【特集】
序説 ● 小山 貴
腫瘍類似性病変というテーマで学会やセミナーなどで教育講演が組まれることがあるが,実際には真の腫瘍ではないものの腫瘍に見紛うような腫瘤を形成する病態は,全身の様々な領域にみられる.その診断と治療方針が問題となることが少なくない.一方で,腫瘍性病変であるにもかかわらず,腫瘍にみえないような形態や進展様式を呈する病態も少なからず遭遇する.これらの病態は常に画像診断における大きなpitfallとなりうるのである.単なる画像診断におけるpitfallとして特集を組むのではなく,はたして腫瘍なのか腫瘍でないのかという点に焦点を絞って,一つの症例集を創りあげたいというのが今回の特集の背景の一つである.
昨年の10月,中四国技師学会におけるランチョンセミナーでこのテーマで腹部領域における腫瘍性と非腫瘍性病変の鑑別に関する講演を引き受けた直後に,産業医科大学の興梠征典教授から同じ日に九州の博多でのセミナーを開催するので,腹部領域の講演を私にというお話をいただいた.勿論,興梠教授は私が同日にこのテーマで中四国技師学会で講演の予定があるということは知るよしもない筈である.他の演者の先生方の錚々たる顔ぶれをみるにつけ,私のような若輩が話をするのは如何にと躊躇されるところであったが,他の先生方のお話をお伺いしたいばかりに喜んで承らせていただいた.セミナーの開始時間には間に合うスケジュールではなかったが,岡山における私の講演が終了次第,新幹線に飛び乗って,何とか中枢神経領域の講演をされていた前田正幸先生の後半を拝聴することができた.続く坂井修二先生,藤本 肇先生のご講演のいずれも素晴らしく,画像診断の編集部から企画の依頼をいただいた際に真っ先に思い出したのはこのセミナーのことであった.今回は,そのセミナーにおける先生方いずれもが執筆を快諾していただき,セミナーのダイジェスト版ともいえるものになったが,これはあくまで興梠教授の企画の賜物であり,セミナーのテーマをこの特集に使わせていただくことを快く了解して頂いた興梠先生には深謝したい.また私自身の講演のかわりには新進気鋭の私の後輩の先生方に執筆を依頼し,症例の選択を含めて彼等に任せたが,私自身が書くよりも遙かに良い原稿に仕上げていただいた.
今回の特集を考えつつ,日常診療を振り返って感じるのは,腫瘍性か非腫瘍性か診断が問題になる状況が実に多いということである.こうした症例は他にも多数あるが,個々の症例で診断にたどり着くための過程を認識することは応用性が高いと思われるので,診断過程をなるべく強調していただいた.最後に本来,腫瘍と非腫瘍の境界を定義するはずの病理の世界においても腫瘍と非腫瘍の区別が曖昧なものや,疾患概念が時代とともに変遷したものが少なからず存在することを読者にお伝えしたく,能登原先生の多大な尽力を借りつつ病理のことを書かせていただいた.このことを提案したのが校了間際であったために編集部には多大なご迷惑をおかけしたと思うが,画像診断のみならず病理を含めて腫瘍と非腫瘍の鑑別における考え方や問題点を幅広く知るのに今回の特集が少しでも役に立てば幸甚である.
中枢神経系 ● 前田正幸
頭頸部 ● 坂田昭彦,山本 憲ほか
胸部 ● 坂井修二
腹部 ● 大西康之,小林久人ほか
女性骨盤 ● 倉田靖桐,小山 貴ほか
骨軟部 ● 藤本 肇
病理 ● 小山 貴,能登原憲司
【連載】
すとらびすむす
病気が教えてくれたこと ● 貞岡俊一
画像診断と病理
尿膜管癌 ● 山砥茂也,松永尚文
ここが知りたい!
画像診断2015年7月号特集
「知っておきたい循環器疾患のCT・MRI(1)
─心臓・頸部血管疾患Case Review─」 ● 横山健一,木村文子ほか
Picked-up Knowledge from Foreign Journals
神経放射線:hypomyelination ● 森 墾
CASE OF THE MONTH
Case of December ● 川井 恒
The Key to Case of October ● 森 芳峰
おさえておきたい! PET/CT診断のポイント
最終回 マルチモダリティ(造影PET/CT,PET/MRI,新しいトレーサー)
● 北島一宏
Refresher Course
Gd-EOB-DTPA造影MRI─カレントコンセンサス─ ● 伊東克能