【特集】
序説 ● 似鳥俊明
心臓疾患は,画像診断医にとってラスト・フロンティアであろう.
最近のgeneral radiologistには,広い領域に及ぶ知識をもち,日常臨床では滅多に出会わない症例に対しても,検討会で的確なコメントをする人たちが目立って増えている.専門は深く,それ以外の分野にもひと通りの知識をもつのが当たり前とする態度が身に付いており,実に頼もしい限りであるが,心臓だけは別ものとする傾向があることもまた否めない事実である.心臓カテーテル,核医学,そして超音波検査の担当疾患とする時代が長かったという背景があるのだが,最近のCT・MRI技術の目覚ましい発展が,この歴史に革命を起こしている.きわめて動きの激しい臓器の形態と機能を,非侵襲的に客観的な高精細画像として観察できるようになっており,その進歩は加速度を増している.CT・MRIによる冠動脈狭窄診断への特別高い関心はすでに過去のものであり,現在の応用領域は虚血心筋,心筋症,弁疾患などすべての心疾患,部位である.したがって,検査依頼は増加する一方であり,もはやCT・MRI担当者にとって,特殊領域あるいは苦手分野とはできない所以である.
ひとり疾患そのもののみならず,CT・MRIによる心機能解析法にも最新の技術が多数登場しており,各種の補助器具,治療法なども次々と臨床現場に現われるのが現代循環器診療の実際である.これらに対する概略知識をもつことと,現場での対応は画像診断医にとって避けるわけにはゆかない必須のものとなる.条件付きMRI対応ペースメーカの登場は,その序章にすぎない.
本特集では,心疾患に馴染みの薄いgeneral radiologistを主な読者対象と想定し,とりつきやすい原則見開き2ページのcase review形式を採用し,長年この領域の牽引役を務めてきた心臓放射線研究会のアクティブメンバーに執筆をお願いした.体系的教科書にはない平易な解説と,最新の知識,画像の掲載により,まずは広く興味をもってもらえることを何より意識し編集をした.疾患単位が主であるが,画像診断医にとって必要な最新の心機能解析や診療技術についても独立して項目を立てた.特集各項内の強調箇所は著者の承諾のもと編者がつけたもので,時間のない読者にも現代循環器画像診断の概要を知るために,この部分の通読を勧めるものである.
また,“Refresher Course”には特集内容と一部重複を承知の上で,放射線科医,IVR専門医が知るべき循環器領域の最新の診療デバイスを,やや体系的に取り上げた.最先端の心臓カテーテル室では,術中造影剤をほとんど使用せず,しかも放射線使用は検査開始時のみに限られるため,コメディカルはプロテクターを着用せずに従事するIVRが現実化している.この領域の進化は実に急である.
1. 心 臓
急性心筋梗塞 ● 北川 覚也,後藤 義崇ほか
陳旧性心筋梗塞 ● 北川 覚也,後藤 義崇ほか
左心室瘤 ● 北川 覚也,後藤 義崇ほか
虚血(狭心症) ● 北川 覚也,後藤 義崇ほか
冠動脈プラーク ● 北川 覚也,栗田 仁衣ほか
冠動脈狭窄 −AHA分類を中心に− ● 宇都宮 大輔
心筋ブリッジ ● 横山 健一,苅安 俊哉ほか
冠動脈瘤 ● 宇都宮 大輔,片平 和博
冠動脈起始異常 ● 宇都宮 大輔
冠動脈肺動脈瘻 ● 宇都宮 大輔
冠動脈ステント ● 北川 覚也,栗田 仁衣ほか
左室心筋緻密化障害 ● 木村 文子
肥大型心筋症 ● 木村 文子
拡張型心筋症 ● 木村 文子
不整脈源性右室心筋症 ● 木村 文子, 中島 崇智
たこつぼ心筋症 ● 木村 文子, 中島 崇智
心サルコイドーシス ● 山多 芙美,天野 康雄ほか
心アミロイドーシス ● 今井 祥吾,天野 康雄ほか
高血圧性心筋症 ● 天野 康雄,山多 芙美ほか
心筋炎 ● 長尾 充展,川波 哲ほか
好酸球性心筋炎 ● 天野 康雄,城 正樹ほか
左房粘液腫 ● 真鍋 徳子
脂肪腫 ● 真鍋 徳子
転移性心臓腫瘍 ● 真鍋 徳子
線維腫 ● 真鍋 徳子
悪性リンパ腫 ● 真鍋 徳子
心膜嚢胞,心膜憩室 ● 福本 航,立神 史稔ほか
心室中隔欠損症,心房中隔欠損症● 立神 史稔,福本 航ほか
Fallot四徴症 ● 立神 史稔,福本 航ほか
Fontan循環 ● 長尾 充展,川波 哲ほか
大動脈弁狭窄症とTAVI(経カテーテル大動脈弁留置術) ● 植田 琢也
大動脈弁閉鎖不全症 ● 福山 直紀,城戸 輝仁ほか
僧帽弁狭窄症 ● 福山 直紀,城戸 輝仁ほか
僧帽弁閉鎖不全症 ● 福山 直紀,城戸 輝仁ほか
三尖弁閉鎖不全症 ● 福山 直紀,城戸 輝仁ほか
心不全 ● 福山 直紀,城戸 輝仁ほか
心機能解析 ● 田所 導子,横山 健一ほか
FFR測定 ● 山田 祥岳,陣崎 雅弘ほか
心筋ストレイン ● 今井 昌康,横山 健一ほか
心筋T1T2 mapping ● 天野 康雄,城 正樹ほか
心臓植込み型電気的デバイス ● 横山 健一,石村 理英子ほか
条件付きMRI対応ペースメーカ ● 苅安 俊哉,横山 健一ほか
不整脈カテーテルアブレーション ● 田所 導子,横山 健一ほか
2. 頸 部
椎骨動脈解離 ● 稲川 正一,佐藤 千尋ほか
頸動脈狭窄 ● 稲川 正一,佐藤 千尋ほか
頸動脈海綿静脈洞瘻 ● 佐藤 千尋,稲川 正一ほか
鎖骨下動脈盗血症候群 ● 佐藤 千尋,稲川 正一ほか
巨細胞性動脈炎 ● 佐藤 千尋,稲川 正一ほか
【連載】
すとらびすむす
目に映らなかったもの ● 小山 貴
画像診断と病理
耳下腺オンコサイトーマ ● 飯田 悦史,古川 又一ほか
ここが知りたい!
画像診断2015年2月号特集
「肝良性腫瘍および類似病変の病理・画像診断update」
● 山田 哲,小坂 一斗ほか
CASE OF THE MONTH
Case of July ● 佐竹 弘子,石垣 聡子ほか
The Key to Case of May ● 袴田 裕人,福倉 良彦ほか
Picked-up Knowledge from Foreign Journals
冠動脈CTの現況 ● 岡田 宗正,松永 尚文
おさえておきたい! PET/CT診断のポイント
第7回 肝胆膵 ● 北島 一宏
Refresher Course
放射線科医が知っておきたい循環器領域の新しい診療デバイス
● 田所 導子,石村 理英子ほか