あなたならーどうする?
症例から学ぶ読影に困った時の指針
序説
荒木 力
現在のMRI(magnetic resonance imaging)は,フーリエ級数・フーリエ変換を基盤とした2次元あるいは3次元フーリエ法である.すなわち,光学写真やX線写真とは異なり,生体の核磁化分布を直接撮像することはできないので,まず傾斜磁場を印加しながら撮像することにより物理的に核磁化分布をフーリエ変換してk(波数)空間データとし,デジタル化したうえで数学的にフーリエ逆変換する(フーリエ成分を重ね合わせる)という過程を経て,MR画像が作成される.フーリエ級数・フーリエ変換は,このようにMRIをはじめ,電磁波(可視光線,X線,宇宙線など)や音のスペクトル(波長,周波数)分析など幅広い分野に応用されている.
医療は言うまでもなく患者さんの病変を取り除く(治療する)か,「なんでもないですよ」あるいは「病変はあるけれど放っておいて大丈夫ですよ」と納得していただくこと,つまり患者さんの問題を解決することだ.画像診断はこの過程のどこかに介在するにすぎないが,どのように介在するかによって患者さんの辿り着く先が大きく異なると問題である.画像診断を担当するに当たっては,これによって患者さんの進路がどのように変わるのか,次に何をするべきかという指針を示す必要がある.とはいえ,実際に読影していれば,「これは本当に病変なのだろうか」「病変だとしても放っておいてよいものだろうか」「次は何をするべきなのだろうか」など迷うことは少なくない.今回は「あなたなら-どうする?-症例から学ぶ読影に困った時の指針-」と題した特集を組んだ.日常の読影の指針となるとともに,フーリエ級数・フーリエ変換のように幅広く有用性が高く,患者さんの問題解決に有用な放射線科医になるための一助となれば幸いである.
特集
脳
頭頸部
脊髄・脊椎
骨
軟部組織
心・大血管
肺・縦隔
上腹部
泌尿器
女性生殖器
小児
●連載目次●
すとらびすむす
見当たり捜査と消化管X線診断
杉野 吉則
画像診断と病理
乳房Paget病
白木 法雄,原 眞咲ほか
ここが知りたい!
画像診断2009年12月号特集
「縦隔疾患の画像診断-基礎から最新情報まで-」
中園 貴彦,原 眞咲
胸部画像診断24のポイント
肺野の血管陰影を読む
野間 恵之
Picked-up Knowledge from Foreign Journals
脊椎関節炎のMRI診断
福田 国彦
CASE OF THE MONTH
Case of May
原田 太平,安田 浩章ほか
The Key to Case of March
谷脇 貴博,高尾 正一郎ほか
Refresher Course
下肢閉塞性動脈硬化症の診断と治療戦略
田中 良一