【特集】
序説 ● 岩澤多恵(神奈川県立循環器呼吸器病センター放射線科)
抗線維化薬が臨床に導入されてから,間質性肺炎の治療は大きく変わっている.2021年に,わが国でも抗線維化薬の適応が,特発性肺線維症(idiopathic pulmonary fibrosis;IPF)から,進行性の線維化を伴う間質性肺疾患(progressive fibrosing-interstitial lung disease;PF-ILD)全般に拡大された.これにより,抗線維化薬を使うのか,それともステロイドなどの抗炎症治療か,さらに両者の併用かといった,治療法をもとに疾患を大まかにとらえる考え方が,現在の間質性肺炎診療の基本となっている.特に抗線維化薬については,“疾患が進行している”ということが適応を決める大きな要素であり,画像所見で疾患の進行を正しく評価することが,ますます重要となっている.
そこで今回,一般の画像診断医が,現在のびまん性肺疾患の診療,特に“治療を念頭に置いて,疾患をとらえる”という考え方を理解するための特集を企画した.本特集では,まず2022年に発表されたガイドラインを中心に,臨床の立場から,現在の間質性肺炎の診療の概略を解説する.次に,間質性肺炎の病態や画像所見の成り立ちを理解するために,病理の解説を行う.UIP(usual interstitial pneumonia)パターンは,進行性で予後不良な線維化の代表である.膠原病肺や過敏性肺炎など,様々な二次性の間質性肺炎においても予後不良因子であることが知られている.また,前述の2022年のガイドラインにおいて,UIPパターンのhigh-resolution CT(HRCT)の分類には,病理組織学的なUIPパターンの存在確信度も記載されている.つまり,UIPパターンを画像で評価するには,背景となる病理組織像の理解が不可欠なのである.本特集の病理解説では図を多用し,画像診断医にも理解しやすい内容となっている.
間質性肺炎の各項目は,慢性の線維性の間質性肺炎,急性経過の間質性肺炎,じん肺や過敏性肺炎などの吸入に関連したびまん性肺疾患の3つに分けた.それぞれについて,具体的な症例を挙げて解説している.また,間質性肺炎の診断には,感染症や心不全,腫瘍性疾患などの疾患をまず除外する必要がある.これらの疾患についても,具体的な症例を示して解説し,本領域を専門としない画像診断医が,日常診療で参照しやすい内容となっている.
間質性肺炎は,多くの略語や毎年のように発表されるガイドラインに翻弄され,本領域を専門としない画像診断医には敬遠されがちな疾患である.しかし,びまん性肺疾患では,疾患進行および薬剤有効性の評価,合併症の発見など,日常臨床に画像診断は不可欠である.本特集が,明日からの皆様の診療に少しでもお役に立てれば幸いである.
序説 ● 岩澤 多恵
画像診断医に必要なびまん性肺疾患の知識(臨床医の立場から) ● 馬場 智尚
画像診断医に必要な間質性肺炎の知識(病理医の立場から) ● 石田 佳央理,田中 伴典
新たな特発性肺線維症のガイドラインと進行性肺線維症 ● 松下 彰一郎,岩澤 多恵 ほか
治療介入の必要な急性・亜急性経過の間質性肺炎 ● 福田 大記,三角 茂樹 ほか
吸入に関連したびまん性肺疾患 ● 上野 碧,青木 隆敏
びまん性肺疾患の鑑別診断(感染症) ● 佐藤 晴佳,岡田 文人 ほか
びまん性肺疾患の鑑別診断(非感染性疾患) ● 山田 大輔
【連載】
すとらびすむす
物憂げ世情~光明 ● 辻川 哲也
画像診断と病理
心臓悪性リンパ腫 ● 山口 慎太朗,石田 正樹 ほか
ここが知りたい!
画像診断2023年3月号特集
「薬物療法時代の肝細胞癌診断と治療」
● 北尾 梓,八坂 耕一郎
CASE OF THE MONTH
CASE of August ● 太田 理恵,山下 直生 ほか
The Key to Case of June ● 織田 潮人,檜山 貴志 ほか
続General Radiology診断演習
画像だけでも,臨床だけでも ● 向井 宏樹
Picked-up Knowledge from Foreign Journals
神経放射線―膠芽腫と脳梗塞 ● 森 墾
読影レポートLesson
婦人科編「出血を伴う卵巣腫瘤」 ● 坪山 尚寛,富山 憲幸
Refresher Course
肝画像診断における人工知能の臨床応用 ―人工知能を用いた動向分析― ● 山田 哲