MRIアーチファクトの光と影
*電子書籍版は,都合により,紙面と異なり割愛される箇所があることがございます.
序説 ● 似鳥 俊明
本号の特集では,“MRIアーチファクトの光と影”として,MRIアーチファクトの理論と臨床をテーマとして取り上げた.
MRIにはアーチファクトがつきもの,むしろアーチファクトそのもの,「環境や状態の情報が不可分に包含されたアーチファクトの塊(森 墾先生論文,p.14〜26参照)」とも表現される.MR画像の成り立ちは,CTを含めたX線画像とは全く異なる.人体から発生するきわめて微弱な磁場エネルギーの変化をかぼそい電気信号としてとらえ,驚くほど精妙な仕掛けをもって画像となるのだが,その画像はウィンドウレベルを調整することで消えてしまうほど繊細なものである.適正な調整をしないとアーチファクトだけが残ることもある.立ちふさがるアーチファクトの影に真の情報が潜んでいる.読影の際にもしばしば障害となるが,興味深いことは,「MRIのアーチファクトには真犯人と濡れ衣アーチファクトがあり(荒木 力先生論文,p.8〜13参照)」,特に後者をうまく利用することで画像情報に付加価値が加わるという特徴をもつことだ.MRIはアーチファクトとの相互関係で発展してきたともいえる.MR画像作成の理論,アーチファクトの効果的利用方法を学ぶ時にはいつも,人間の知恵と意欲に感動を覚える.新しい技術が開発される度に,小さなエネルギーを利用しつくすという根底の姿勢に共感を抱いていた仲間も少なくないはずだ.
このようなアーチファクトの本態を理解し,うまく利用することは診療MRIに携わる者にとって喜びであり義務である.
趣旨に賛同するエキスパートにより行われた“東京MRIセミナー2011:MRIアーチファクトの光と影”を基に本特集を企画した.同じアーチファクトがそれぞれの領域で登場することが多いが,特集の性格上やむをえないことを読者にもご了解いただきたい.
MRIとアーチファクト
A.アーチファクトって何? ● 荒木 力
B.MRIってアーチファクト! ● 森 墾
種々のアーチファクト発生メカニズムとその解消法
A.生体からのアーチファクト ● 小林 邦典,濱田 健司ほか
B.装置からのアーチファクト ● 吉田 学誉
アーチファクトの積極的利用法と診断上のピットフォール
A.頭部 ● 松島 理士,福田 国彦
B.血管系 ● 天沼 誠,高橋 綾子ほか
C.骨軟部 ● 青木 隆敏
D.体幹部 ● 寺田 理希,竹原 康雄
連載
すとらびすむす
一輪の梅 ● 栗林 幸夫
画像診断と病理
膀胱傍神経細胞腫 ● 吉野 久美子,渡邊 祐司ほか
ここが知りたい!
画像診断2011年8月号特集
「軟部組織・関節の非腫瘍性疾患」● 岩間 祐基,藤本 肇ほか
Picked-up Knowledge from Foreign Journals
2管球CTのdual energy法を用いた肺灌流CT画像 ● 岡田 宗正,松永 尚文
CASE OF THE MONTH
Case of January ● 谷為 恵三,谷為 乃扶子ほか
The Key to Case of November ● 大内 恵理,山﨑 郁郎ほか
Refresher Course
これから始める心臓CT読影─放射線科医にも必要な基礎知識─
● 城戸 輝仁