【特集】
序説 ● 野崎太希[慶應義塾大学医学部放射線科学教室(診断)]
2021年に開催された東京オリンピック・パラリンピックの記憶が昨日のことのように思い出されますが,時間が経つのは早く,今年2024年はパリオリンピック・パラリンピックの開催年に当たります.本号が出版される頃には,また新たな感動が生まれ,名場面が心に刻まれていることでしょう.オリンピック選手村診療所を含め,放射線科医はスポーツ診療の画像診断に大きく関わってきました.大学病院や地域の中核・基幹病院のみならず画像診断クリニックにおいても,スポーツ診療に関係する画像診断が日常診療に占める割合は比較的多いことと思います.その割には,とっつきにくく後回しにしたい領域で,できれば避けたいといわれる放射線診断専門医に一定数遭遇します.整形外科医・スポーツドクターが画像診断に求めているものがわからない,関節を中心とする骨軟部・骨関節領域の解剖がわかりにくい,四肢末梢を含めカバー領域が広いといった要因に加え,そもそも医学生時代に骨軟部・骨関節領域に興味のある人達の多くは整形外科医になり,放射線科医にならないのではないか,とも推察しています.
そのような背景の中,今年4月の第83回 日本医学放射線学会総会では,主幹校として陣崎雅弘会長(慶應義塾大学)のもと“骨軟部画像診断の父”とも称されるDr. D. Resnick(カリフォルニア大学)をお招きし,スポーツ診療に関連する画像診断をテーマとしたシンポジウムを取り上げていただき,立見が出る大盛況ぶりでした.北米放射線学会(Radiological Society of North America;RSNA)においても,スポーツ関連の骨軟部・骨関節領域の教育講演は大盛況で,会場が立見となる状況を何度も経験しています.したがって,日本でも骨軟部・骨関節領域,スポーツに関連する画像診断を学びたい人は潜在的に多くいるとも思っています.
そこで,本特集はスポーツ診療に関する画像診断を主題として,総論から各論まで幅広くエキスパートの先生方に解説いただきました.総論では,日本代表セブンズチームドクターを長く勤められた整形外科医・スポーツドクターである田崎 篤先生に放射線科医に向けてのメッセージ的総説を,日本代表サッカーチームドクターを長年勤められている放射線科医・スポーツドクターの土肥美智子先生にアスリートのスポーツ外傷・障害についての素晴らしい総説をご執筆いただきました.そして,エキスパートの放射線診断専門医の先生方から,小児領域総論や各領域の各論について玉稿をご執筆いただきました.今回はそれぞれの分量を少なめにして項目を少し増やしたことで,各項目が読み切りやすくなっています.手にとって通読し,手元に置いていただきたい,間違いなく明日からの診療に役立つ内容と自信をもっていえる1冊になりました.ぜひ興味を持ち,学ぶきっかけにしていただきたく思います.画像診断を通してスポーツ診療の一角を担う放射線科医が増えることを願いつつ,最後に,きわめてご多忙なところ,快く本原稿をお引き受けいただいた先生方にこの場を借りて厚くお礼申し上げます.
序説 ● 野崎 太希
スポーツドクターが求める画像診断 ● 田崎 篤
アスリートのスポーツ外傷・障害の特徴と予防 ● 土肥 美智子
スポーツ診療の画像診断に必須のMRI知識 ● 野崎 太希
小児期のスポーツ外傷 ● 巷岡 祐子,河野 達夫
脊椎 ● 髙尾 正一郎
足部・足関節 ● 足立 拓也,片倉 麻衣
膝関節・下腿 ● 福庭 栄治
股関節・大腿 ● 福田 健志,米永 健徳
手・手関節 ● 林 大地
肘関節・前腕 ● 柿木 崇秀
肩関節・上腕 ● 常陸 真
【連載】
すとらびすむす
もうすぐ定年… ● 吉満 研吾
画像診断と病理
非定型肝嚢胞 ● 津崎 盾哉,陣崎 雅弘 ほか
ここが知りたい!
画像診断2024年4月号特集「頭部のcommon diseaseにみる非典型的画像所見」
● 栗原 紀子,黒川 遼,鈴木文夫
Case of the Month
Case of September ● 香田 渉,片桐 亜矢子
THE KEY TO Case of July ● 奥田 実穂,小林 聡
Picked-up Knowledge from Foreign Journals
喫煙と肺疾患 ● 小野 修一
続General Radiology診断演習
“鳥の目”で診断する ● 池辺 洋平
読影レポートLesson
骨軟部編「第5中足骨骨折」 ● 福田 健志
Refresher Course
胎児MRI ―苦手意識を克服しよう!(後編) ● 中俣 彰裕,松木 充 ほか