【特集】
序説 ●吉満研吾
今月号の特集のテーマとして,上腹部主体の感染症を対象とした「腹部感染症の画像診断update」が編集委員会にで決定され,指名により私がその編集を担当することとなった.これは,2016年1月の特集「骨盤部感染症の画像診断−迅速な診断と治療のストラテジー」(松崎健司先生編集)が好評を博したことを受け,その延長上の位置づけとなると伺っている.昨年5月にこのお話をいただいた際に,正直言って具体的に何がトピックでどのような内容になるか皆目検討がつかなかったので何度もお断りしようと考えたが,私が不勉強なだけかもしれないと考え直し,とりあえずはお受けすることとした.しかし,すぐに後悔することとなった.いろいろと調べていく中,それらしいアイデアは現れては消え,特に画像診断と関わるようなテーマはそう簡単には見つからず,遅々として構想が進まない日々が続いた.そのような中,編集委員会のサポートも受けながらなんとか絞り出すように完成したのが,本号の特集である.
まず,福岡大学病院腫瘍・血液・感染症内科の
戸川 温先生に最近の腹部感染症のトピックとして,複雑性感染症においては抗菌薬の適切な使用に加え,IVRなどによるソースコンロトールが重要であること,また薬剤耐性菌やディフィシル菌への対応が問題になっていることについて述べていただいた.次いで岐阜大学放射線科の棚橋裕吉先生には,肝の古典的感染症の画像所見に加え,化学療法や免疫不全時には真菌・抗酸菌感染やB型肝炎の再活性化に留意しなければならないことについて問題提起していただき,広島大学感染症科の梶原俊毅先生にはガイドラインに基づいた胆嚢炎,胆道炎のマネジメントに加え,医原性bilomaにフォーカスして述べていただいた.愛仁会高槻病院イメージングリサーチセンターの高橋 哲先生にはcommon diseaseである腎盂腎炎における画像診断の役割と条件,臨床家に知らせるべき所見と鑑別診断まで幅広くカバーしていただき,佐賀大学放射線科の野尻淳一先生には消化管について,2大疾患である虫垂炎・憩室炎を主体に,好中球減少性腸炎,結核にまで触れていただいた.最後に倉敷中央病院放射線診断科の小山 貴先生らに感染症と鑑別を要する腫瘍性・腫瘍類似病変を症例ベースにご紹介いただいた.
いずれの先生方も今回のご執筆をお願いした際,さぞかし困惑されたことと思う.私がもし執筆依頼を受けても逡巡したであろうと考えると,今回快諾していただいた先生方には感謝してもしきれない思いである.特に真っ先に相談させていただき,適切なアドバイスをいただいた当院感染症内科の高田 徹病院教授にはこの場を借りて深謝したい.
おかげさまで,どの原稿も私の当初の企画案よりもはるかに秀逸に仕上がっており,安堵している次第である.
最後に,本稿が少しでも多くの方々の明日からの日常診療に役立つことを祈念しつつ,序とさせていただく.
序説 ● 吉満 研吾
腹腔内感染症診療の動向−最近のトピックを中心に− ● 戸川 温,高田 徹
肝感染症 ● 棚橋 裕吉,五島 聡ほか
胆道感染症 ● 梶原 俊毅,繁本 憲文ほか
腎感染症−画像診断では何に注目すべきか?− ● 高橋 哲,上野 嘉子
腸管と腹腔の感染症−虫垂炎,大腸憩室炎を中心に− ● 野尻 淳一,水口 昌伸ほか
感染症と紛らわしい腫瘍性・非腫瘍性病変 ● 小山 貴,吉野 久美子ほか
【連載】
すとらびすむす
小さな頃の想い出 ● 今井 裕
画像診断と病理
非結核性抗酸菌感染による腱鞘滑膜炎 ● 稲井 良太,金澤 右ほか
ここが知りたい!
画像診断2017年8月号特集
「サインから読み解く婦人科画像診断」
● 上野 嘉子,竹内 麻由美
Picked-up Knowledge from Foreign Journals
MRを用いた左心不全・不整脈評価 ● 岡田 宗正
CASE OF THE MONTH
Case of January ● 渡邊 宏剛,石井 士朗
The Key to Case of November ● 浮洲 龍太郎,井上 優介
他科のエキスパートにお尋ねします-ここを教えていただけますか?
骨軟部編 ● 金子 康仁,野崎 太希
General Radiology診断演習
第5 回 うわっ…私のCA125,高すぎ…? ● 木口 貴雄
Refresher Course
MRIを用いた髄膜腫の硬さの予測 ● 與儀 彰
New Horizon of Radiology
PET/MR一体型装置の臨床的有用性 ● 野上 宗伸