これでいいかな?それでいいの?
日々の診断で行っている検査の組み立て・所見のとり方・解釈の仕方などでの疑問点や反省例から学ぶことも大切です.
頭部・胸部・腹部・救急・小児の全186症例から,画像診断に必要なセンスや知っておくと良いコツやポイントが身につく1冊です!
おことわり
本書では「種々の状況で“それでいいの?”と思う症例」や「失敗から学べる症例」を中心に多くの症例が掲載されています.どの症例も実際に執筆された先生方の“失敗例”ではなく,所見は把握されていましたが,読者の方にわかりやすくするために見逃されたものと記載されています.症例はすべてフィクションです.
目 次
1章 頭 部
case1 拡散強調像で高信号なら脳梗塞?
case2 個々の所見の記載だけで良いの?
case3 松果体部に比較的大きな嚢胞が見られたら腫瘍?
case4 多発性にエンハンスがあるのは,脳転移?
case5 年齢は重要なポイント
case6 病変が全体に見られてしまうと,一見正常に見えるけど?
case7 「脳室拡大があります」とだけ記載して良いの?
case8 神経症状に合わせた検査の組み立てが原則ですが…
case9 脳腫瘍の経過観察は,手術部位だけの観察で良いの?
case10 臨床症状と画像所見が一致すれば,診断は正解?
case11 よくわかんないけど,ルーチンだし軸位断像だけでいいんじゃない?(その1)
case12 よくわかんないけど,ルーチンだし軸位断像だけでいいんじゃない?(その2)
case13 よくわかんないけど,ルーチンだし軸位断像だけでいいんじゃない?(その3)
case14 造影後だけでいいんじゃない?
case15 1) 血管の評価はMRAで行うのか? 2)MRAはMIPだけでいいのか?
case16 脊椎の軸位断像はどこを撮るか?
case17 単麻痺? 脳梗塞じゃないんじゃない?
case18 感覚障害だけで麻痺がないの? 脳梗塞じゃないんじゃない?
2章 胸 部
case1 結節性陰影の良悪の鑑別診断に,安易に生検しようとするのはいかがなものか?
case2 糖尿病患者に見られた肺野浸潤像.このまま一般病棟に入院させて,肺炎として抗生剤の治療を開始しても良いですか?
case3 気胸患者の多くはブラの破裂による自然気胸である.でも気胸の原因はそれだけではないですよ!
case4 胸痛を訴える若年者の胸部単純写真は,気胸が否定できれば安心して良いですか?
case5 肋骨横隔膜角の鈍化のない時,胸水貯留は否定できる?
case6 この大学生の胸部単純写真で認めた中央陰影は,正常範囲の大血管走行として良いですか?
case7 空洞性病変の鑑別診断は,結核,肺膿瘍,肺真菌症に肺癌などが代表的ですが,もう一つの疾患も忘れないように!
case8 喘鳴・喘息症状を訴える患者の胸部単純写真の大部分は正常です.でも忘れずに注目して観察するべき部位は?
case9 検診の胸部単純写真では結核や肺癌が主な対象のため,どうしても肺や縦隔の病変を探してしまうが…?
case10 肺葉性病変の多くは肺炎です.でも,すべてが炎症性疾患という訳ではない!?
case11 肺水腫の診断には,画像所見と臨床所見のどちらが大切?
case12 肺尖の肋膜肥厚像は陳旧性結核によるごくありふれた所見として,無視して良いですか?
case13 肺野結節影の精査で胸部CTを行ったが,肺野に結節が見当たらない!どこに注意してCTを再読影する?
case14 結核の接触者検診で胸部単純写真はまったく正常なのに,喉頭拭い液の培養から結核菌が証明された! どちらを信頼したら良いのでしょうか?
case15 奇妙な難治性肺炎として紹介されてきた少女.この画像所見から次にどんな検査が必要でしょうか?
case16 胸部単純写真正面像が正常なら,側面像は不要でしょうか?
case17 肺癌検診の読影では,肺野の円形陰影発見に集中して読影すれば良いですか?
case18 エコノミークラス症候群を疑い胸部撮影が依頼された.胸部単純写真はまったく正常であることから,肺動脈血栓塞栓症の可能性は否定されたと考えて良いですか?
case19 主治医から胸部単純写真を見て大血管病変や縦隔疾患疑いで胸部CTの依頼があった.あなたはCTを断わりますか? 受けますか?
case20 胸部単純写真の条件が悪いと放射線技師を叱る前に,自分の読影能力に対して謙虚に反省するべし!
3章 腹 部
case1 下大静脈の脂肪性腫瘍?
case2 癌患者の多発性肝腫瘤は転移で良いですか?
case3 後腹膜腫瘍,それとも後縦隔腫瘍?
case4 腸管外便塊像の診断は腹腔内遊離ガス像の診断より難しい!
case5 イレウスの原因は不明?
case6 成人の腸重積には原因がある
case7 嚢状に包まれた腸管の集簇像を見たら内ヘルニアを疑え!
case8 腹痛ではワイドウインドウでのチェックを怠らない
case9 腹痛(背部痛)精査のCTでは,血管,骨,脊髄などにも注意せよ!
case10 注腸造影で虫垂が描出されたので虫垂炎を否定した
case11 肺結核治療中のイレウス
case12 胃術後の上部小腸の拡張を見たら
case13 骨盤内感染症(PID)は上腹部痛で受診することがあり,注意せよ!
case14 子宮内避妊具(IUD)を使用している骨盤内感染症は放線菌感染症に注意せよ!
case15 若い女性の急性腹症で腹腔内出血を見たら
case16 奇形腫患者の急性腹症では?
case17 腹腔内の炎症で良いですか?
case18 膵頭部癌とそれに伴う門脈血栓症と診断した
case19 子宮筋腫をT2強調像だけで診断するな
case20 子宮筋層のT2強調像での低信号をすぐに病変とするな
case21 卵巣腫瘍の鑑別にSTIR像は危険
case22 MRI造影検査ではout of phaseの使用に注意
case23 肝の緩徐な増強効果を示す腫瘤は血管腫だけではない
case24 サイズの変化で悪性腫瘍とするな
case25 腫瘍の由来決定には栄養血管を捜せ
case26 水腎症の診断は慎重に
case27 CTの低吸収値の識別を正確に
case28 骨盤内腫瘍の読影はまずCTで深部静脈血栓症(DVT)のcheckから始める
case29 肺塞栓症+深部静脈血栓症(DVT)の精査. CT-肺動脈撮影(CT-PA)後のCT-静脈造影(CTV)撮影範囲は?
case30 「大量腹水・腸管癒着・大網ケーキ」=「癌性腹膜炎」にしてはいけない
case31 Mile’s術後・再発診断は?
case32 虚血性腸炎には壊死型(概念としてはNOMI)があることを考慮してmanagementするべき
case33 門脈・腸間膜静脈ガス+腸管嚢胞気腫を見たら,腸管虚血を疑うことを忘れない
case34 「小児の下腹部腫瘤」=「虫垂炎・骨盤内膿瘍」で良いですか? 女児には正常卵巣の捻転も鑑別に挙がる
case35 左副腎腫瘍でいいの?
case36 比較的若い患者の大量血尿の精査
case37 腎癌術前血管マッピング;CTAは腸骨動脈レベルまで撮影しておかなければならない
4章 救 急
case1 くも膜下出血の見落とし(白くないくも膜下出血)
case2 小児虐待の症例において頭部CTを異常なしと診断した
case3 脳梗塞において,CTにてearly signを見落とした
case4 胸部単純写真において,カテーテルやチューブの位置異常を見落とした
case5 胸痛を主訴とする救急患者の胸部単純写真を診断する際に,過去の写真との比較を怠り,大動脈解離を見落とした
case6 単純写真において,気胸を誤診した
case7 胸部単純写真と胸部CTにて,食道破裂を診断できなかった
case8 腹部ポータブル写真にて遊離ガスを見落とした
case9 腹部CTにて遊離ガスを見落とした
case10 造影CTを怠り,絞扼性腸管閉塞症を単純閉塞と誤診した
case11 腹部CTにて上腸間膜動脈閉塞症を見落とした
case12 造影CTを怠り,脾臓破裂を見落とした
case13 外傷による下位肋骨骨折の患者に対して,肝臓,脾臓の損傷の可能性を指摘しなかった
case14 造影CTを行い骨盤部の造影剤漏出を見落とした
case15 腹部単純写真にて,胆石イレウスを見落とした
case16 腹部単純写真にて,骨盤部腹水の所見(dog ear sign)に気が付かず,外妊破裂の診断が遅れた
case17 腹部単純写真にて腸腰筋陰影の異常に気付かず後腹膜出血の診断が遅れた
case18 ICUにおける腹部ポータブル写真の見落とし
case19 腹部単純写真にて,魚骨を見落とした
case20 わずかな所見の骨単純写真を読影して,骨折線が見えないので,「骨折なし」と診断した
case21 妊娠可能年齢の女性の急性腹症に対して,妊娠の確認をせずに,腹部CTを行った
case22 小児腸重積の整復においてバリウムを使用したが,穿孔が起こった!
case23 小腸閉鎖が疑われる新生児に対してバリウム注腸造影を行った
case24 発熱,咳を主訴に受診した幼児に対して吸気の単純写真のみ撮影して,肺炎と誤診して気管支異物を見落とした
case25 食道閉鎖が疑われる新生児に対して依頼されてポータブルにてバリウムを使用して食道造影を行った
5章 小 児
case1 CTで「頭蓋骨骨折なし」,実は眼窩耳孔線 [orbitomeatal(OM)line] に平行な骨折だった
case2 大泉門膨隆でCT実施.「異常なし」と判断.経過観察のCTで大脳鎌に沿って硬膜下液体貯留「硬膜下膿瘍」.よく見ると初回CTで所見あり.
case3 臨床的に「骨髄炎」疑い,骨盤部単純写真上も「骨髄炎後の変化に矛盾せず」.実は神経芽腫の骨・骨髄転移だった.
case4 術後の創部痛」疑いで超音波を行うも所見なし.当初,単純写真所見なしと考えていたが,実は単純写真で剥離骨折あり.
case5 PI(peripheral inserted)カテーテルの位置
case6 出生直後の早産児のポータブル胸部単純写真で「肺野に異常あるも,各種のチューブならびにラインの位置は問題なし」と診断.しかし,よく見ると気管内挿管チューブが食道内.
case7 高度側弯の患者「胃管の先端は食道」と判断.経過観察で気管支内と判明.直後に抜去.
case8 新生児の胆汁性嘔吐.患児の全身状態に応じた迅速な対応が重要!
case9 虫垂炎疑って超音波「見える範囲で虫垂径は正常」.しかし,症状続くためCT実施でCTでは先端部に虫垂腫大あり.
case10 卵巣腫瘍を疑って紹介.最終的に穿孔性虫垂炎および虫垂周囲腫瘍と診断.
case11 「急性虫垂炎」疑って超音波実施.肥満につき精査困難でCT実施し,「正常虫垂描出」.よく見ると「腹腔内脂肪織の限局性索状濃度上昇域」あり,分節性大網梗塞と診断.
case12 腹痛で腹部単純撮影の依頼.「腹部に異常なし」と思ったら,肺底部に肺炎あり.
case13 他院から「腹膜炎」の診断で紹介.超音波で腹水と総胆管拡張.前医のCTで所見あり.穿孔を伴った先天性胆道拡張症の診断.
case14 「重積疑いで超音波依頼」.重積所見なく,腸管血流あり.腹水は目立った.後に腹部単純写真で異常所見あり.CTならびに超音波再検にて腸管絞扼所見あり,手術で証明.
case15 他院で「後腹膜血腫」の診断で紹介となった.小児で後腹膜に隔壁を有する嚢胞性腫瘤を認めたら,基礎にリンパ管腫などないか考慮すべき.