【特集】
序説 ● 山本麻子(帝京大学医学部附属病院放射線科)
本特集は,2015年に好評をいただいた画像診断臨時増刊号(Vol.35 No.11)『ステップアップのための骨軟部画像診断 −Q&Aアプローチ−』の第2弾である.今回は部位別ではなく,診断の現場で必要となる場面別,つまり撮像方法/正常画像解剖およびnormal variant,緊急性の高い疾患,術後画像,そして最近の骨軟部腫瘍診断の潮流の5つに分けて,各領域のエキスパートの先生方にご執筆いただいた.
そもそも“骨”や“軟部”という括りの組織は,ほぼすべての画像に含まれている.しかし,多くの画像診断医にとっては,邪魔とまではいかなくとも,診断プロセスの中で無意識に削除されている組織ではないだろうか.一方,骨関節の撮像となるとどこまで深追いするべきか,ルーチン撮像の設定にすら悩むことも多く,施設に応じて最善を尽くしているのが現状であろう.また,解剖学的にいまだ解明しきれていない各関節構造を画像で正確に評価するには限界もある.normal variantはKeatsの成書に詳しいが,ビギナーにとってはとっつきにくいほど量が多い.ご執筆の先生方にとってはかなり難儀な特集であったと思うが,私自身が“記憶しきれないが頻繁に遭遇する”困りもの,いつもあちらこちらの本をめくって探しているものを1冊に詰め込むことを目標とした.各先生方が詳細かつわかりやすく解説くださり,読影の傍らに常備したい1冊が完成したと自負している.
今回は,緊急症例に迅速に対応する手引きとなることも目指している.「緊急症例だ!」と思ったら本書を手に取っていただきたく,外傷や腫瘍,感染症といった特に優先順位の高いものを取り上げた.また,術後の画像検査は多いが,臨床医が何を期待しているのか,わからないままでレポートを作成していないだろうか.今回の編集を通して自身のレポートがなんと稚拙だったかと赤面する思いだが,自施設の状況とすり合わせながら,是非ご活用いただきたい.骨軟部腫瘍については,WHO分類第5版(2020)改訂ポイントを中心に解説いただいた.既にこの版からは,画像診断の限界を超えて免疫染色や遺伝子検査が分類の根拠となりつつある.頻度の高い軟骨性骨腫瘍,脂肪性軟部腫瘍については比較的現行の画像診断が通用するため,分類変更の内容を押さえておきたい.また,小円形細胞肉腫をはじめとする呪文のような免疫染色,遺伝子検査により確立された疾患群については,画像の知見が追いついていない領域であり,まさにupdateな内容となっている.
最後に,診断医のスキルアップの定石は臨床医との直の対話,日々のコミュニケーションではあるが,放射線科同様に整形外科,皮膚科,内科などの各科でも専門領域は細分化されている.すべての領域にいきなり出向き,または電話をかけて担当医とディスカッションするのはハードルが高いと思う.本特集の各領域専門家の目のつけどころが日常の読影に活かされ,読者の皆様が臨床医と対話する機会を作るきっかけとなれば幸いである.
序説 ● 山本麻子
●1 解剖と基本のMRI シーケンス
Q1 腱板損傷の依頼に対する推奨シーケンスと主な読影ポイントを教えてください.
●福田 健志
Q2 肘関節:ルーチン検査の推奨MRIシーケンスおよび外側/ 内側上顆付着構造の解剖を教えてください. ● 中橋 優太,岡本 嘉一
Q3 肘関節:リトルリーガー肘の発症機序を教えてください.ルーチンシーケンスに追加すべきものはありますか?● 中橋 優太,岡本 嘉一 ほか
Q4 手関節:手関節痛に対する推奨MRI シーケンスを教えてください.システマティックな読影方法を教えてください. ● 野崎 太希
Q5 手関節:関節リウマチ患者で両側MRI撮像が依頼されました.体位,固定方法,撮像のポイントを教えてください.● 野崎 太希,三浦 茂樹 ほか
Q6 股関節:股関節痛の依頼に対する推奨MRI シーケンスを教えてください.
● 奥 永,藤崎 瑛隆 ほか
Q7 膝関節:見落としのない推奨MRIシーケンス,システマティックな読影方法を教えてください.● 稲岡 努
Q8 膝関節:膝関節内側支持機構はどうなっていますか? ● 小城原 瑛,福田 健志 ほか
Q9 膝関節:膝関節外側支持組織はどのような解剖ですか? ● 新津 守
Q10膝関節:膝関節半月板の構造,断裂所見の取り方を教えてください. ● 新津 守
Q11膝関節:膝蓋大腿関節不安定性はどのように評価しますか? ● 小黒 草太,常陸 真
Q12足関節:足関節・足部の評価は単純X 線写真でどのように行ったらよいですか?
● 小橋 由紋子
Q13 足関節:足関節内側支持組織複合体の解剖と異常所見の取り方を教えてください.● 小橋 由紋子
Q14 足関節:足関節外側支持組織複合体の解剖と異常所見の取り方を教えてください.● 福庭 栄治
Q15 足関節: 足関節インピンジメント症候群はどこに発生しますか? どのような画像所見を呈しますか? ● 福庭 栄治 ・
●2 Normal variants,年齢による評価
Q1 肩関節:normal variationと関節唇損傷の判別の仕方を教えてください.● 大木 望,上谷 雅孝
Q2 肘関節:骨端核の出現時期を教えてください. ● 大木 望,上谷 雅孝
Q3 手関節:手根骨骨核の出現時期を教えてください. ● 堀内 沙矢
Q4 手関節:橈尺骨のvariance,手根骨のnormal variance,それに伴う好発疾患を教えてください. ● 堀内 沙矢
Q5 足関節:主な種子骨・副骨,有症状の場合の画像所見を教えてください.● 山本 浩大郎,山本 麻子
Q6 脊椎:骨髄信号の年齢による推移,正常所見と,鑑別が必要となる病態を教えてください.● 中田 和佳
●3 緊急性の高い疾患
Q1 歯突起骨折と歯突起骨(os odontoideum)の鑑別を教えてください.● 中田 和佳
Q2 TLICS/SLICSとはどのようなシステムですか? ● 米永 健徳
Q3 Chance型骨折の画像所見を教えてください. ● 米永 健徳
Q4 脊椎損傷をみた場合に気をつけるべき重篤な合併所見はどのようなものがありますか?● 常陸 真
Q5 緊急照射が必要な病態,部位を教えてください. ● 野元 昭弘
Q6 化膿性脊椎椎間板炎と結核性脊椎椎間板炎の画像の特徴を教えてください.● 横山 幸太,大山 潤 ほか
●4 術後の所見の取り方
Q1 肩関節:腱板修復術後の評価方法を教えてください.● 野崎 太希
Q2 股関節:人工股関節置換術(THA)後の合併症の画像評価のポイントを教えてください.● 藤崎 瑛隆,奥 永 ほか
Q3 膝関節:ACL再建術後の合併症の画像評価のポイントを教えてください.● 稲岡 努
Q4 脊椎:腰椎椎体間固定術後の評価方法,合併症を教えてください.● 髙尾 正一郎,苛原 早保
Q5 脊椎:PVP術後の評価方法,合併症を教えてください.● 和田 武,小林 信雄
●5 骨軟部腫瘍
Q1 軟骨性腫瘍のWHO分類第5版(2020)改訂ポイントを教えてください.● 三宅 基隆
Q2 WHO分類第5版(2020)改訂に伴い,従来の“Ewing sarcoma”がどのように変更されたか教えてください.● 三宅 基隆
Q3 脂肪性腫瘍のWHO分類第5版(2020)改訂ポイントを教えてください.● 戌亥 章平
Q4 最近の軟部腫瘍の免疫染色,遺伝子検査などの進歩,画像診断に与える影響を教えてください.● 中井 雄大
【連載】
すとらびすむす
変革の時代を先導する ~学会を主催するにあたって~ ● 陣崎雅弘
画像診断と病理
peritoneal inclusion cyst ● 細川 浩平,竹本 拓正 ほか
続General Radiology診断演習
“点”ではなく“線”としての意識づけ ● 北村 弘樹
Picked-up Knowledge from Foreign Journals
Fontan-associated liver disease(FALD) ● 渡谷 岳行
読影レポートLesson
脊椎編「腰椎椎間板ヘルニア」● 稲岡 努
Case of the Month
Case of February ● 加賀谷 理紗,佐藤 典子
THE KEY TO Case of December ● 横田 悠介,久保 武
Refresher Course
肺腫瘍性病変のCT 診断 ― 最新情報を含めた重要所見― ● 梁川 雅弘,秦 明典 ほか