気道疾患のすべて
−基礎からup-to-dateまで−
【特集】
序説 ● 氏田万寿夫
呼吸器の主たる機能はガス交換を行うことである.換気と血流は,体位,運動や外部環境の影響を受け随時変動するが,神経化学調節機構により酸塩基平衡は維持される.呼吸器は,外気と直接交通しており,酸素と二酸化炭素の交換の際のフィルタでもあるため,多種多彩な疾患の罹患臓器である.また,発生過程の異常による正常変異や病変も稀ではない.それゆえ,日々の診療において呼吸器の異常を訴える患者は多く,画像診断医の多くは呼吸器画像診断を避けて通れない.
画像診断の基本は,“有意な異常所見から考えられる疾患を,鑑別診断の重みづけを行いつつ診断する”ことであろう.ただし,呼吸器では, MRIの種々のシーケンスやダイナミック造影検査などを駆使して診断を絞り込んでいくのではなく,CT(HRCT)による病変の部位と形態によるアプローチが主体である.このため,ある画像所見から特定の疾患に結びつかないジレンマを覚えることも少なくなく,呼吸器画像診断が難しく感じられる要因のひとつかもしれない.しかし,その反面,臨床症状や患者背景,さらに理学検査所見の情報を最大限に生かし,非特異的な画像所見から論理的に診断を行うという醍醐味がある.
今回,初学者が呼吸器画像診断を学ぶ導入書としての位置づけで,本特集を企画した.まず呼吸器疾患の診断を行う上で,画像診断とは切り離せない病理と臨床に関してご解説いただいた.画像診断では,正常変異と先天異常,中枢および末梢気道(細気管支領域)の様々な疾患・病態を,若手からベテランの諸先生方にご執筆いただいた.細気管支病変やCOPDにおいて,HRCT解剖を理解し,種々の疾患でみられるパターンを整理することが重要であると同時に,CTは形態のみでなく肺機能を評価できるモダリティであることが理解できる.さらに,MRIの気道疾患への応用と肺機能イメージングの今後の展望について,本領域の第一人者にご執筆いただいた.
本特集号が“気道疾患のall-in-one”として机上に置かれ,多くの読者の診療のガイドとなれば,編者として存外の喜びである.
気道の解剖と病理 ● 武村民子
気道と肺の正常変異および先天異常 ● 佐々木智章,高橋康二
中枢気道疾患 ● 中野祥子,氏田万寿夫ほか
末梢気道疾患 ● 髙橋雅士,村田喜代史
気管支拡張症 ● 中園貴彦,山口 健ほか
閉塞性細気管支炎 ● 室田真希子,佐藤 功ほか
COPDの臨床 ● 松島秀和
画像で見るCOPD ● 松岡 伸,山城恒雄ほか
気道疾患における胸部MRI ● 大野良治,関 紳一郎ほか
【連載】
すとらびすむす
二足のわらじ ● 髙橋雅士
画像診断と病理
胎盤血管腫 ● 丸山美菜子,吉廻 毅ほか
ここが知りたい!
画像診断2014年10月号特集
「泌尿器疾患のガイドライン─診療の流れと画像検査の位置づけ─」
● 内匠浩二,重里 寛ほか
Picked-up Knowledge from Foreign Journals
膵臓のMRI拡散強調像 ● 岡田吉隆
CASE OF THE MONTH
Case of March ● 内匠浩二,馬ノ段智一ほか
The Key to Case of January ● 井手上淳一,中村文彦ほか
英語発表は怖くない
第9回 ● 前田恵理子
おさえておきたい! PET/CT診断のポイント
第3回 頭頸部癌 ● 北島一宏
Refresher Course
大動脈解離と類縁大動脈疾患
─治療ストラテジーに直結する画像診断─ ● 植田琢也