【特集】
序説 ● 岡田真広(日本大学医学部放射線医学系放射線医学分野),松木 充(自治医科大学とちぎ子ども医療センター小児画像診断部)
一般的によく目にする血栓は肺動脈や脳動脈などかもしれないが,全身には血管がはりめぐらされており,どこでも血栓は生じうる.血栓ができやすい部位を知っておくことはもちろんのこと,血栓ができる機序についても知ることは重要である.
よって本特集では,まず総論として放射線科医が知るべき血栓症・塞栓症の病態メカニズムを,そして各論として,頭部・頸部動脈血栓症・塞栓症,脳静脈血栓症,肺動脈血栓症・塞栓症,上腸間膜動静脈血栓症・塞栓症,四肢動静脈血栓症・塞栓症について執筆していただいた.
病態を深く知ることは画像診断にとって重要である.荻原義人先生には,血栓症・塞栓症発生のメカニズムに留まらず治療法にも言及していただき,臨床的にも非常に役立つ内容にしていただいた.沖達也先生には,日常の読影でよく遭遇する心原性脳梗塞やアテローム血栓性脳梗塞の発症機序と画像所見,さらにプラークイメージングについてわかりやすく記載していただいた.中條正典先生には感染性心内膜炎(菌血症による疣贅)や空気塞栓症,脂肪塞栓症,腫瘍塞栓症など,発症要因が特徴的な疾患を詳細に執筆していただいた.池辺洋平先生には,脳静脈血栓症について静脈内の観察に留まらず,脳実質の評価を正確に行うことの重要性を教えていただき,また確定診断のための検査についても執筆していただいた.山崎誘三先生は肺血栓塞栓症について研究成果をあげている注目すべき研究者であり,急性,慢性の画像の特徴を明確に述べていただき,この領域で活躍するdual energy CT(ヨードマップ)や新しい画像診断装置であるX線動態撮影についても触れていただいた.入里真理子先生には,IVRでも重要な役割を担う上腸間膜動静脈血栓症・塞栓症における血管閉塞部位と病態についても詳しく述べていただいた.放射線科医として,腹痛患者のCT検査を非造影で終了して診断が遅れ患者の生命危機を起こさぬように,動脈相や静脈相をしっかりと高分解能で撮像する必要性を感じさせてくれる.常に,上腸間膜動静脈血栓症・塞栓症の可能性を念頭に置きたい.益田淳朗先生には,四肢動静脈血栓症・塞栓症として下肢動脈の急性虚血や下肢静脈血栓症を中心に執筆していただいた.診断のための要点がわかりやすく詳細に記載されており,初回の造影CT画像診断で病態を適切に評価できれば,大きく治療に貢献できると感じた.
いずれの執筆者の先生方も基本的事項に留まらず,血栓の病態,治療に至るまで詳細に述べてくださり,血栓の画像診断を学びたい放射線科医にとって有用な特集になったと考えている.
序説 ● 岡田真広, 松木 充
放射線科医に知ってほしい血栓症・塞栓症の病態メカニズム ● 荻原 義人
頭部・頸部動脈血栓症・塞栓症 ● 沖 達也,渡邉 嘉之
稀な頭部動脈塞栓症 ● 中條 正典,長谷川 知仁 ほか
脳静脈血栓症 ● 池辺 洋平,原田 太以佑 ほか
肺動脈血栓症・塞栓症 ● 山崎 誘三,神谷 武志 ほか
上腸間膜動脈静脈血栓症・塞栓症 ● 入里 真理子,丸上 永晃 ほか
四肢動静脈血栓症・塞栓症 ● 益田 淳朗,宮地 洋佑 ほか
【連載】
すとらびすむす
山登りで気づくこと ● 岩澤 多恵
画像診断と病理
ICI 関連心筋炎 ● 粉川 嵩規,髙藤 雅史 ほか
ここが知りたい!
画像診断2023年7月号特集「子宮内膜症の病態と画像診断 ―温故知新」
● 中井 豪,竹内 麻由美
Picked-up Knowledge from Foreign Journals
大規模言語モデルの臨床応用 ● 橋本 正弘
Case of the Month
Case of December ● 横田 悠介,久保 武
THE KEY To Case of October ● 齋藤 亜矢子,久保 武
続General Radiology 診断演習
所見を確実に拾い上げる ● 仲谷 元
読影レポートLesson
核医学編「PET ならではの特徴的な非腫瘍性集積」● 北島 一宏
Refresher Course
膝半月板の画像診断 ● 福田 健志