【特集】
序説 ● 中本裕士[京都大学大学院医学研究科放射線医学講座(画像診断学・核医学)]
以前はPET装置の導入施設が限られ,PET画像を読影する必要に迫られる画像診断医は比較的少数であった.一般的な核医学画像として検査数の多かった骨シンチグラフィやガリウムシンチグラフィでは,前面像と後面像が写った1枚の写真をシャウカステンにかけ,深く考えずに「異常なし」と印象を書いても,臨床上あまり問題にならなかった.心筋血流SPECT検査は,循環器内科医が負荷をかけて検査を行い,症状,心電図,心カテーテル検査などの結果を踏まえて所見をつけることが一般的であった.このような背景のもと,放射線科に属する画像診断医が核医学の画像を勉強する必要性は,必ずしも高いとはいえなかったであろう.しかし,時代は変わった.
今世紀に入り,核医学画像,特にPETにおいては,形態画像の代表的なCTと融合画像を作って読影するようになり,核医学はRI(radioisotope)を使った生理機能の計測から,画像診断へと比重が大きくシフトした.FDG(18F-fluorodeoxyglucose)を用いたPET/CT検査は,悪性腫瘍の治療方針を決定するために一般的な画像診断として行われ,自施設で導入されている場合の読影はもちろん,導入されていない施設であっても,他施設で得られた画像にコメントを求められることがある.
こうして,核医学を専門としない画像診断医であっても,核医学画像に接する機会は飛躍的に増加している.生体の“どこで”“何が”起きているのかという形態情報と代謝情報の両者の情報があって初めて次に進める症例があり,日常的に核医学画像を読影する機会が少なくても,核医学的な知識を携えておくことで突破口を開く可能性がある.さらに,核医学の進歩は画像診断だけではない.177Lu-DOTATATEなどの新しい内照射治療も数年前に臨床現場に導入され,世界での盛り上がりを受けて,わが国でも今後経験する機会が増えていくものと予想される.
本特集では,放射線診断専門医として活躍しながらも,核医学領域に造詣の深い先生方に執筆をお願いし,核医学を専門としていない画像診断医が最低限知っておくべき内容をまとめていただいた.核医学(nuclear medicine)は,もはやunclear medicineからnew clear medicineになってきたことを実感していただけるのではないかと期待している.本特集が,明日からの日常診療に役立てば望外の喜びである.
序説 ● 中本裕士
A. あらためて振り返るPET/CT
1. 撮像前に覚えておくべき必須知識 ● 金井 理美,竹内 香代 ほか
2. FDG-PET 画像を読影時に知っておくべき必須知識 ● 河野 由美子,宇都宮 啓太 ほか
3. 他科医師や看護師からの問い合わせにいかに返答するか? ● 三宅 可奈江,大野 和子
4. 腫瘍に対するPET検査に関し,知っておくと近い将来役立つ知識 ● 子安 翔
5. 脳PET ● 山根 登茂彦
B. 合同カンファレンスで役立つ一般核医学の必須知識
-役立つ状況を覚えておこう-
1. 脳血流シンチグラフィ ● 山根 登茂彦
2. DAT SPECTとMIBGシンチグラフィ ● 山根 登茂彦
3. こんな時に使える核医学 ● 奥山 智緒,北口 耕輔
C.最近の核医学治療
1. 様々な内照射療法 ● 中條 正豊,神宮司 メグミ
【連載】
すとらびすむす
普通においしい ● 尾尻 博也
画像診断と病理
デスモイド型線維腫症 ● 大西 基文,小山 貴 ほか
Picked-up Knowledge from Foreign Journals
long axial field-of-view(LAFOV)PET/CT ● 横山 幸太,立石 宇貴秀
Case of the Month
Case of May ● 廣井 崇
THE KEY TO Case of March ● 吉田 篤史,有薗 茂樹 ほか
続General Radiology診断演習
「無理ゲー」を「勝ち確」に変えろ ● 竹田 太郎,高杉 美絵子 ほか
読影レポートLesson
肝胆膵脾編「胆嚢壁肥厚」 ● 市川 新太郎,五島 聡
Refresher Course
診療ガイドラインから学ぶ循環器画像診断 ● 加藤 真吾,宇都宮 大輔