この所見をみたら決まり!
稀な疾患も怖くない
序説
福田 国彦 画像検査は,病名診断,病期診断,重症度診断,治療効果判定,合併症診断,経過観察などのために行われる.この中で多くの画像診断医が最も興味を持つのは病名診断であろう.自分で病変を見つけ診断することに刺激を受けるからである.いずれの目的にせよ臨床情報なくして画像診断は成り立たない.したがって,依頼医師の臨床情報を読まずにいきなり読影にとりかかる画像診断医はいない.素早く臨床情報を頭に入れた上で,画像所見の拾い上げ,所見の解析と評価をして,可能性の高い順に鑑別診断を列挙するのが通常の読影プロセスである.さらに,必要に応じて診断に近づくために次に行うべき検査を記載する.
病名診断においては,画像所見のみで最終診断に行き着くことのできる症例,順番をつけて鑑別疾患を列挙できる症例,非特異的な画像所見ながら特徴的な臨床所見から絞り込みが可能な症例,画像所見も臨床所見も非特異的で経過観察が必要な症例などがある.画像が診断の主たる根拠になる症例から,あくまで補助的役割に留まる症例までさまざまである.いずれの場合であっても,先輩たちからは,通常見ない所見に遭遇したら「稀な疾患よりも頻度の高い疾患の非典型例を考えろ」とか,鑑別診断には「悪性リンパ腫と結核を忘れるな」とか言われたものである.これらは,的を射た指摘であり,これからも変わらないであろう.
画像診断医にとってcommon diseaseの画像所見に精通することは必須であるが,稀な疾患であっても,この所見を見たらほぼこの診断で決まり,あるいはかなり鑑別診断を絞り込めるといった疾患について知ることも重要である.今回の企画では,中枢神経,頭頸部,呼吸器,心・大血管,肝・胆・膵・脾,消化管・腹膜・腹腔,泌尿器・生殖器,骨・軟部,全身疾患の9領域について,稀な疾患ながら特徴的な画像所見を呈する症例を選んで執筆いただいた.これらの中には,中枢神経疾患や女性生殖器腫瘍も取り上げられている.画像診断医である読者諸氏が,いざと言う時にその存在価値をアッピールできるよう,知識のアップデートに役立てていただきたい.
●特集目次
中枢神経
頭頸部
呼吸器
心・大血管
肝・胆・膵・脾
消化管・腹膜・腹腔
泌尿器・生殖器
骨・軟部
全身疾患
●連載目次
すとらびすむす
現代の荊棘の道
坂井 修二
画像診断と病理
Atypical teratoid/Rhabdoid tumor(AT/RT)
宮嶋 正之,橋本 直人ほか
ここが知りたい!
画像診断2010年9月号特集
「ちょっとハイレベルの日常遭遇する骨軟部疾患」
佐志 隆士,稲岡 努ほか
Picked-up Knowledge from Foreign Journals
たまたま発見された肺癌
小野 修一
CASE OF THE MONTH
Case of February
大塚 貴輝,入江 裕之ほか
The Key to Case of December
南口 博紀,河合 信行ほか
Refresher Course
子宮肉腫の画像診断
北井 里実