【特集】
序説 ● 石井 一成(近畿大学医学部放射線医学教室放射線診断学部門)
2024年5月,認知症患者が2060年に全国で645万人に上るとの推計が,厚生労働省から発表された.認知症患者は2025年の推定471万人(高齢者の12.9%)から170万人以上増加することになる.認知症の前段階である軽度認知障害(mild cognitive impairment;MCI)は,632万人に達すると見込まれる.超高齢化が進み認知症患者の割合が高まり,予防・治療体制の強化や介護サービスの充実が急務となっている.我々の日常診療においても,以前より認知症患者数の増加に伴い,神経画像を専門としない画像診断医も認知症の画像診断に迫られることが増えてきた.そのため,画像診断2018年8月号(Vol.38 No.9)において「画像診断医のための認知症画像診断」の特集を組ませていただいた.
その後,認知症の最大原因であるAlzheimer病(Alzheimer’s disease;AD)の疾患修飾薬レカネマブが2023年9月,ドナネマブが2024年9月に承認され,2023年12月にレカネマブの保険適用が認められた.これにより,アミロイドPETやアミロイド関連画像異常(amyloid-related imaging abnormalities;ARIA)に関して,これまで認知症診断にほとんどかかわってこなかった画像診断医も,否応なくADをはじめとする認知症の画像診断を避けて通れない状況になりつつある.画像検査を依頼する主治医にとって,MCIや軽症の認知症の診断・鑑別において,画像診断はバイオマーカーとして客観的な指標となり,その依存度は高い.そのため,読影する画像診断医にとっても,信頼性,責任の重要性が増している.
そこで今回は,認知症・MCI画像を読影する画像診断医のビギナーには初歩的なポイントを,エキスパートにはリフレッシュの意味を込めて,日常診療において依頼医から信頼される認知症画像診断レベルに到達できる総説をまとめた特集を組ませてもらった.
本特集は,これだけは知ってほしい認知症の臨床から始まり,形態診断であるMRIで鑑別すべき疾患をとらえ,脳血流SPECTなどによる機能診断を用いて変性性認知症を鑑別し,疾患修飾薬の承認に伴い重要性が増したアミロイドPETおよびARIAの解説,そして最後に,将来その重要性が見込まれるタウPETとその先のPETについて解説していただく構成になっている.是非,本特集を活用され,日常診療における認知症の画像診断に役立てていただけることを期待する.
序説 ● 石井 一成
これだけは知ってほしい認知症の臨床 ● 橋本 衛
MRIでどこまで迫る?(1) 検査の基本と変性性認知症以外の鑑別すべき疾患
● 辰尾 宗一郎,笠井 星良 ほか
MRIでどこまで迫る?(2) 変性性認知症の鑑別 ● 櫻井 圭太,金田 大太
これだけは知ってほしい脳血流SPECT,脳FDG-PET,DATイメージング,MIBG心筋シンチグラフィ
● 乾 好貴,井上 政則
アミロイドPETでどう迫る? ● 小路田 泰之,石井 一成
アミロイド関連画像異常(ARIA)にどう対処する? ● 池辺 洋平,工藤 與亮
タウPETとその先のPET ● 島田 斉
【連載】
すとらびすむす
四度の留学 ● 山田 哲
画像診断と病理
卵黄嚢腫瘍・線維腫の合併 ● 八木 文子,秋田 大宇
ここが知りたい!
画像診断2024年7月号特集「臨床所見から考える婦人科画像診断」 ● 植田 高弘
Case of the Month
Case of December ● 小坂 一斗,小林 聡
THE KEY TO Case of October ● 南 麻紀子,川井 恵一 ほか
読影レポートLesson
核医学編「消化管のFDG集積」 ● 北島 一宏
続General Radiology診断演習
症状と既往歴のつながりを想像する ● 堀内 大右
Picked-up Knowledge from Foreign Journals
放射線分野における大規模言語モデルの現状 ● 橋本 正弘
Refresher Course
脳小血管病の知識を整理する ● 榎園 美香子