考える．
このような意図であるため，今回の特集では，基本的には“神経膠腫”，脳転移，悪性リンパ腫，髄膜腫，下垂体腺腫，神経鞘腫，脳梗塞，脳出血，動脈瘤，多発性硬化症，硬膜下血腫などの日常的な疾患しか出てこない．多少atypicalな“変な”画像が出てくると思うが，疾患は難しくないので，気軽に読んでいただければ幸いである．

特集
神経膠腫 ● 尾﨑　裕，天野　真紀ほか
転移性脳腫瘍 ● 上谷　浩之，平井　俊範
悪性リンパ腫 ● 山﨑　香奈，青木　茂樹ほか
脳実質外腫瘍─髄膜腫，神経鞘腫，下垂体腺腫─ ● 國松　聡，森　墾ほか
脳梗塞，脳出血 ● 菊池　恵一，三木　均
脳動脈瘤，脳動静脈奇形・瘻 ● 野口　智幸，入江　裕之ほか
脱髄，代謝，感染─MS，ALD，PRES，脳膿瘍─ ● 工富　公子
外傷─硬膜下血腫を中心に─ ● 植田　文明

連載
すとらびすむす
Decoding＋Robotics→サイボーグ009？ ● 原田　雅史

画像診断と病理
副腎皮質癌 ● 吉田　理佳，楫　靖ほか

ここが知りたい！
画像診断2011年2月号特集
「この所見をみたら決まり！─稀な疾患も怖くない─」● 岡田　務，外山　芳弘ほか

Picked-up Knowledge from Foreign Journals
CTを用いた肺血栓塞栓症診断 ● 岡田　宗正，松永　尚文

Case of the Month
Case of July ● 山﨑　郁郎，河村　泰孝ほか
The Key to Case of May ● 蒲地　紀之，入江　裕之ほか

Refresher Course　
胸部CT定量評価の意義と限界 ● 岩澤　多恵