【特集】
序説 ● 戸崎光宏
わが国で乳がん検診にマンモグラフィが導入されてから15年が経過した.マンモグラフィ検診は精中機構(日本乳がん検診精度管理中央機構)による精度管理・教育のしくみが確立され,検診受診率向上を図る活動も活発に行われるなど,大きな成果を上げてきたが,マンモグラフィに否定的な海外の報告や,高濃度乳腺の問題,そして遺伝性乳がんなどのハイリスク女性に対する対策の問題など,乳がん検診を取り巻く環境には著しい変化が起きている.
2015年の日本乳癌学会による『科学的根拠に基づく 乳癌診療ガイドライン』では,マンモグラフィ検診の推奨グレードの変更が発表された.「40歳代に対してマンモグラフィ検診は勧められるか」は,推奨グレードBのままであるが,「50歳以上に対してマンモグラフィ検診は勧められるか」が推奨グレードAからBに変更された.
厚生労働省研究班による調査研究『有効性評価に基づく乳がん検診ガイドライン2013年度版』で,マンモグラフィ単独法(40〜74歳),マンモグラフィと視触診の併用法(40~64歳)はともに推奨グレードBとされている.推奨グレードの変更には,この調査研究の結果も大きく影響していると考えられる.
一方,わが国では国家的プロジェクトである超音波併用検診の比較試験が実施され,マンモグラフィの弱点を補う乳がん検診として,超音波併用検診への期待が高まっている.
乳がん診療における画像診断としては,トモシンセシスや超音波検査におけるエラストグラフィなど,診断能の向上をもたらす新しい診断機器の普及が注目を浴びている.また,乳腺画像の読影所見と報告書の記載方法を標準化したものとして,米国放射線専門医会(ACR)が作成したBreast Imaging Reporting and Data System(BI-RADS)が広く知られている.2014年には,10年ぶりにBI-RADSの改訂版(2013年版)が出版され,日本でも複数の学会の協力のもと翻訳作業が進められている.しかし,世界的に普及しているBI-RADSのカテゴリー分類と,日本独自のカテゴリー分類が混在していることで,多くの混乱を招いているのも事実である.特にカテゴリー3の陽性反応的中度が大きく異なるため,日本のデータを海外に発信する際に改めてBI-RADSカテゴリーに変換する必要がある.また,診療においてもカテゴリー3の症例では,経過観察するべきか精密検査をするべきかで全く異なる方針となる.今後は日本のカテゴリーの用語の変更や合意形成などの対策が必要であると考えられている.
本号では,乳がん診療における画像診断を特集した.「放射線科専門医必見! 乳腺画像診断の道しるべ」と題して,乳腺画像診断を幅広く網羅することを心がけた.執筆の先生方には,著しく進歩し多様化する乳がん検査技術の最新動向も取り上げながら,基礎的なことをわかりやすく記述していただいた.本特集が乳がん診断にさらに興味をもっていただくきっかけになれば幸いである.
“乳腺を読む”とは−カテゴリー診断− ● 嶋内亜希子
臨床からみた遺伝性乳癌 ● 四元淳子
マンモグラフィの診断的位置づけ
−最近の乳腺濃度のとらえ方− ● 佐竹弘子
マンモグラフィ診断の実際 ● 町田洋一
乳腺超音波検査のup-to-date ● 町田洋一
BI-RADSに基づく乳房超音波診断 ● 久保田一徳,岡澤かおりほか
乳腺診療におけるMRIの役割と撮像法 ● 後藤眞理子,喜馬真希ほか
乳房MRI診断の実際 ● 印牧義英
MRIガイド下乳房生検 ● 嶋本 裕
【連載】
すとらびすむす
宮崎に来ないよ! ● 平井俊範
画像診断と病理
筋肉内粘液腫 ● 大崎正子,原田祐子ほか
ここが知りたい!
画像診断2015年5月号特集
「胆道疾患の画像診断─基本から最近の進歩まで─」
● 松原三郎,吉満研吾ほか
Picked-up Knowledge from Foreign Journals
子宮内膜症 ● 藤井進也
CASE OF THE MONTH
Case of October ● 森 芳峰
The Key to Case of August ● 岩野信吾,長縄慎二
おさえておきたい! PET/CT診断のポイント
第10回 造血器腫瘍 ● 北島一宏
Refresher Course
腎腫瘍の病理Update ● 長嶋洋治,岩本和香子ほか