【特集】
序説 ●小林 聡
肝画像診断に関する最近のトピックは多岐にわたり,他分野をサブスペシャリティとする放射線診断専門医や,専門医を取得するために各分野の膨大な知識をこれから獲得する必要がある若手の放射線科医にとって,知識を最新の状態に保ち続けるには大変な労力が必要だろう.
びまん性肝疾患においては,乳癌肝転移などの加療後に生じるpseudocirrhosis,オキサリプラチン投与後のsinusoidal obstruction syndrome (SOS)のような,治療・薬剤に伴う肝実質のびまん性あるいは限局性変化が最近注目を浴びている.
肝血流異常に伴って肝実質の病変が生じることは以前から知られていたが,門脈血行異常症の画像所見と,それに伴い生じる過形成など,肝実質変化の発生原因に関する最新の仮説,画像診断の決め手や診断後の取り扱いなどについては,一般の放射線科医もある程度は理解しておく必要があるだろう.
肝の解剖学的変異・先天異常(形態異常)として,先天性門脈欠損症,静脈管開存などの血管系の異常や,内臓錯位(無脾症や多脾症)に伴う肝の形態異常など種々の異常があるが,正常像を念頭に置いた丹念な読影を行わないと形態異常を見落としてしまう場合があり,注意が必要である.
肝良性腫瘍の最近のトピックスとしては,肝細胞腺腫の亜分類とそれに基づく画像診断が挙げられる.文献的に明らかとなっている肝細胞腺腫の各亜型の臨床的および画像的特徴について,そろそろ肝を専門としない画像診断医も体系的な知識を得ておくべき時期になりつつある.
近年の欧米における肝細胞癌例の増加と,画像診断の標準化やstructure reportの推進の流れに伴い,欧米のトップジャーナルで肝細胞癌画像診断の標準化ツールであるLI-RADSに関する論文をしばしば目にするようになっている.今後は日本でも,LI-RADSのコンセプトや具体的内容についての知識が必要になってくると考えられる.
また,細胆管癌や混合型肝癌,胆管形質を示す肝細胞癌に関する臨床的および画像的特徴に関する最新の知見や,低分化・未分化型肝細胞癌に関する知見についても知識を整理しておく必要があるだろう.
今回,肝画像診断に関する知識のブラッシュアップに役立てていただきたいと考え,“肝の画像診断update”と題して,先に述べたような肝画像診断に関する最新のトピックをカバーする特集を企画した.
執筆はいずれも肝画像診断のエキスパートの先生方である.一般的な教科書では省かれているが実臨床では役に立つ,肝画像診断に関する一歩踏み込んだ知識に関しても可能なかぎり言及いただくようお願いした.読者の皆様が,本特集を通して肝画像診断における最新の知識を入手し,明日からの臨床に役立てていただくことができたら幸いである.
序説 ● 小林 聡
肝の発生学および解剖学的変異・先天異常の画像診断 ● 松本 俊郎,高司 亮ほか
びまん性肝疾患の画像診断 ● 中尾 聖,田辺 昌寛ほか
肝血流異常とそれに伴う実質病変に関する最新の考え方 ● 戌亥 章平,近藤 浩史ほか
肝細胞癌の画像診断−鑑別疾患とLI-RADS− ● 上田 和彦
肝細胞腺腫の亜分類とMR診断 ● 原留 弘樹
肝悪性腫瘍の画像診断 ● 藤田 展宏,西江 昭弘ほか
肝内胆管病変の画像診断 ● 小坂 一斗,小林 聡ほか
肝CT・MRI診断技術の進歩 ● 所 博和,藤永 康成ほか
【連載】
すとらびすむす
南の島の赤い鳥−その後 ● 村山 貞之
画像診断と病理
悪性Brenner腫瘍 ● 田中 文浩,園村 哲郎ほか
ここが知りたい!
画像診断2018年4月号特集
「解剖から迫る呼吸器画像診断」
● 冨永 循哉,西本 優子
Picked-up Knowledge from Foreign Journals
消化器癌とRadiomics ● 岡田 吉隆
CASE OF THE MONTH
Case of September ● 伊原 研一郎,伊東 克能
The Key to Case of July ● 神谷 正喜,小林 大河ほか
他科のエキスパートにお尋ねします-ここを教えていただけますか
産婦人科編 ● 桑原 章,竹内 麻由美
Refresher Course
子宮動脈塞栓術前の非造影MRA ● 森 健作