解剖学的構造を念頭においた中枢神経疾患の画像診断
【特集】
序説 ● 田岡俊昭
一般に“放射線科医は解剖が好き”である.解剖学者や発生学者がミクロの彼方に去ってからは,肉眼解剖の場に残っているのは放射線科医だけかもしれない.
我々が日々触れている画像でみられる疾患の姿は,背景にある解剖と密接につながっていることはいうまでもない.診療のための主な画像法が単純X線撮影から血管造影,CT,MRI へと移り変わっていくとともに,画像診断に求められる解剖もまた変化してきた.おそらくこれからも,それらは変化していくであろう.今回の特集では,現時点で用いられる画像法の範疇で描出される,あるいは画像に影響を与える解剖学的構造を念頭に置いた疾患の理解を目的とした.
中枢神経疾患には,錐体路など脳内の特定の構造に関連したものや,側頭葉前端部に異常信号がみられる疾患など,原因は不詳ながら特定の部分に多くみられるものがある.また,第三脳室の前部と後部はそれぞれ特徴的な所見を示す疾患の宝庫である.背景にある解剖学的構造を理解することで,病変の分布などの理解が容易になる病態もある.本特集では,腫瘍や虚血などの疾患群からのまとめではなく,解剖学的構造からのまとめをお願いした.
本特集の章立ては系統的なものではなく,面白そうな領域をつまみ食いした形となっている.頭蓋内で下から上,あとは中から外の順で,脳幹・小脳,側頭葉内側〜前端部,下垂体から視交叉あたり,中脳水道のあたり,脳梁,錐体路,軟膜,海綿静脈洞から斜台のあたり,そして,頭蓋の孔がらみの病変の順で並べた.一般的な事項,あるいはやや珍しい疾患に関して,脳局所の解剖学的特性も含めて解説するともに,画像診断医が知識を整理して日々の臨床に役立つものとすることを目的とした.
今回,神経放射線領域で勢いのある先生方に執筆をお願いした結果,いずれも楽しい読み物となった.読者の皆様にも,感動・感心のお裾分けができることと信じている.
脳幹,小脳の萎縮を来す病変 ● 櫻井圭太,德丸阿耶ほか
側頭葉内側,前端部の病変 ● 中田安浩
下垂体,視床下部から視交叉の病変 ● 高橋千尋,木村 輔
中脳水道から第三脳室周囲の病変 ● 塚部明大,坪井真悠子ほか
脳梁の病変 ● 宮坂俊輝,田岡俊昭
錐体路の病変 ● 本城尚美,木村成秀ほか
軟膜に関連した病変 ● 海地陽子,掛田伸吾ほか
前頭蓋底,海綿静脈洞から斜台の病変 ● 松島成典,横田 元ほか
頭蓋の孔の解剖とそれに関連する病変 ● 海野真記,前田正幸
【連載】
すとらびすむす
私たちの義務 ● 立石宇貴秀
画像診断と病理
骨盤後腹膜原発のsolitary fibrous tumor(SFT)
● 丸山光也,中村友則ほか
ここが知りたい!
画像診断2014年11月号特集
「脳動脈瘤とくも膜下出血を究める」● 渡邉嘉之,篠原祐樹ほか
Picked-up Knowledge from Foreign Journals
子宮頸癌 ● 藤井進也
CASE OF THE MONTH
Case of April ● 中條正典,上村清央ほか
The Key to Case of February ● 馬ノ段智一,内匠浩二ほか
英語発表は怖くない
最終回 ● 前田恵理子
おさえておきたい! PET/CT診断のポイント
第4回 肺癌 ● 北島一宏
Refresher Course
腎癌の診断とIVR治療 ● 郷原英夫,平木隆夫ほか
第20回「画像診断」MVP賞
第11回「画像診断」Best Invited Editor賞受賞者発表
CASE OF THE MONTH 2014年成績優秀者発表