【特集】
序説 ●江頭 玲子(佐賀大学医学部放射線医学教室)
院内PHSが鳴り,交換から取次ぎの外線がかかってきた.関西風の明るい声が聞こえる.吉本興業とCOIはないと常々口にされるが,吉本興業に所属されたら売れっ子間違いなしのK先生だ.K先生は人を褒めるのがものすごくうまい.「わかりやすく説明するのにかけて,江頭先生にはものすごい才能があると思う」「あんなんは他の人にはできんと思う」「先生が企画して作ったら,絶対売れると思う.これは間違いない」…乗せられてしまった私は今,この原稿を書いている.
わが国は画像診断医の多い国ではないが,単位人口当たりのCT台数は世界一を誇り,国民皆保険制度も相まって気軽にCTが撮影される.先進国ながら結核の中蔓延国であり,胸部単純X線写真による結核検診も続けられている.そんなわが国では,肺の異常所見が諸外国に比し早期に発見され,結果的に頻度も高くなる.撮影されたものはもちろん,診断しなければならない.間質性肺炎も間質性肺炎が鑑別に挙がるその他の間質性肺疾患も決して稀な疾患ではない.だが,自分の周りを見渡しても,この領域が得意な人は多くなく,むしろ少ないといえる.教科書にも多数のページを割いて間質性肺炎の解説が書かれているが,苦手な人はそこを開きたいとはなかなか思わないらしい.「略語も多すぎて嫌だな」「よくわからないから,軽く書いて終わらせたいよね」と思っている人も多いらしい.
間質性肺炎は厄介な病気だ.それ自体が予後因子になるばかりか,肺癌や慢性感染症の温床にもなる.頻度の高い特発性肺線維症は多くの癌よりも予後が悪く,到底良性疾患とはいえない.癌になっても,使える薬にすら影響を与えるのだ.苦手だと思っている人にもそれをぜひ知ってほしい.
もし,すぐ隣に間質性肺炎を得意とする放射線科医がいたら,気軽にちょっと相談できたとすれば,もう少し詳しく所見を書いてみようと思ってもらえるのではないか.
本特集のコンセプトは「あなたの隣でちょっとした質問に答えてくれる“びまん肺放射線科医”」.気軽に聞きやすいように,中堅~若手の親しみやすい先生方にご執筆いただいた.ぜひページをめくり,もし日々の疑問がそこにあれば尋ねてみてほしい.
『画像診断』は私が放射線科医になったときからお世話になっている雑誌で,この雑誌からどれだけ画像診断に携わる幸せを教えてもらったか計り知れない.何度か原稿を書く機会をいただき,そして今,本当に若輩者ながら特集企画の機会をいただいたことを感慨深く思っている.単純な私のお尻を叩き,すっかりその気にさせてしまったK先生,そして,一般的な総説や原稿と異なる,カジュアルでかみ砕いた説明をお願いしたにもかかわらず,多忙な時間を割いて原稿をご執筆くださった福井修一先生,冨永循哉先生,杉浦弘明先生,福田大記先生,上野 碧先生,山田大輔先生,澄川裕充先生にここで改めて感謝を申し上げたい.
序説 ● 江頭 玲子
どうだったら“間質性肺炎”? そもそも“間質性肺炎”って何? ● 江頭 玲子,中園 貴彦ほか
診断しないといけないのはなぜ? ● 福井 修一,江頭 玲子ほか
分類やパターン分けにはどんな意味があるの? ● 冨永 循哉
特発性とそうでないものはどうやって見分けるの? ● 杉浦 弘明
偶然出会った網状影はどうするべきか? ● 福田 大記,酒井 文和ほか
経過観察のポイントは? ● 上野 碧,青木 隆敏
これって間質性肺炎? ● 山田 大輔,栗原 泰之
病態や形態学的な特徴を示す言葉と,疾患名としての用語の使い分けは? ● 澄川 裕充,清水 重喜
【連載】
すとらびすむす
今を大切に ● 中本 裕士
画像診断と病理
肝細胞癌 ● 新野 一穂,鹿戸 将史ほか
他科のエキスパートにお尋ねします−ここを教えていただけますか?
腎・前立腺編 ● 伊藤 敬一,新本 弘
CASE OF THE MONTH
Case of November ● 前原 陽介,永野 仁美
The Key to Case of September ● 小池 将隆,喜馬 真希ほか
General Radiology診断演習
前門の虎,後門の狼 ● 井上 明星
Picked-up Knowledge from Foreign Journals
骨軟部−筋肉の量と質 ● 平野 七津美,青木 隆敏
特別寄稿
日本初の放射線科医 藤浪剛一と草創期の放射線医学
● 陣崎 雅弘,茂松 直之
Refresher Course
腫瘍から移植まで,幅広い疾患を対象とする腎尿路画像診断
● 重里 寛,吉川 勇希ほか