序説
鳴海 善文
ERの骨盤の画像診断では，交通事故や落下事故による骨盤外傷がまず思い浮かぶが，その他に産婦人科領域，泌尿器領域，消化管領域の多彩な疾患や病態が含まれ，できるだけ短時間で正確な画像診断を行うこと，必要な場合にはinterventional radiology（IVR）の適応を迅速に判断することが担当医に求められる．そのためには，救急画像診断とIVRに関する豊富な知識と経験が必要となる．
今回の特集ではそれぞれの領域のエキスパートの方々に，骨盤領域を中心とする救急画像医学について詳細に解説して頂いた．
まず，救急現場で実際の診療にあたっておられる救急医の側から，救急医学の現状，特に骨盤骨折における初期診療とIVR適応，さらには非外傷性の救急疾患について概説して頂くとともに，今後の放射線科医に対する要望を指摘して頂いた．尿路系では，尿管結石を中心に血尿の画像診断について，腎を含む広い範囲から解説して頂いた．男性生殖器では精巣捻転，精巣上体炎などの急性陰嚢症についての豊富な症例を基にして，超音波診断に始まる診断と治療のフローチャートを示して頂いた．産科領域では大量出血が生命を脅かす場合があり，放射線科にIVRが要請される場面がある．産科出血を来す疾患の画像診断とIVRの適応について述べて頂いた．急性腹症は由来臓器と疼痛の原因が多様であり，治療方針もそれぞれに異なる．憩室炎，虫垂炎，骨盤内炎症性疾患（pelvic inflammatory disease；PID）など炎症性疾患というくくりで，急性腹症の画像診断についてまとめて頂いた．茎捻転，子宮外妊娠，子宮筋腫の赤色変性，卵巣出血など非炎症性の産婦人科領域の急性腹症については別にまとめて頂いた．骨盤外傷では，外傷におけるCTの運用例として外傷パンスキャンを提示して頂き，また骨盤内出血に対するIVRの役割について貴重な経験からまとめて頂いた．
この特集が，診療に携わる放射線科医や救急医，泌尿器科医，産婦人科医，消化器科医のみならず研修医，診療放射線技師の諸兄の明日からの診療の一助となれば幸甚である．

特集
救急医学の現状と要望
血尿
男性生殖器疾患
女性性器出血－産科大量出血を中心に－
産婦人科急性腹症
骨盤内炎症性疾患
骨盤外傷
●連載目次●
すとらびすむす
チヌ釣りで思う
野間 恵之

画像診断と病理
骨外性粘液型軟骨肉腫
稲津 和歌子，江原 茂ほか

ここが知りたい！
画像診断2010年2月号特集
「“転移”の画像診断」
遠藤 正浩，北井 里実ほか

投稿　症例
子宮原発Ewing’s sarcoma/PNETの1例
上松 東宏，高田 ゆかりほか

胸部画像診断24のポイント
所見のわりに症状が乏しいときに考えること
野間 恵之

Picked-up Knowledge from Foreign Journals
心臓・大血管
岡田 宗正，松永 尚文

CASE OF THE MONTH
Case of July
武内 泰造，園村 哲郎ほか
The Key to Case of May
原田 太平，安田 浩章ほか

Refresher Course
痔瘻のMRI
桐生 茂，佐原 力三郎ほか